『売れうつ』について。
pixivで見た『売れっ子漫画家×うつ病漫画家』という作品が胸にもたげっている。これはヤバいものを見てしまった。どうしてくれようか。
この話は鬱病などを抱えた元漫画家、福田矢晴がゴミ溜めの中から売れっ子漫画家の上薗純に引っ張られて同居生活を始める物語である。矢晴の希死念慮に勝手に感情移入した私の心にはべっとりとこの漫画がべたついて離れない。彼のと私のを同じだと無責任に言うことはできないし、きっと読者のフィルターを通して全員が全員全く同じことをこの作品から感じる取ることはないのだろう。しかし私は矢晴の心を聞く度に胸が痛んだのと、“希死念慮”を持つ共通点が穿った。一言で言うなら魅了された、というべきなのだろう。どうしよう。こういうのを見ると難しい言葉ばかりが出てきてしまう。とりあえずキーは“希死念慮”ということだけは確かである。矢晴の口から何度も出されていた。と、ここまで言ってるくせに私は矢晴の希死念慮の捉え方が自分のと異なることに違和感を覚え、彼の気持ちは希死念慮で表されないのではと考えている。こんなことは後で書くとして、先に魅力を綴りたい。
個人的な『売れつづ』の魅
コメントしたことと被ってしまうが、「視点が変わるとこんなにも違うのか」ということが一つ。最初は矢晴の視点で物語が進む。自分の人生について。何が起きたのか、どうしてこうなっているのかを。そして彼に私たち読者は浸かる。最初私は上薗純という人間は言ってしまえば狂っていて、矢晴の漫画が大好きなストーカー気質のやべえ奴という印象しかなかった。『覆水盆に返らず』の岸塚みたいな。だからこれ依存になんないと幸せにならないやつ?とか思ったりもした。でも、13話を見たら全部ひっくり返った。そりゃあそうだ。矢晴の状態を見てみろ。私の心には衝撃が走り、読むのを止められなくなった。ここはもう読んで体感してもらいたい。だから詳しくは言わない。URLを一番下に残しておくのでぜひ飛んで見てほしい。
この作品関してはもはやもう分からない。開かないビンを放棄してはいけないのだが、掴みどころのない。私には矢晴が狂ってるのか純が狂ってるのか、はたまたどちらもなのか分からない。視点によって全部変わってしまう。『ギヴン』の由紀もそうだったけれど。これほど第三者目線が欲しいと思った漫画はない。いや、正確には読者が第三者目線だということになるのかもしれない。しかし、感情を一度入れたらぬめりとられて抜け出せない。もう何が正しいのかも分かんない。深い、深海のようなお話。
そしてこれを書いている作者の溺英恵様は博識とみえる。それは吹き出しからも分かるように、問題提起と解決を行う。言葉の使い方が巧み。22話はクールダウンがあったから良いものの、時間を置いて、丁寧に読んでいかなければ何を伝えようとしてるのか分からないのに、分からないのに、重すぎて海外のお菓子だった。一度ふぅー、と息をついてから読むの繰り返し。矢晴の家族の感じが私みたいなのがたくさんいるやって思った。一歩外れると崩れる全部を目の当たりにした。とにかく読んで!!!!!!
希死念慮とは
まず、具体的な理由はないが漠然と死を願う状態を「希死念慮」と言う。芥川龍之介とか太宰治とかがこれに当てはまるのでは?
「将来へのぼんやりとした不安」が呼んだ自殺。これは希死念慮と言える。個人の話をすると、私は中学二年生ぐらいの時に離人病のようなものだった。いじめられてた時も親に中々言えず公に(ここでの意味は学校側やクラスメイト、家族に知られた)発覚したのもあれば、してないものもある。だから高校一年の時に友達になんとなく、「自分をテレビ越しに観てるような感覚だった」と告げたら彼女が離人病について教えてくれた。症状がピタリと当てはまってしまったのでそうだと思っている。高校に入ってからは無くなったものの、将来へのぼんやりとした不安を纏わり付いていたし、病むことも多かった。年々減少していったが。
そして、矢晴の場合。彼は希死念慮というよりも正確には自殺願望に近いと私は思う。彼の死にたい理由は22話で希死念慮という言葉を使う前の台詞で明かされた。そこに私は違和感があった。疫病や人間関係などの解決しがたい問題から逃れるために死を選択しようとすることを「自殺願望」と定義される。まさにこれではないか。いや、…………うん。人間の心を正確に分割して区別して整理整頓なんて出来ない。この漫画はとてもリアリティのある。矢晴は自殺願望からの希死念慮といった形か。最初に死にたい理由を持つけれども、段々と死にたいって感情だけが独り歩きをしていくような。
なんて思って、12話の矢晴を思い出した。
人間というのは実にこんがらがって、ケーブルとかネックレスとか比じゃないよね。表せないから絵があるのにね。
…こんなにmessになるとは思ってませんでした。時間をください。まだ考えがまとまってなかった。もしくは、この作品に関しては一生まとまらないのかも、しれない。
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