【短編】彼は、やってきた。
瑶季はそれを見て、とっさに身を隠した。
ここ数日雨も降っていないのにあった、大きな水たまり。そこから、人が出てきたのだ。
宇宙人、幽霊、それとも、地底人?
瑶季の奥歯は、カチカチと音を立てている。
水たまりから出てきたのは大柄な男だった。辺りを見回している。
何かを探しているのかな、それとも、見られたくなくて警戒しているのかな。
見つからないうちに、ここから逃げよう。そう思い、後ずさりした。
そのとき、足元のガラス片を踏んだ。ぺきっと音がした。
男は、こちらを振り返った。