弱みをさらけだすことを、恐れないで。個人のストーリーに焦点をあてる教育者、飯田 麻衣さんにインタビュー!
こんにちは!Lean In TokyoのEducation Program Specialist、りさこです!
女子中高大学生が一歩踏み出すきっかけを作る、コンテンツ企画を担当しています👭
今月から、「教育」と「ガールズエンパワメント」をキーワードに、教育界のプロフェッショナルの方々への、インタビュー記事を掲載していきます🙌
第一弾では、Lean In Tokyoアドバイザーの松田 悠介さんにインタビューをさせていただきました!🎤
今回は、教育ベンチャーで小中高生の子供達の英語教育に携わられ、現在はベンチャーキャピタリストとして、アーリーステージのスタートアップへの投資業務や投資先支援に従事される、飯田 麻衣さんにインタビューを行いました!🎉
飯田 麻衣さん・ベンチャーキャピタリスト
大阪出身。東京大学公共政策大学院卒。5歳から11歳半までアメリカで過ごす。帰国後は逆カルチャーショックに悩み、自身のアイデンティティについて考え始める。東日本大震災後、東北地方での活動家との出会いから刺激を受け、世界へ日本各地の魅力を発信する「地方からの外交」をライフワークとする。国際基督教大学(ICU)で国際関係学を専攻。在学中、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に留学。EdTech企業を経て、現在はベンチャーキャピタリストとして従事する一方、バイリンガル教育者、ブロガーなどの一面も持つ。
帰国子女の体験から生まれた、教育への興味
りさこ:まいさんは5歳から11歳半の6年半、海外に住まわれていらっしゃいましたが、この経験がどのように今のまいさんに、影響していると思いますか?
まいさん:帰国子女として過ごした幼少期から、私は「バイアスで人の接し方が変わる」ということを知りました。
海外では多様な環境に身を置くことで、'self(自分)'と'others(他者)'という概念に気づいたのですが、一方、この概念が時には攻撃的になることもある。そして、ネガティブなバイアス的意識が働いてしまう、ということを知ったのが、帰国後です。
昨年、NHKの方にも取材していただいたのですが、帰国後は日本の小学校になかなか馴染めず、不登校になってしまった時期もありました。今振り返ると、自分のアイデンティティに悩んだこの期間が転機となり、自分の「声」を発見することができたのではないかな、とも思います。
りさこ:これまで常に教育のテーマに携わられてきましたが、教育に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか?
まいさん:一つは、親が教育者だったことが影響していると思います。
また、これまでの実体験から、一人一人のストーリーに耳を傾けることに関心を持つようになり、教育や関連した他のプロジェクトに携わるようになりました。
アイデンディティとインポスターシンドローム
りさこ:まいさんは帰国子女として、そして日本人としてアイデンティティを模索されていたかと思います。今はご自身のアイデンティティについて、どのように考えられていますか?
まいさん:正直、今もまだ私というアイデンティティを内面化している過程です。その過程で、最近興味を抱いているのが、インポスターシンドロームです。
りさこ:インポスターシンドロームは、Lean Inでもよく取り上げられるトピクです。自分の成果を自ら肯定できず、自分は嘘をついている、「詐欺師」であると感じる心理的現象を指します。社会的に成功した人たちの中に、多く見られようです。
まいさん:興味深いのが、日本語でインポスターシンドロームについて調べると、男女で比較して女性の方がこの傾向が強い、という記事が多く見受けられます。一方で、アメリカなど英語で書かれている記事を読んでみると、最近の発見で、実は男女に差はない、というデータも多いです。
この違いをみると、インポスターシンドロームは女性に多いという考えは、日本特有なのか、もしくはそもそもこの現象自体、社会が作り上げたものなのか?それを私たちは内面化してしまったのか?と、考えさせられます。
私が「インポスターシンドロームに陥っているかも?」と自覚を持ったのは、実は最近です。これまでは、自分は関係ないかな?と正直思っていた節があります。でも転職を経験して、社会からの見られ方が変わったことにより、自分がこれまで強みだと感じていた部分の捉えられ方も変わりました。そして、どこに自信を持てばいいのかわからなくなり、混乱してしまうことがありました。
今はアイデンティティを内面化することで、少しずつ自信を取り戻しています。
弱みを見せることは、強みになる
りさこ:インポスターシンドロームを体験されている方は、特にLean Inのフォロワーの方に多いのではないかと感じます。まいさんはどのようにこの現象を内面化、あるいは乗り越えようとされていますか?
