インドを編む山荘【毎週ショートショートnote】
その山荘を訪れたものは、二度と帰らないという。
そんな都市伝説に魅かれ、僕はI県に来ていた。ライターとして活動して2年。この記事の出来が、僕の将来を左右しかねない。
能杜山の8合目。僕は、山荘『ニューデリー』の扉を開けた。
そこは、編み物をしている男女であふれていた。奥から、外国人風の男が顔を出す。
「ハイ。」
毛糸玉を手渡される。
「あの…これは…」
「カレー編ンデ、見本コレ。」
指差すには、毛糸で製作された『食品サンプル』があった。ところどころ解れている。
「一番上手イヒト、20万アゲル。」
僕の出来は散々だった。若い女性が20万円を持って下山していった。
「くそぅ、悔しいな…。」
荷物をまとめ下山しようとすると、先ほどの男が僕を呼び止めた。
「何回デモ、チャンスアル……。泊マルトイイ。」
僕が20万円を獲得して下山したのは、それから38日後だった。
失踪届が出されていたことは、後になって知った。
了(404字)
#毎週ショートショートnote
こちらの企画に参加させていただきます。
あとがき
僕だったら20万のためにここに入り浸る。
ショートショート、(出来はともかく)書くのが楽しくなってきた。これからも参加させてください。
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