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いま、沖縄の高校野球が変わろうとしている-沖縄の高校野球の変遷
2024年の夏の沖縄県大会、制したのは甲子園春夏連覇経験のある興南高校であった。しかし、ベスト4にはエナジックスポーツ高校、日本ウェルネス高校沖縄、KBC未来高校と今までの沖縄県大会の常連校とは異なる高校が進出していた。
いったい、今沖縄の高校野球では何が起こっているのか?そしてこの傾向は続くのか?
10月6日まで行われていた秋季大会(来年の春のセンバツの県予選)の結果を含め、振り返ってみようと思う。
沖縄高校野球の歴史
①沖縄水産全盛期(1990年代)
沖縄代表として初めて甲子園に出た首里高、ベスト4の興南など、歴史を語る起点はいろいろあるだろうが、今回は私の幼少期だった1990年代から語ることにする。
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私が幼い時〜小学生のころは沖縄代表といえば、「沖水」というくらい名門の高校だった。
90年、91年と2年連続甲子園準優勝と全国制覇まであと一歩まで登り詰めた。(幼い時なので記憶にはないのだが)そして、この沖縄水産高校を率いていたのが、沖縄高校野球の父とも言われている栽弘義監督だった。
私の印象に残っているのは1998年。新垣渚投手(元ホークス)を擁し春夏出場を果たした。前年の神宮大会で準優勝(優勝は松坂大輔投手擁する横浜高校)だったが、この年は春夏ともに初戦敗退。それでも、小学生だった私には沖水=強豪校のイメージに繋がっていた。
②沖縄尚学センバツ優勝、地方・離島の高校の台頭(1999〜2000年代)
私がちゃんと甲子園そして野球を見るようになったのはこの出来事がきっかけなのかもしれない。1999年のセンバツ。沖縄尚学(冲尚)が沖縄県勢として初の優勝を果たした。
投打の主軸は比嘉公也投手(現沖縄尚学監督)と比嘉寿光選手(元広島)この時、すごく沖縄が盛り上がっていたことを覚えている。準決勝のPL学園戦。言わずもがな当時の超強豪校相手に一進一退の攻防を繰り広げ、9回終了後5-5の同点。11回表に沖尚が1点勝ち越すも裏に同点に追いつかれる。それでも、12回に2点を勝ち越し延長戦を制した。
この勢いそのままに決勝戦では水戸商を下し、紫紺の優勝旗が海を渡り沖縄にやってきた。
沖尚はその後2008年にも東浜巨投手(現福岡ソフトバンク)を擁し2度目のセンバツ優勝を果たす。
一方、地方(沖縄本島の北部)や離島の高校が躍進した期間でもあった。
2001年、この年創設された「21世紀枠」。その一校目となった宜野座高校。一般選考枠で選ばれた高校と対等に戦いそして、勝ち続け、ベスト4まで勝ち上がった。他にも大嶺祐太投手(元ロッテ)を擁し2006年春夏連続で出場した八重山商工など離島の高校が県大会を制するケースも出てきた。
③興南高校の春夏連覇以降〜興南、沖尚の二大勢力〜(2010年代〜現在)
紫紺の優勝旗が沖縄にきてから11年。深紅の優勝旗も沖縄にやってきた。
島袋洋奨投手(元福岡ソフトバンク)を擁する興南高校が史上6校目の春夏連覇を果たす。甲子園の春夏連覇といえば、PL学園や横浜高校、直近では大阪桐蔭といわば全国的にも当時の強豪校が並び、運と実力ともに揃わないと達成できないといった印象である。
興南はその前年2009年にも出場していた。当時2年生エースとして、春は10回を投げ19奪三振をとるも、投手ゴロをエラーしたことが起因となって、0-2で初戦敗退。夏は今宮選手(現福岡ソフトバンク)擁する明豊高校に序盤はリードし、3-0とするも終盤につかまり3-4で逆転負け。
その雪辱を果たすため挑んだ3年生での春夏連覇。私も大学4年生で院試勉強をしながらTVで応援していたことを覚えている。
この春夏連覇を境に沖尚と興南この2校が甲子園へ出場することが多くなった。
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(高校野球Refより抜粋)
2013年から今年までの11年で、
沖縄尚学(春3回、夏5回)
興南(夏5回)
春は九州大会でベスト4以上の成績が求められるためこの11年で6回しか出ていない。
これをみると2校で春50%、夏に至っては91%とほぼ2強とその他という構図になっている。
だが、水面下では新たな動きが始まっている。
新たな時代の始まり?甲子園出場を目指す新興勢力
冒頭にも述べた、夏の甲子園県大会を盛り上げた3校。それぞれの直近の結果をまとめてみた。
①エナジックスポーツ高校
〈過去2年間の実績〉
2024秋季 準優勝
2024夏予選 準優勝
2024春季 優勝
2023秋季 ー
2023夏予選 ベスト16
2023春季 ー
今年の県大会で安定した実力を発揮しているエナジックスポーツ。先日の秋季大会もあと一歩のところまで沖尚を追い詰めていた。
指導者は2008年浦添商を率い、夏の甲子園ベスト4の実績のある神谷監督。実績のある監督を据え甲子園を目指している。
秋季大会準優勝の結果を受け、11月に行われる九州大会へ出場予定。早ければ、来春のセンバツで甲子園出場の可能性がある。
②ウェルネス沖縄
2024秋季 ベスト4
2024夏予選 ベスト4
2024春季 ベスト4
2023秋季 ベスト16
2023夏予選 準優勝
2023春季 優勝
去年の春季大会で初優勝をしたウェルネス高校。監督の五十嵐さんは青森山田高校で10回の出場経験がある。
③KBC未来高校
2024秋季 ベスト16
2024夏予選 ベスト4
2024春季 ー
2023秋季 ベスト16
2023夏予選 ベスト8
2023春季 ベスト8
KBCは昔からある(少なくとも私の中高時代にはあった)通信制高校だったが、スポーツに特化したコースがあることは知らなかった。
監督は豊見城高校、沖縄水産でコーチ・監督経験のある神山監督。栽監督の右腕として実績を詰んできた神山監督で甲子園出場を目指す。
今後の展望
広域通信制高校という共通項のあるこの3校が沖縄の高校野球の新たな1ページを開いていくのか今後が楽しみだ。