職場環境を変えるアプリ「CONDUCTOR」が生まれた理由【ハッタツソン2019参加者コラム】
この記事は2019年7月08日に「Ledesone Magazine」で公開された記事を再編集したものです。
4月6日〜8日にかけて開催された「発達障害者が取り巻く課題にテクノロジーでアプローチする」をテーマに開催されたハッカソン「ハッタツソン2019」で発達障害の当事者がいてる職場環境改善アプリ「CONDUCTOR」を開発し、最優秀賞に相当する「ハッタツソン賞」に選ばれた「チームフェルマータ」でプランナーを担当していた寺戸 慎也さんにハッタツソン2019に参加した感想と今後のアプリ開発について綴って頂きました。
ハッタツソン2019というイベントに参加させていただきました、寺戸 慎也(テラドシンヤ)と言います。
大阪府豊中市で、若者の就労支援の仕事をしています。
本記事では、私がハッタツソンに参加した理由、フェルマータというチームについて、ハッタツソンで生まれた「CONDUCTOR(コンダクター)」というアプリケーションについてお話しています。
ハッタツソンに参加した理由
Ledesoneの活動に関わり始めた経緯
私のTwitterアカウントは「寺戸慎也@IT×福祉」という名前です。
この「IT×福祉」に興味を持ってくれた主催者のLedesone代表のTenさんがDMをくれ、ハッタツソンのキックオフ飲み会に参加したのが始まりです。
(画像:SOCIAL Hack キックオフ飲み会!の様子)
9月9日に行われた「SOCIAL Hack キックオフ飲み会!」というイベントだったのですが、当時はまだ「ハッタツソン」ではなく「SOCIAL Hack」という名前だったんですね。懐かしい。
9月29日に行われたイベント「目に見えない障害ってなぁにぃ?」にも参加。
(画像:目に見えない障害ってなぁにぃ?」の様子)
この時に「当事者の方と一緒にアイデアを思いついた生み出すこと」への可能性を感じ始めました。
ハッタツソンに参加した理由
当事者研究ですっかり味を占めた私は、大阪府主催の「ワークプレイスハッカソン」、豊中市主催の「豊中市居場所づくりアイデアソン」と、アイデアソンに参加し始めました。
豊中市居場所づくりアイデアソンでは優秀賞をいただきました。
自分のアイデアで社会をよくできるかもしれない、そんな思いは日に日に強くなっていました。
「SOCIAL HACK」はいろんな経緯から、発達障害の方にフォーカスを当てた「ハッタツソン」として開催されることが決定!
ハッタツソンに参加した理由は3つ。
1つ目は「独自性」
発達障害をテーマにしたハッカソンはおそらく日本初なのではないかと思います。
2つ目は「問題意識」
現時点で、一般企業への就労は発達障害をもつ方本人を苦しめる環境が多いし、障害者就労をしても単調な作業が待っている、社会の側が新しい出口を作るしかない!
そんな思いで日々支援の仕事をしています。その想いが、ハッタツソンで実現できるのではないかと思いました。
3つ目は「Tenさんの作る「場」に貢献したいという想い」です。
人々の可能性を信じて行動しているTenさんに少しでも貢献できればと思っていました。
チーム「フェルマータ」について
フェルマータとは
ハッタツソンではエンジニア、デザイナー、プランナー、発達障害当事者によるチームが組まれました。
「オーケストラみたいなイメージがいい…!」というデザイナーさんの発言を受けて、みんなが音楽関連の言葉を検索しはじめ…見つかったのが「フェルマータ」
フェルマータは音楽記号の一つで、音符や休符を演奏者がいくらでも伸ばしていいという意味があります。
みんなの能力や個性をどんどん伸ばせるものを作っていく、というイメージが、今回のハッタツソンの目的ともマッチしていたので、採用しました。
そのままチームロゴに。
チーム名が決まったところで、アイデアを考えます!
