中小企業の人材活用事例集 3 - 株式会社IBUKIさま
中小企業庁が出している事例集 (正式名:中小企業・小規模事業者の人材活用事例集)に掲載されている全50社レビュー。
3本目は、株式会社IBUKIさまです。
全てはインターネットでの情報に基づく、著者の分析、見解であり、株式会社IBUKI様へのインタビューに基づく内容ではありません。私の誤解もあるかもしれませんので、ご理解ご了承ください。
株式会社IBUKIは、職人の技術とデジタル革新を融合させた金型製造企業です。特に人材育成に重点を置き、従業員のスキルアップと暗黙知のデータベース化に取り組み、熟練職人の経験とノウハウを活かし、次世代の人材に技術を伝承しています。
要約
一言でいうと、経営環境の変化に対応するため、製造業向けコンサルティングO2社の傘下に入り、①新たな経営戦略を実直に現場に落とし込んだことと、②その実行を担う現場スタッフの意識改革・成長支援を通じて、1年ちょっとで黒字を達成されました!
すごすぎます
正しい戦略を立て、そのラストワンマイルを担う現場スタッフの成長により、見事に成果を出されました
デジタル化による企業変革事例にも見えますが、単にシステムを外部から導入しただけでは、失敗していたように思います
成功の秘訣には会社を支える人材の成長があってこそ。下請け体質の会社だったおっしゃっていますが、その意識改革だけで1.5倍売上増に貢献したのでは?とインタビュー記事でおっしゃっていました
別の記事では売上2倍とありましたので、1.5倍が人材の成長、残りの0.5倍がデジタル化そのものの影響でしょうか。売上の成功要因の75%が人材という社長評価です
ここが成功ポイントに思いました
経営戦略に基づく人材戦略
スモールステップアプローチで意識改革
採用→配置→育成→評価→処遇 という人事プロセスを一貫性をもって対応
特に、スモールステップアプローチに注目しました。パソコンなど使ったことがないような職人さんが、どのようにデジタルへ慣れて、便利だなと思って、実際に使うようになるか。小さい歩みを1つずつ着実に行われているのが素敵です。
また、デジタルだけでなく、変革への壁を越えるために、就業時間やボールペンの変更まで行って、小さい変化と大きい変化を組み合わせたとのことです
システム面では勤怠システムから変えたとのこと。以前はマグネットで管理していたようですが、バーコードとタッチパネルのシステムを作成し、まずは使って、慣れて、便利さを実感できるところから始められました
成功体験って重要ですよね
やればできるという気持ちになって、次につながります
ピッとバーコードを読んで出退勤の管理とか、コーヒー代まで見えるとか、こういうわかりやすいことがあるから、人って変化を受け入れられるんだと思います
実際、何をしてどうなった?
多くのことを実施されましたが、一貫性をもって、すべて有機的につながっています
1. スキル面
スキルを持った人を外部から即戦力として採用し、内製でシステムをつくりました
そして、その方をテコに既存の社員に知識や技術を教えるだけではなく、マインドセットにもよい影響を与えておられます
2. 人事制度面
多能工育成のため、スキルマップを作成し、何を学び、身につけるかきちんと透明にして、育成プランを作成
そして、それをきちんと評価し、選出できる仕組みもつくりあげている
また、次世代リーダーの育成も注力され、後継者をリストアップし、次のリーダーに育てる活動もされています
2:6:2理論?でいう、2の次世代育成と、6で全体の底上げをどちらもやっておられて、素晴らしいと思いました
3. ソフト面
一部の人間ではなく、幅広い従業員の変化を促すため、いわゆる2:6:2の6の層にもきちんとアプローチをする
多くの会社は2の層へアプローチして、上から変えようとしますが、なかなか簡単に6の中間層を変えることはできません
記事では中小企業だからこそミドル層へのアプローチが必要だとおっしゃっていましたが、大企業でも全く同じと思います。大企業の方が人数が多い分、こういう地道な努力がないと、絵に描いた餅に終わるのではないでしょうか
経営企画部が描いたキレイな戦略だけでは現場には響かないと思います(だからこそトップや中間管理職の役割が大事なのです)
4. 順番が大事
ネットの記事では、どういう順番で改革を行われたのかまではわかりませんでしたが、私の想像と、私ならこうするかな?という点で、考察します
一番やっちゃいけないのが、ソフト面(意識改革)から対応すること
ガツンとトップダウンで危機意識を醸成するとか、やわらく職場での対話をやってみるとか(経営者は学級会をするなと嫌う傾向が強い)、そういうことから始めても、トップダウンではモチベーションを失ったり恐怖を感じたり、ふんわりアプローチだけでは、話しただけで終わってしまい、長続きしないでしょう
小さなことでもいいので、身の回りの仕事で変化を起こすこと
中小企業庁のサイトにIBUKI 挑戦の960日という資料にあるのですが、こういう、目に見える変化、わかりやすい変化を、積み重ねていくことが大事で、そこから始めるのがいいと思います
これは整頓の事例ですが、スキルも何か実践的なものを少しずつ身につけていって、自分の仕事が変わっていく、効率化していくことを感じることが大事ではないでしょうか
その次が、人事面です
会社は頑張った人をきちんと評価して、活躍できる場をつくらないと
単に使いようのない技術を習得させても意味がないので、どういう技術がなぜ必要か、それを必要とする仕事は何か、その技術をもつ人間は何人必要か、次に身につける技術は何か。
そういうのをスキルマップと呼んで、作っておられるのかなと思いました
この仕組みもシステム化され、社内の人材が、いまどういうスキルをもっていて、どういう仕事に配置させるか、見える化したのだと思います
ここは人事部が活躍し、きちんと制度でも人を支え、報いることが重要ですね
で、最後にソフト面
日々の仕事が変わり、会社が本気だと腹落ちすることで、自分もやる気になって、全社的な視野が広がってくるのだと思います
演繹的に、「こういうやり方でやるぞ!、おら〜いうこと聞け!」と上意下達だけでやるのではなくて、
現場で小さいことでも1つずつ、地道にやりとげて、その成果を実感して、意義も感じることを積み上げる。こういう、いわば帰納的なやり方をとられたのだとおもいます
これはトップの強いリーダーシップの否定ではないです。トップが強く意思を持っているのは、大前提です。IBUKI様でもトップは守護神として、改革のキーパーソンを守り、育てるという覚悟をもたれています
1(スキル)が終われば2(人事制度)をするというような意味での順番ではないですが、1や2がなく、3番(意識改革)だけいくらやろうとしても、現場は変わりません
人間って、多くのことを同時にできないので、つい ”改革をしよう” となると1つのことだけをやりがちで、いつもと違うソフトアプローチをしがちです
それが強くでれば気合いと根性の空回りになりストレスだけが増える、ゆるくなれば温泉のような心地よい話し合いだけに終わりコストを使っただけとなる
そして、現場はかわらず、業績もあがらない。時間をかけて、やるだけ無駄
これだけのことを1年ちょいで黒字化にもってこられたIBUKI様
資料からわかる範囲での推察もありますが、実際のお話をぜひお伺いしたいものです
非常に参考になる事例で、これをお手本にして、中小企業のみならず、大企業も参考になる事例ではないでしょうか。
参考資料
最後までお読みいただきありがとうございました。