ADLと音楽
ADLという言葉を聞いたことはありますか?
介護業界でよく使われる言葉になりますが、ADLとは
Activities of daily living
の略称になり、
「日常生活動作」という意味になります。
字の通り日常で行われている行為、行動のことを表し
具体的には移動、入浴、排泄、食事などのことを指します。
つまり日常生活をおくるために最低限必要な日常動作のこと。
そしてADLは高齢者や障がい者の方の身体能力や日常生活レベルを図るための指標として使われます。
ADLを評価する方法がいくつも存在しますが、
それはつまりADL評価がとても重要視されていることを表しています。
なぜ重要かというと
ADLレベルを評価し、自立度を判定することは
対象者への適切な治療や訓練に繋がるためです。
ADLは評価法により項目、配点が異なりますが
日本でよく知られている評価法の中にFIM(機能的自立度評価法)があります。
FIMの特徴は
運動と認知の評価項目が存在し、全介助から完全自立まで7段階で評価するため
細かい評価項目になっています。
評価が細かくされることで状態の変化を数値化でき、
どの部分に重点的な支援が必要か把握することが出来るのです。
ADLが低下するということは日常生活動作が思うように出来ないことを意味し、
それはQOLの低下にも繋がります。
身体が思うように動かない、足元がおぼつかないなど
高齢を実感するストレスはADLの低下であり、
外出が減る、生活に刺激がなくなるまどQOLも低下する傾向があるからです。
ではADLを低下させないようにする方法は何があるのでしょうか。
ADLを低下させない方法として
理学療法や作業療法、薬物療法や言語療法のリハビリテーションや介護サービスの導入などがありますが
音楽にも効果があるとされています。
音楽を具体的にどのように使用するのかというと
近年ADLを低下や認知症を防ぐ方法として注目されている「回想法」で用いることが効果的だと考えられています。
そこでポイントとなるのが ”ADL記憶” です。
ADL記憶とは
神経系の発達がほぼ完了すると言われている10~15歳頃の記憶を指します。
ADLの記憶は10~15歳頃の記憶の中に含まれており、
その当時の記憶を失うとADLの維持が出来なくなると言われています。
逆に言えば、
ADL記憶が鮮明であるとADLの維持が出来ると考えられ、
ADL記憶を刺激することで高齢者の生活機能向上が見込めるのではないかと数多くの研究が進められています。
回想法はただ昔を思い出すだけではなく、その記憶を話すことが重要です。
浮かんだイメージを言語化し、話すことでより鮮明なイメージになる、という流れが脳を活性化させます。
音楽はいろいろな記憶や感情と結びやすく、特に高齢者の記憶を刺激します。
音楽には情緒性があるとされ、特に長期記憶と結びつきやすいために優れた回想法になるのです。
音楽療法で回想法は必ずと言っていいほど活用されていますが、
このADL記憶を意識して曲やプログラム内容を考えてみるのもいいかもしれません。