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中国映画レビュー 《第二十条》


 先ずこの映画を語るには、この映画に至る道のりに若干触れずにはいられません。
 この映画、観る前から张艺谋(チャン・イーモウ)の作品だと知っていて心待ちにしていました。
 というのも、张艺谋の作品は「初恋のきた道」あたりから観ていなくて、一昨年、ある偶然から《悬崖之上(邦題:崖上のスパイ)》(2021年公開)という彼の映画を知り、久しぶりに観ることにしました。

 ただ正直言うと、张艺谋もかなりのキャリアで、お歳も召されてるはずだから、撮り方とか内容とか少し古かったり、斬新なものはないんだろうなぁと勝手に思っていて、あまり期待していませんでした。。。

 と・こ・ろ・が!!😝

 この《悬崖之上》、メッチャ面白かった!!チャン・イーモウ監督、マジすごいっす!👍
 张艺谋老师,真对不起,现在我心里只有内疚感!!ということで、そこから立て続けに《满江红》(2023年1月公開)、《坚如磐石》(2023年9月公開)を観ました。この2本のレビューもいずれ書きますが、特に《满江红》はヤバいです!《悬崖之上》と《满江红》をまだご覧になってない方は《第二十条》より先にこの2本を観てもいいかもしれません😆

 あ~、今回は《第二十条》のレビューなのに、話が他の映画に行ってしまいそう😅
 
 なので、無理矢理グイッ💪と話を戻すと、とにかく张艺谋の映画はやっぱり面白い!と思い、2024年のお正月映画で《第二十条》というのがあると知り、興味を持っていたわけです。
 更に、更に!2023年の年末に《狂飙》というドラマを観たのですが(このドラマ、当社調べでは、中国では知らない人がいないくらい2023年前半の中国ドラマ界を席巻したドラマでした😆)、コレがまたとんでもなく面白い!このドラマの主演が、《悬崖之上》の主演でもあった张译で、《悬崖之上》《狂飙》、更には《三大队》という映画を通して、すっかり彼のファンになっていた自分は、《第二十条》にも张译が出ていると知り、期待値大幅アップ!⤴️
 でも、张译は主演じゃないらしい……え?彼を差し置いて、主演を務めるのは誰?🤔と調べてみたら、雷佳音……あれ?なんか聞いたことあるぞ……確かに最近よく百度とかで名前も見るかも……と思ってたら、既に観ていた《坚如磐石》の主演の人でした😝
 でも、そこまで印象に残らなかったんだよなぁというのが正直なところでした。
 実は《满江红》にもかなり重要な役で出ていたのに、これまたなんていう俳優かを知らずに終わってた、というくらいに印象薄でした。演技がイマイチとかそういうことではなく、ただただあまり印象に残っていなかったということなんですが、コレが彼の最大の武器だということに《第二十条》で気付かされることになります…😆😆😆
 まだ映画が観れない時に宣伝用のポスターを見たら、とにかくキャストが豪華!
 

 《狂飙》で一気に人気爆発した高叶(上から2列目、右から2人目の人)は主役の一人で検察官役。
 その隣は《谁是凶手》というドラマで主役の一人として女性医師を演じていた赵丽颖。写真の大きさからも重要な役柄だと想像できます。
 他の演员たちも他のドラマや映画で観たことある人がたくさんいて超期待大です。 
 数えてみたら、このポスターに写っている21人のうち15人はその出演作品を観たことあって、しかも何に出ていたかもわかるくらいには知っていました。
 観たことのある演员が出ているとそれだけでテンションが上がるのはなんでなんでしょうか。不思議ですが、あー、アレに出てた人だー!と気づくだけでなんか妙に嬉しいです😆

 あとこの映画で最も印象に残った俳優は、重要な役柄の一人でもある主人公家族の母親役、马丽です👩
 以前観た《西虹市首富》の沈腾の長年の相棒で、彼と並んで开心麻花公司の2大看板俳優だというのは知っていて、彼らの初期の代表作《夏洛特烦恼》に出ているのも知っていたのですが、これまでなぜか観る機会がなく、今回の《第二十条》で初めて彼女の出演作品を観るということで、正直どんな演技をする女優さんなのかなぁと思っていた程度で特別注目していたわけではありませんでした。なので、他の作品で観たことのある俳優がこれでもかと出ている作品にもかかわらず、主演男優・女優のことだけあんまり知らない、印象が薄いというのが観る前の状態でした…
 
 映画の内容そのものに行くまでにえらく時間がかかりましたが、この映画は実力派俳優がこれでもかというくらいに出てくるので、彼らを集めることのできる映画界の巨匠・张艺谋監督の力ってやっぱりスゴイんだなぁと改めて感じました😊

