他者とのつながりを感じながら、自分の「好き」に夢中になれる空間を。曽根さくら
こんにちは。ラーンネット・あーるnote編集部です。
前回に引き続き、今回もこの春ラーンネット・あーる(以下、あーる)のメンバーに加わった、ナビゲータをご紹介します。
今回インタビューさせてもらったのは、4月からナビゲータとしてあーるの子どもたちと過ごす曽根さくらさん。通称さくちゃん。この春、大学を卒業したばかりのさくちゃんに、あーるに辿り着くまでの流れと大切にしたい教育について聞きました。
きっかけは、大学時代に感じた「違和感」だった
—— まずは、自己紹介をお願いできますか。
はじめまして。曽根さくらです。2024年1月からあーるでインターンをさせてもらっていて、大学卒業後の4月からはナビゲータとしてラーンネット・グローバルスクール(以下、ラーンネット)の子どもたちと一緒に過ごしています。毎週火曜日はあーる、その他の曜日はフルスクールを担当しています。
ラーンネット・グローバルスクール:あーるの運営母体。あーるの他、「フルスクール」や「ラーンネット・エッジ」、「バンビーナ」なども運営している。
—— 大学時代はどのように過ごしていましたか?
もともと子どもが好きだったので、人の成長を近くで見られる職業として、小学校の先生になりたいと思っていました。高校卒業後は幼稚園教諭と小学校教諭の免許が取得できる大学に進学し、教育の歴史や制度について学びました。その中で、今の学校教育と自分が思い描く教育に違いを感じるようになったんです。
このまま小学校の先生になっていいんだろうか?という疑問も持つようになり、大学2年生のときに就活支援をしている企業で長期インターンをさせてもらうことにしました。
たくさんの就活生と面談をする中で感じたのが、「やりたいことがない」と言う学生の多さでした。さらに、「将来、どうなりたいですか?」という質問に対しては、「とりあえず、大手企業に行きたい」という答え。それぞれ違った個性や良さがあるはずなのに、返ってくるのはみんな同じような答えだったんです。
考えてみると、学校教育ではみんなと一緒であることが正しいとされてきたなと思いました。何か飛び抜けるようなことがあったら、押し込められるような感じもあって。私自身、それが当たり前だとも思っていました。
もっと幼少期のうちから自分の個性を伸ばしていける環境で過ごすことが大切だという気持ちが、インターンをする中で強くなっていったんです。
失敗してもいい。あーるは一人ひとりが大切にされる場所
—— それで、子どもの個性を伸ばせるような環境に目を向けるようになったのですね。あーるとはどのように出会ったのでしょう?
いろんな世界を見てみたいと思った大学3年生の頃、とにかくイベントに参加したり教育現場を見に行ったりと、人と会う機会をつくっていきました。その中で、知人の紹介であーるの代表であるいさみん(齊藤勇海さん)に出会ったんです。ちょうどあーるが開校した直後くらいのタイミングでした。その後、9月頃に見学もさせてもらいました。
—— 見学したときは、どんな印象を持ちましたか?
初めて行ったときから、自分を受け入れてくれる場所だなと感じました。実はその日、バスの時間を間違えて集合時間に間に合わなかったんです。すごく焦りましたし、緊張してしまって…。けれど、到着して自己紹介をしたときに、子どもたちからは「大丈夫だよ。あーるだから」「あーるでは失敗してもいいんだよ」という言葉が返ってきたんです。
そして、その後の活動では、それぞれが自分の好きなことに夢中になっていました。別のことをしているけれど、お互いが同じ空間にいることは認識していて、時に交わったり合わさったりもする。それぞれが大事にしているものを大事にしていく空気感が印象的でした。
学校の概念が変わったような感覚でしたね。子どもたちからは、あーるは一人ひとりが大切にされる場所なんだと教えてもらったような感じがしています。
ちょうどその時期にラーンネットでナビゲータを募集していると知って、4月から正式に働かせてもらうことになりました。
—— ナビゲータになる決め手は何だったのでしょう?
独立したい気持ちはずっとあって、将来的には自分でスクールをつくることも考えています。けれど、今の自分が持っているリソースを考えたときに、まだまだ足りない部分が多いなとも思っていて。
なので、大学卒業後はやりたいことをやりながら、自分のスキルアップもできる環境に身を置きたいと思っていました。ラーンネットでは、ナビゲータ同士もお互いを尊重しあっている感じがして、居心地の良さを感じていました。そう考えると、ラーンネットが自分にとって一番しっくりくる場所だったんです。
世界を広げる“環境”をつくっていく
—— 実際にあーるで過ごし始めてからは、どのようなことを感じますか?
とにかく自分自身が自然体でいられる感じがしています。例えば、以前の私は、子どもたちの前では「笑顔でいないといけない」「元気でないといけない」という思い込みがありました。けれど、あーるの子どもたちは相手がどんな状態でも受け入れてくれる感じがするんです。
あとは、いさみんが思っていた以上に子どもたちに向けてしゃべる場面が少ないことに驚きました。先生のような立場の人は「次にこれをやるよ」「時間を見てね」など、子どもたちにたくさん声をかけるイメージだったんです。いさみんは、子どもたちと同じ空間で同じ目線にいるけど、必要以上の声かけはしていませんでした。それによって、子どもたち自身が場の流れをつくっているように感じました。
—— あーるで過ごす中で、大切にしていることを教えてください。
子どもたちは大人から何かを与えられなくても、自分たちで考え、実行する力があると思っています。なので、いさみんと同じように、私も必要以上に声をかけることはしないようにしています。その中で意識しているのは、「環境をつくること」ですね。
例えば、プロジェクト活動の時間は私も子どもたちと一緒になってものづくりをしています。もともと工作が好きというのもあるのですが(笑)、いろんな廃材を使って作る様子を見せることで、子どもたちの世界が少しでも広がるといいなと思っています。
—— これから、取り組みたいことはありますか?
あーるでは、子どもたちと一緒に自分と他者のつながりを感じられるような体験をしていけるといいなと思っています。
私自身、見えないものを見ようとする力ってすごく大切だと思っていて。例えば、今食べているお弁当はどうやってここまで来たんだろう?と考えることが好きなんです。当たり前のように目の前にあるものの先に、どんな人のどんな思いがつながっているのか。そう考えていくと、世界は人とのつながりでできていると感じられます。
私たち大人の役割の一つとして、子どもたちがいろんな人と出会うきっかけをつくっていきたいですね。
取材・文:建石尚子