まいさん:いくつか私が意識していることがあるのですが、まずは、'Don't just accept your faults but also accept your strengths.(あなたの失敗や弱みだけを受け入れるのではなく、強みも受け入れて)'というメッセージを意識しています。
一個でも間違えた!と感じると、その一つの失敗を過大評価してしまうことが多いと思うのですが、それはあくまでも一瞬のミスに過ぎません。実際は、強みの部分の方が大きいはずなので、失敗してもこれは一瞬、一つのことだから大丈夫!と思うようにしています。
また、この強みの部分に自分で気づくことは、難しい一方、他の人と話すことで、自分が気づいていない強みに気づいていくことが多いと感じます。周りのサポートがあって、自信を少しずつ積み重ねていくイメージです。
もう一つ大切なことが、'Be vulnerable(弱くあれ)'です。弱みをさらけだすことは、とても怖いと思います。でも、実際に弱みをみせてみると、けっこう周りの人が前向きに受け入れてくれると感じます。
私も先述のNHKの記事では、これまでの悩んでいた過去や嫌だった経験をさらけだしてしまったので、これを読んだ人達からどう思われるんだろう?と不安でした。
ですが実際は、私も同じような経験をして、悩んでいました!という声が、知らない方からも多く寄せられ、私だけじゃないんだと自信を持つことにつながりました。
弱みをさらけ出すことで、自分の内なる強みに気づいていけると、感じた経験でした。
自分だけのキャリアパスを作っていく
りさこ:これまでも様々なプロジェクトに携わられていました。どのようなプロジェクトに携わられたか、改めてお伺いできますか?
まいさん:ひとつはVO1SSという、ひとりひとりの「声」を伝え、その「声」を次の誰かへとリレーしていくことをコンセプトとしたメディアプラットフォームで、コンテンツの編集やマーケティングに携わりました。
他にもフリーランスで翻訳・通訳業務を担ったり、TEDxイベントの運営スタッフなど、学生時代からマルチタスク的に様々なプロジェクトに携わってきました。
それぞれの活動に、実は共通していることが2つあります。まず、個人の可能性を引き出す活動である、そして自分が単純に好きでやっている点です。
りさこ:VO1SSでは以前、私もインタビューをしていただきました。これらのプロジェクト以外に、仕事でも多様なキャリアを積まれているかと思います。異なる分野に一歩踏み出すことは、怖くなかったのでしょうか?
まいさん:確かに、教育からファイナンスというキャリアはかなり珍しいと思います(笑)
私もキャリアを歩み始めた当初はファイナンス業界に進むとは、全く想像していませんでした。転職をする際は、スタートアップに関わり続けたかったからこそ、ベンチャーキャピタル業界には興味もありました。しかし、全く新しい世界に一歩踏み入れることに不安もありました。悩んでいたその時、尊敬する方に「ベンチャーキャピタリストに向いていると思う」と言っていただけたことがきっかけで、今のキャリアに邁進することができました。
新しい分野や、これまでと異なる分野に飛び込むことに最初は誰もが躊躇すると思いますが、一度飛び込んでしまえば、意外とスムーズに前進できるんだ、と実感しています。
誰かをエンパワーする時、意識していること
りさこ:お仕事やプロジェクトで、個人や組織のエンパワメントをされることが多いと思いますが、その時にどのようなことを意識されていますか?
まいさん:常に、相手に共感しようとする姿勢を意識しています。生徒と話す時も、自分が上から教えるのではなく、子供達の事情や心境を把握して、相手がまずオープンアップできる状態を作ることを重視していました。
同じ立場に立って考えることができる状態を作ってから、コミュニケーションを今も取るようにしています。
りさこ:共感をすること、私も教育者としてとても大事だと感じます。Lean InでもAffinity Bias(親近感バイアス)といって、自分と同じようなバックグラウンドや見た目を持つ他者に親近感を覚え、好意的に評価するというバイアスが働くことが、様々な研究で検証されています。
自分と似ているからといって、表面的に評価するのではなく、まさに一人一人のストーリーに共感しながら耳を傾けることで、対話やエンパワメントにつながると感じました。
まいさん、貴重なお話を本当にありがとうございました!
次回のインタビューもお楽しみに!