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自作小説集

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長いものからショート作品まで、いろいろ書いてみます。怖い話って書いてても怖いよね。
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#宇宙人

書庫冷凍【毎週ショートショートnote】

1000年に一度の大寒波で、大学の書庫が凍ったらしい。 人的被害が出るほどでもなかったのに、どうして凍ったのか。大学は総力を挙げて調べることを宣言した。 「どう思うよ?」 学食でカレーを食べながら、森田に尋ねた。 「…どうなんだろうな」 そう言って視線を逸らす。おかしい。 「…俺は超常現象とか、UMAのせいだと思ってんだけどさ。森田は、どう思う?」 「…宇宙人だと思うよ、多分」 森田の額には、うっすらと汗が浮かんでいる。やっぱりおかしい。 「森田…何か知ってる

【短編】食卓と惑星

「僕ね、故郷の惑星に帰らなきゃいけないんだ」 二人で夕ご飯を食べているときに、君は申し訳なさそうにそう言った。 今日のメニューは君の好きなとんかつで、私は今日の出来に自信があった。いつもより上手く揚げられたんだ、と言うつもりだった。 君が私の家に来たのは、10年前だった。当時話題になった流星群に紛れて、君は宇宙からやって来た。 犬とも猫ともつかない奇妙な姿の生き物。その上、空から降りてきて間もなく、たどたどしい日本語を話し出した。 間違いなく、宇宙人だ。私はその生き物を抱え

【短編】彼は、やってきた。

瑶季はそれを見て、とっさに身を隠した。 ここ数日雨も降っていないのにあった、大きな水たまり。そこから、人が出てきたのだ。 宇宙人、幽霊、それとも、地底人? 瑶季の奥歯は、カチカチと音を立てている。 水たまりから出てきたのは大柄な男だった。辺りを見回している。 何かを探しているのかな、それとも、見られたくなくて警戒しているのかな。 見つからないうちに、ここから逃げよう。そう思い、後ずさりした。 そのとき、足元のガラス片を踏んだ。ぺきっと音がした。 男は、こちらを振り返った。

【ショートストーリー】忘却隊

「それ」が遥か遠くの宇宙からやって来たのは、2024年の暮れのことであった。 「アフリカ大陸南西部に宇宙船が飛来した」というニュースに誰もが驚きを隠せなかった。各国宇宙機関の「監視」をかいくぐって突如として現れたからだ。 アフリカ各国、米国、中国、ロシア、そして日本。ほぼ全ての国から代表団が派遣され、宇宙船の乗組員との対話が計画された。 会議が始まったことがニュースで伝えられた頃には、代表団は全滅していた。 たった一体の宇宙人であった。 30本近い触手を持った、人型の宇宙人