ディスカッションを重ねたアイディアソン
「発達障害当事者のためのツールはあるけど、支援者のためのツールってないやん?」
支援の仕事をしている僕の素朴なアイデアが、チームのみんなのアイデアでどんどん輝きを増していきました。
そして「職場で使う業務支援ツール」としてアイデアが固まります。
コンダクターとは指揮者のこと。オーケストラのように職場のみんなの能力を輝かせたいという想いを込めています。
フェルマータの記号をひっくり返して、コンダクター(指揮者)のロゴマークが完成しました。
ロゴマークのアイデア、うちのデザイナーさんが0.5秒くらいで考えてくれました。
視覚優位の方のアイデアは時空を超えますね、その才能に度肝を抜かれました。
フェルマータがひっくりかえった形なの、わかります?
デザイナーさんは視覚優位で言語情報を読み取るのが苦手、ただイメージ化するのは超絶得意。
一方エンジニアの方は言語優位、言葉を使ってやりたいことを「仕様」に落とし込んでいきます。
コミュニケーションがうまくいかないこともあったのですが、フェルマータは誰一人として対話からは逃げなかった、どのチームよりもディスカッションをしたという自負があります。
(おかげで作業が進まず、エンジニアさんには徹夜、デザイナーさんには当日ギリギリまで発表スライドを作成してもらうことになったのですが…)
当事者枠で2名参加いただいていましたが、その方々の意見から「本人の意見を上司へフィードバックできる」というコンダクターの根幹ともなるアイデアが生まれました。
メンバーみんなの意見を尊重し、完成したのがコンダクターのコンセプトです。
プロダクト「コンダクター」について
コンダクターの概要
コンダクターはオフィス環境で使う業務支援ツールです。
時間管理ができない、見通しが立てづらい発達障害の特性を補います。
システムは①上司用、②部下用と2つの画面で構成されています。
上司用画面では、仕事の最小単位である「タスク」を作り、部下に振り分けることができます。
コンダクターのUIが、上司のタスク作成を助け、発達障害を持つ方でもわかりやすい指示ができます。
この時、部下のキャパシティを超えないよう管理します。
また部下の仕事の得意・不得意を分析できます。
部下用の画面では、タスクに集中できるように、以下のような視覚的な支援を行います。
✔取り掛かっているタスクが全画面表示される
✔所要時間がタイムバーとして表示される
✔作業の目的を常に表示する
また、タスクのやりやすさを上司にフィードバックすることもできます。
(画像:実際の上司用操作画面の一例)
コンダクターは発達障害の方の生きづらさを解消する
コンダクターのアイデアの根幹は「障害は環境が作っている」という発想です。
就労支援をしていく中で、最終的には企業への就職をしてもらうのですが、障害者就労では単純な作業しかなかったり、発達障害をクローズにして就職するとやはり困難が生じますし、グレーゾーンで手帳が取れない方もいます。
結局、「発達障害に理解がある一般企業」が増えないと、発達障害を持つ方の生きづらさは改善されないのではないかという想いが日増しに強くなっています。
また、中小企業の多くは人出不足です。
発達障害の方が働きやすい職場を作れば、人出不足も解消され、発達障害を持つ方も生きやすくなる、コンダクターは社会変化に大きなレバレッジをかけることができるサービスです。
「環境が変われば、人は輝き出す」
私たちフェルマータは、そう信じています。
クラウドファウンディング実施予定!
コンダクターを作り、職場環境を変えるために、7月よりクラウドファウンディングを実施します!
みなさまご支援をよろしくお願いいたします!
クラウドファンティングは2019年12月17日から2020年1月31日に実施され260人の支援により1,124,100円の資金を集めました。詳しくはこちら
最後までお読みいただきありがとうございました!
文:寺戸 慎也
写真:Ten
映像:大川 弘晃
関連情報
・ハッタツソン 紹介ページ
・寺戸 慎也 Twitterアカウント
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