 いよいよ映画本編を観ての感想ですが…

 冒頭、検察庁の敷地外にトラックが何台も抗議のために押し寄せ、検察側とドライバー達が対峙する場面がありますが、皆を代表して喋ってる男が既にめちゃくちゃ知ってるし笑
 この人は《狂飙》では主人公に協力する元服役囚の役をやってた人ですし、その対応をしている検察側の若手検事は《三大队》の中で石头という刑事役をやっていた人で、その上司役の女検事もその上司も両方とも《狂飙》に出ていた俳優さんなので、なんか同窓会でも見てるような気分になりました😆 

 主人公・韩明はその外見からは全く鋭さを感じさせない、ちょっと冴えない感じの検事。息子の将来のために都市部の検察庁に一時的な仮任用みたいな形で異動願いを出して、なんとかそこで正式採用されるために必要とあらば、上司にゴマもすることも厭わないといった役。
 
 その韩明の妻・李茂娟は、子供と家庭が何より大事、子供のためなら何でもする気の良い、そして少し涙脆い、喜怒哀楽豊な中国の東北のおばちゃんといった雰囲気。
 
 この2人の息子役は初めて見る俳優だけど、これがまた現代風イケメン👦なんでも出自はアイドルだそうです。なんか普通に俳優できそうだけど、友達に言わせると演技的には若干大根感もあるとか…まぁまだ全然若いし、自分はかなり好感持ちました☺️まっすぐ育ったんだろうなという正義感を持った子供で、学校でいじめられっ子を助けて、その時にいじめっ子に怪我をさせてしまったところから物語は展開していくんですが……

 今回は映画のストーリーを逐一追うことはしません!
 というのも最初は気になるシーンと俳優陣の魅力について書こうと思って書き出したのですが、いくら書いても終わらなくなってしまって収集がつかなくなってしまったので……😂

 この映画の見どころはいくつもあると思うんですが、その中でも一番スゴイなと思うのは、正当防衛を巡るある種の社会問題をテーマに取り上げながらも、小気味良い展開と絶妙なテンポで観客に重さと飽きを感じさせずに、でも最後にはしっかりと正義とは何かっていうことを考えさせてくれるところです😌

 あとはセリフが抜群にいい。雷佳音、马丽の演じる主人公夫婦(韩明、李茂娟)の会話はもちろん、高叶演じる同僚検事・吕玲玲とのシリアスな場面の会話もすごくよかった。陈明昊演じる李茂娟の兄・李茂全が主人公夫婦に絡んだ会話なんかはもはやコント並みの面白さなんだけど、セリフまわしも話し方も間も全てが絶妙😊本当に感服です。

 最後のクライマックスで韩明が9分間ほど話しまくるシーンがあるのですが、何回観ても涙が出るくらい感動します。セリフのある俳優もない俳優も表情や仕草でこのシーンを彩ってくれます。更に、最初の方はバックに音楽はないんですが、途中から音楽が入ってきます。《独行月球》の時も音楽とシーンのマッチングが絶妙で涙を誘われましたが、このシーンも相当です😭
 この《第二十条》、セリフがあまりに良すぎて、全部覚えたーいという衝動に駆られ、とりあえず全部セリフをテキストに打ち出したのですが、当然のように全然覚えられず、少しだけ覚えて、あとは牛歩のごとく勉強しています😅

 この映画で雷佳音という俳優を好きになりました。役柄がものすごく彼のキャラクターに合っていたというのはあると思いますが、彼の話し方がすごく好きです😊
 実は《第二十条》を観終わってから、これまでの1年弱で雷佳音が主演している他の映画も何本も観ました。どの映画でも彼の良さは発揮されていると思いますが、この映画のあの役は雷佳音しかいない!と思えるくらいのものでした。

 そしてそして、この映画のもう一人の主人公、李茂娟を演じた马丽の魅力を語らずにはいられません。たくさん語りたいことはあるのですが、敢えてひと言で言うと、李茂娟はとてもとても魅力的な女性で、それを演じきれたのは马丽の演技力に他ならないと思うのです。 
 おしゃべりで明るく、気立てもいいが、ちょっと気の強いところもあり、時にはヤキモチを焼いて、言い争いの喧嘩になると泣きそうになったり、と喜怒哀楽の豊かさを持ちつつ、子供と夫への強い愛情が彼女の行動力の源でもあるすごく人間味のあるキャラクター・李茂娟があまりにもハマりすぎていて本物の马丽もそんなキャラクターなんじゃないかとつい思ってしまいます。 
 雷佳音同様、この《第二十条》を観た後に马丽が出ている映画もたくさん観ました。どれも好きですが、この《第二十条》は马丽にとって特別な意味を持つ映画だったようです。次回はそこら辺のお話を書きたいと思います。  
 《第二十条》は2024年前半に観た映画の中ではダントツに面白かった映画で、今まで観た中国映画の中でもトップ3に入るものです。是非素晴らしい日本語字幕をつけて日本でも広く公開してほしいです😌

 《第二十条》:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️星5つ 自信を持ってオススメできます!
 
  

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