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自作小説集

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長いものからショート作品まで、いろいろ書いてみます。怖い話って書いてても怖いよね。
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#高校生

【短編】彼は、やってきた。

瑶季はそれを見て、とっさに身を隠した。 ここ数日雨も降っていないのにあった、大きな水たまり。そこから、人が出てきたのだ。 宇宙人、幽霊、それとも、地底人? 瑶季の奥歯は、カチカチと音を立てている。 水たまりから出てきたのは大柄な男だった。辺りを見回している。 何かを探しているのかな、それとも、見られたくなくて警戒しているのかな。 見つからないうちに、ここから逃げよう。そう思い、後ずさりした。 そのとき、足元のガラス片を踏んだ。ぺきっと音がした。 男は、こちらを振り返った。

可愛い子には変化をさせよ【毎週ショートショートnote】

同じクラスの松田は、地味で控えめな女子だ。 だが俺は気付いていた。『化ける』と。メイクのプロである姉に写真を見せると、「あんたもわかってきたじゃないか」と笑った。 作戦は開始された。 「松田さん、今日うち来ない?…勉強、教えてほしいんだ。」 半分本心である。松田は学内一の秀才だ。勉強を教えてもらう見返りなら、用意してある。 「…いい、けど。」 よし、かかった。俺はスマホを取り出した。 「いらっしゃい!よく来たわね。」 仕事モードの姉に迎えられ、松田はびびっている。そのまま

【短編】宣戦布告

ぼんやりとラケットを眺めた。 粒高ラバーが貼られた日本式ペンホルダー。 時代遅れのペンホルダー。ましてや表面にしかラバーを貼れない、日本式。 粒高ラバーは、相手のボールに対し、不規則な回転がかかった返球をすることができる。その一方で自分から回転をかける事は難しく、強打にも適していない。守備的戦術には適しているが、使用する人は少ない。 要は『時代遅れの、少数派』。そういう風に作ったラケットを、僕は握る。フォアの素振りを二回。バックを三回。大きく息を吸って、長い時間をかけて吐

【短編】カノジョは翼竜

「今日からみんなと一緒に勉強する加藤さんです」 そう言って先生が紹介した『加藤さん』は、プテラノドンだった。 プテラノドン 中生代白亜紀後期に生息していた翼竜。翼開長は7~9m(ロンギケプス種7~8m、ステルンベルギ種9m。専門的な話は端折る。だってこれは専門的な話じゃないから)。 そう、そのプテラノドンだ。 大きさこそ人間大になっているが、どこからどう見てもプテラノドンだった。高校2年にして、プテラノドンの同級生ができた。目の前のプテラノドン加藤が、口を開く。 「はじめ