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はじめての株主総会/第一三共(株)-現地で感じる社長の誠実な人柄-

個別株投資をはじめて約1年。せっかくだし株主総会にいってみようと思い、有休をもらって参加してみた。
行くことにしたのは第一三共(株)。国内第4位の製薬メーカーである。



なぜ第一三共(株)に投資しようと思ったのか?

  • 同じ業界にいるため目先の調子の良さを知っている

  • 新しいモダリティであるADC創薬を牽引している

  • 研究開発費に力を入れている

まずは、目先の調子の良さについて
2023年度の国内製薬の売上高、営業利益の増加率は下のグラフのようになっている。

売上高、利益ともに好調であることがわかる
(AnswerNewsより抜粋)

伸び率トップは売り上げ・利益とも第一三共

前年との比較では、売上高、営業利益とも伸び率トップは第一三共。抗がん剤「エンハーツ」などの伸びを背景に、売上高は25.3%、営業利益は75.5%増加しました。

出典:AnswerNews

この「エンハーツ」という薬、X(Twitter)で検索すると投薬されている患者さんのポストをみる限りでは凄まじく満足度の高い薬であるように感じる。抗がん剤治療されている患者さんからここまでポジティブに受け取られている薬も珍しいと思っている。しかも特許切れは10年程度先。これからも売れ続ける製品である。

エンハーツの場合、少なくとも特許が有効な2030年半ばまで後発品の参入はないとみられている

出典:東洋経済

エンハーツはADC(抗体-薬物複合体)という新規モダリティとなっており世界の製薬メーカーが今注力している分野である。

そして、第一三共のADCの特徴とは…

当社独自のDXd ADC技術は、リンカーとペイロードに特徴があります。

リンカーの特徴としては、抗体1つあたり最大8個のペイロードを搭載できることで、多くの薬物をがん細胞に送り込むことができます。また、血液中での高い安定性により、薬物が、がん細胞に到達する前に放出されることを抑える一方、がん細胞内で多く発現する酵素で選択的に切断される特徴があります。

ペイロードは、新規で強力な薬剤である「DXd」で、周囲のがん細胞にも作用するバイスタンダー抗腫瘍効果を発揮し、抗体から外れた後、血液中から速やかに代謝される特徴があります。

第一三共(株)HPより

研究開発比率に関しては前々から高い企業であり、今好調のADCに関しても今までの研究開発投資が実を結んだものだと考えているからである。

株主総会に参加するためには

期末(今回の場合2024年3月)に100株以上保有している株主は株主総会に参加することができる。
株主総会の約2週間くらい前に郵送で招集通知が送られてきた。

今回の株主総会の通知資料

どんな服装で参加すればいい?

今回の会場は水天宮前駅直結の「ロイヤルパークホテル」だった。

今回の会場。結婚式でもよく使われるホテルのよう。

参加者の服装をみると、スーツなど正装をしている人は6割くらい。ポロシャツや普段着で参加されてる方もけっこういた
20代に見える人はほぼおらず、30・40代もまばら。50代以上にみえる人が多かった。(平日の開催だからかもしれない)男女比は7:3で男性が多かった。

会場に入るまでの流れ

水天宮前駅4番出口から案内役が配置されてるので会場までは迷うことはない。
受付で議決権行使券(郵送されていたもの。未記入でも構わない。)を渡すと、株主出席票と言われるものと資料をもらった。
株主出席票は記載されている番号によって、席順が決まっているわけではなかった。質問する時に氏名ではなく「出席票◯番です」と名乗る時に使う模様。
お土産はないが、PETのお茶はでた。

受付でもらった資料。郵送されてきたものと内容は別。

株主総会開会!

定刻通り10時に開会。議長は奥澤社長(COO)。
まずは議決権行使率の報告。84.6%と高い印象をうけた。
次に監査報告について、監査役より報告。
そのあと、奥澤さんから事業報告。

事業報告について(10:05〜10:30)

第一三共では「コア営業利益」を大事な指標として用いているとのこと。
2030年ビジョン
サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー
のもと、中期経営計画(2021-2025)の説明

中期経営計画(第一三共HPより抜粋)

上記の4つの柱のうち今回は「3ADC最大化の実現」について説明しようと思う。

エンハーツの適応拡大について、注目しているのはHER2低発現乳がん(化学療法既治療)とHER2陽性固形がんについて。さらにはHER2陽性転移性乳がんの1次治療。1次治療となるため患者数が多いというところがポイント。

