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障がい者支援の素人だった僕が障がい者支援者の研修事業を立ち上げるまでの話②

前回の記事

対極にある、障がい福祉とビジネス

前回は、スペシャルラーニングの立ち上げから賞をもらうまでの話をまとめましたが、今回は一体どのように”ビジネスとして成立させたか”という点で書いていきたいと思います。
早速、値決めの話からしたいと思うのですが、障がい福祉業界に特化したeラーニングサービスが存在しなかった時代に、一体自分たちのサービスは「いくらなのか?」という値決めをすることが一番難しかったです。例えば、他社が同様のサービスをしていて、「それと比較して安いですよ〜」とか「(他社にはない)こんな機能がついているので値は張りますが、結果お得ですよ〜」みたいな、比較する情報があれば簡単に決めれたのかもしれませんが、スペシャルラーニングの場合はそうではありませんでした。
実は、スペシャルラーニングで賞をとるにあたってサポートをしていただいた中小企業診断士の柴田先生との出会いがあり、「値決め」について相談をしました。その時に、「まずはユーザーとして対象となる人たちにアンケートをとりましょう!」とアドバイスをくださり、早速アンケートを作りました。複数の障がい福祉サービス事業所へ「一人当たりの年間研修予算」についてアンケート調査を行ったところ、当時の平均が年間約2.2万円でした。
僕が勝手にそれを月額で割って計算し、(一人当たり月約1,800円くらいかと解釈をして)「一人月額1,500円」という価格からスタートしました。

SaaSのビジネスモデルの落とし穴

「一人月額1,500円、低価格でスタートでき導入しやすい料金体系です。」
お客様にも寄り添った料金で、実際に受講してくれた支援者の方にも喜んでいただき、とても嬉しい気持ちになりました。
このままもっと広げていきたいという気持ちもありながら、お金が全然なくて、複雑な気持ちで過ごしていました。
2016年頃はSaaSのビジネスモデルについて今ほど情報があったわけではなく、(僕の無知が故に)むしろ全く知らずにSaaS事業をスタートをしたので、お客様が増えてサービスに喜んでもらえる一方で、通帳の残高がどんどん減っていきます。
その中でも知恵を出しながらなんとかサービスの拡充を図っていたのですが、いよいよ会社があと数ヶ月で倒産するといったピンチが訪れました。

先輩経営者との出会い

その時に、たまたま大阪府のスタートアップエコシステムであるBooming!を通じてご縁をいただいた株式会社i-plugの中野 智哉社長と一緒にテニスをしていたときに、僕が放っていた異様な死臭を嗅ぎ取っていただき(笑)、マンションの一室であるオフィスへ来て、ビジネスモデルについて指導をしていただきました。
「リーンオンミーがやっているのは、SaaSというビジネスモデルと言ってね・・・」と丁寧に教えていただき、ようやく理解ができました。
SaaSモデルは、お客様に長くサービスを使っていただくことで利益が出る構造になっていて、最初はサービス開発でお金がたくさん必要なのか、という頭の良い人であればすぐにわかったであろうことを、僕は全く知らないままやっていました。すぐに「資金調達」という今でこそ聞き馴染みのある言葉ですが、当時は何も知らない中で一から勉強しつつ、チャレンジをしました。そこで、ようやく投資家から数千万円の資金を出資いただくことができ、サービスを続けていくことができました。

中野社長の特集番組です!

スペシャルラーニングの価値を上げる

サービスをリリースして4~5年くらいは正直、お客様からするとスペシャルラーニングには価値がなくて、この障がい福祉業界でチャレンジしている志村という人に対してお金を払ってくれていたのだと思います。(本当に感謝しています)
なぜなら、当時のコンテンツ数は30本で、3ヶ月で視聴し終わってしまうので、使い続ける理由がない状態でした。(もちろん「反復学習」は大事なので、繰り返し視聴することを提案したり、新しいコンテンツも作りながらで一生懸命にやってました)

  • コンテンツ(研修動画)をもっと増やさないといけない

  • システムをもっと使いやすくしなければいけない

  • お客様がちゃんと活用できる状態をつくらなければいけない

これらを同時に、そしてスピーディーに行う必要がありました。
当時、eラーニングの動画に大きな金額を投資するプレイヤーは少なかったと思います。それは、予算をかければかけるほど売上が上がるような「販促動画」とは違って、研修動画というのはクオリティをどれだけ上げても提供料金が上がるわけではないという性質だったからです。
ただ、僕は学生時代は硬式テニスしかしておらず、勉強が全然できなかったので、“退屈な動画”は見ていられない特性を持っていました。笑
そのため、テレビ番組のような見やすい構成で、わかりづらい言葉も排除されていて、視聴者にスッと入ってくるような、そんな動画が欲しかったのです。
ここは、今でもこだわりポイントの一つですが、テレビ番組を制作していたプロにジョインしてもらい、映像や音声にもこだわり、時にはロケにも行きながら、質の高い情報を見やすく届けることに価値を出していきました。
システムについても、前回の記事で話した素人の僕が開発したものをいつまでも使ってもらうわけにはいかなかったので、一からフルスクラッチで開発をしました。エンジニアチームを組成し、UI/UXにおいてはゲーミフィケーションも取り入れながら、より学習者の孤独感が減るような工夫をして開発をしました。
そして、カスタマーサクセスチームの立ち上げが、僕の想いがとても反映されているこだわりになっています。
それは、「リーンオンミーは、障がい福祉で働く職員の皆様に研修を受けてもらうことが目的ではなく、適切な支援を提供し続けられる環境を作ってもらうことを目的にしている」ところです。
利用者さんの支援に日々忙しくしている現場に対して、スキマ時間を活用して学んでいただくこと。そして、現場にとことん寄り添うことで障がい福祉のサービス種別による適切な視聴するシチュエーションを設計したり、スペシャルラーニングの活用方法をお客様と一緒に作り上げてきました。

事業を立ち上げる本質

スペシャルラーニングの最大の価値は、リーンオンミーの仲間と一緒に、そして障がい福祉業界の皆さんと一緒にサービスを作り上げてきたことです。
自分たちが実現したい未来を話し、お客様に共感いただき、お金もいただきながら一緒にサービスを作っていく、それがSaaS事業を立ち上げる本質なのではないかと思っています。
僕自身は大したことはできていないのですが、リスクだけは誰よりもとることを意識してきました。これは自分のエゴですが、リーンオンミーで取り組む事業が、知的障がいのある方にとって生きやすい社会につながれば嬉しいなと思っています。

最後に

リーンオンミーでは現在、一緒に働く仲間を募集しています!
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