3ADCの他2つの治験薬であるDato-Dxd(非小細胞肺がん、乳がん)、HER3-DXd(非小細胞肺がん)の臨床試験も良好な結果が得られているとのこと。
この2つの薬については今年度の発売予定で、中期経営計画作成時のがん領域の売上目標6000億に対し、1兆円以上の売り上げを見込んでいるとの話だった。

詳細については下記サイトを見ていただきたい。

https://www.daiichisankyo.co.jp/files/investors/library/materials/2023/March%202024%20ENHERTU%20Business%20Briefing_J_Final.pdf


事前質問(10:30〜10:35)

事前質問は下記3つだった。()内は回答者。

  • 取締役候補者の国籍多様性について(奥澤社長)

  • 女性活躍最新状況について(松本常務)

  • 経営資源の配分/人材の獲得と育成     (小川常務/奥澤社長)

取締役は全員日本人。グローバルマネジメント体制でオンコロジーの事業開発責任者、DX・コンプラの責任者は外国人を登用とのこと。「よい候補者がいれば取締役登用も視野」とのことなので、今後海外売上比率が上がる中で変わってくるような気がした

女性活躍推進では執行役員に3名女性登用。幹部職登用は、海外34.9%、国内14.2%。なぜ国内は海外に比べて登用数が少ないのか?
第一三共に限った話ではないのだが。どこかで「日本では仕事と子育ての両立が難しいから海外勤務にしたい」といった話を聞いたことがある。一企業から変えていくのか、国政から変えていくのか答えはわからないが、仕事と家庭を両立できる働き方ができる文化の醸成がこれから日本で働く人々(男女問わず)にとっての幸せになるのではないか?と思った。

経営資源の配分は、研究開発費に1.95兆、設備投資に0.8兆と研究開発を重視する第一三共のカラーが出ていた
一方、人材の獲得・育成については、グローバル統一の評価制度、地域を超えたキャリアパスなど月並みのアイデアのように感じた。

質疑応答(10:35〜11:30)

ADCとその周辺技術、M&Aに関する質問から地震の義援金、なかには株主総会通知に使われた封筒のデザインに関する提案まで多岐にわたる質疑だった。
気になったものを下記にまとめる。

眞鍋会長→奥澤社長への評価
去年4月に就任した奥澤さんのことを眞鍋さんがどう評しているかに関してだった。
第5期中期経営計画の見通しがみえてきたことに触れ、「足元利益も重要、中長期の見通しも重要で、このバランス感覚が大事。奥澤さんはそのバランス感覚の優れたリーダー」と評していた。

・ADCの今後の売上見通しと強み
現在注力している3ADCについて現中期よりも次期中期(2026-2030と想定)の方がより伸びると考えている。

強みは研究開発力。がんは様々な種類、トリートメントライン(1次、2次、3次)、HER2、HER2低発現と対象は多岐にわたるのでそこに引き続き注力する。

研究開発(我妻本部長が説明)
マルチモダリティー(低分子、抗体、ADC、細胞治療、mRNA)戦略をとっている。
ADCはペイロードの異なる、メカニズムの異なるADCを複数用意しているとのこと。自社や他社薬剤との多剤併用への発展もある。

生産
設備投資は、国内、ドイツ、アメリカの生産拠点に投資。CMO、CDMOも3ADCがメイン(低分子と言うわけではない)自社の生産設備と他社設備の両輪で生産拡大を進めていく

決議(11:30〜11:32)

決議の賛同は拍手形式。11:32に散開。
株主出席票を返却。(持って帰ってもいいらしい)

はじめての株主総会の感想

初心者には少し敷居が高いかな?と思っていってみたが、そこまで敷居が高い感じは受けなかった。
HPなどをみて、事業内容に関しては認識していたが、実際経営層の方々を直接みることで、どういう感じの方がこの会社を率いているんだなと肌感で感じれるいい機会だった。
実は今回、せっかくの機会だったので質問をしてみた。
そうそうたる経営幹部を前に質問はすごく緊張した。(質問してる間は頭が真っ白だった)
うまく質問できた気はしないが、奥澤さんに意図を組んでもらい真摯に回答していただいた。
仕事もあるので、来年も出席できるかわからないが、また機会をみて参加してみたいと思う株主総会デビューだった。

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