「プロダクト思考だと向いている?」エルボーズ特有のPMについて現役PMが語り合う
「エルボーズのPMって、PjMとPdMのどっちなの?」
社内外からよく上がる、PMについての疑問。プロジェクトマネジメントをするPjM(プロジェクトマネージャー)と、プロダクトマネジメントをするPdM(プロダクトマネージャー)のちがいは、業界でもよく議論に上がります。
今回はそんな疑問にお答えするため、エルボーズ取締役兼『ATTEND biz』事業部長の安藤 晶さんと、合同会社PeerQuest CEOの浪川 舞さんが登場。
浪川さんは累計3,000名弱が参加するPM勉強会を主催するコミュニティを運営しています。
そんなPMの専門家の浪川さんを交えて、エルボーズのPMはどのような役割を担うのか、PjMやPdMとはどのように違うのか、たっぷりお話いただきました。
顧客企業と開発チームの「橋渡し」
――おふたりのこれまでのキャリアと、その中でのPjM・PdMの経験ついて教えてください。
安藤 晶(以下、安藤):
私は学生時代からグラフィックを専門に、フリーランスデザイナーとして活動していたんです。新卒で入社した印刷会社では主に、雑誌や広告といった紙媒体のデザインを担当していました。
ところが、出版不況の波が印刷会社にも押し寄せて――。社内にWeb部門が立ち上がると、Webデザインを任されるようになり、WebデザイナーからWebディレクターへとステップアップしていきましたね。その後転職した会社では、クリエイティブ系スタッフが私ひとり。企画からデザイン、コーディング、リリースまで、すべて自分で決めていました。
このようなキャリアパスなので、実はPjMやPdMといった役割をエルボーズの『ATTEND biz』以外で担ったことがないんです。
――そうなんですね!意外です!
安藤:
そうなんですよ。ATTEND bizを立ち上げたときは、CEOの小谷がセールス担当で、CTOの南が開発担当。私がPMとUIデザインも行い、顧客企業と開発チームの橋渡しのような役回りでしたね。
当時の私は、一般的に言われているPjMとPdMの区別はあまり意識していませんでした。
「フロントマンとして、こういう働きをしたほうが双方にとっていいだろう」と、自分で考え、自分で実行して「ATTEND bizのPM」を作ってきました。
ーー浪川さんは、どんなキャリアを?
浪川 舞(以下、浪川):
私は4年ほど、SIerのエンジニアとして働いていました。クライアントが開発しているシステムの一部を受注し、クライアント企業の常駐メンバーと一緒に開発していく働き方をしていました。
その案件に一緒に入っていたPjMの先輩が、どうしても別の案件に行かなければならなくなり、私がPjMを引き継ぐことに――。ありがちな話ですが、成り行きでPjMになってしまったのが最初の一歩です。
――成り行きPM。それでも現在はPM勉強会など、PMに注力していますよね。
その後2019年に合同会社PeerQuest(ピアクエスト)を設立して独立しました。実は独立当時はまだ、PdMという言葉を知らなかったんです。顧客企業とクリエイティブ職をつなぐ仕事をしていましたが「自分はプロジェクトを進める“PjM”である」と認識していましたね。
ただ、プロジェクトマネジメントだけでは顧客の課題解決につながらないことに、徐々に気付いて――。
「ユーザーのことを知らなければ、カスタマージャーニーマップを作らなければ、きちんと機能するプロダクトは作れない」といった課題について考えているうちに、プロダクトまで考えるPdMを知ったのです。
同時に「自分の活動内容は、PjMではなくPdMだ」と認識するようになって。PdMとしての知識は、後付けで身につけていきましたね。
エルボーズのPMは、PjMを包含したPdM?
――安藤さんみずからが考え実行しながら形作ってきたエルボーズのPM。現在はPjMとPdMのどちらに、より近いと考えていますか?
安藤:
エルボーズのPMは「PjMとPdMの両方を含んでいる」が答えになるかもしれません。ちなみに、浪川さんはどう思います?
浪川:
一般的にPjMの行うプロジェクトのマネジメントは、PdMの業務の一部だと捉えるのかなと。
PdMは「プロダクトが終了しないようにするためには、どうすればいいか」を考え、PjMは「プロダクトを作るために進めるべき一つひとつのプロジェクトをどのように終わらせていくか」を考える。
つまり、PdMは「What」と「Why」を決め、PjMは「When」と「How」を決める、とよく表現されます。
――終わらせないPdMと、終わらせるPjM。実際にはどんな業務のちがいがあるのですか?
PdMは企画段階から入り、ユーザーヒアリングや仮説検証、事業企画、要件定義などに関わります。
一方、PjMはその事業の中で発生する一つひとつのプロジェクトを終わらせていくためにスケジュールを組み立て、進行管理などをしていきます。
もちろん会社の規模などによって、それぞれの業務範囲は大きく異なりますし、兼務されている方も多いです。はっきりとすみ分けできるわけではありませんが……。
『ATTEND biz』のPMの成り立ちの話を聞くと、たしかにPjMとPdMの両方を含んでいるイメージかもしれませんね。
安藤:
一般的なすみ分けの話を聞いてみて、エルボーズのPMは「PjMを包含したPdM」と表現するのがより適切かもしれないと思いました。
エルボーズのお客さんは「こういったものをこういう仕様で、こういうふうに作ってください」と、開発会社や制作会社に分かる形で指示を出せるわけではありません。むしろ社内に開発人材を抱えることができず、開発側が理解できる形での指示を出せないような企業をサポートしています。
最初のご相談も「物件を探している人が、不動産屋さんとマッチングできるようなアプリを作りたいんだよね」といった粒度で。そんな企業さんがほとんどです。
そのため、最初のヒアリングや要件定義の段階で「なぜそれを作りたいのか」「どういうユーザーに届けたいのか」「ユーザーは本当にそういった課題感を持っているのか」といった、事業開発の根本的な部分から一緒に話を始めます。
最初の段階で、このようなPdM的な役割をしなければ、そもそも開発が始まらないのです。
そして要件が固まったら、今度はATTEND bizのエンジニアさんやデザイナーさんに「こういう課題があって、こういったものを作りたいから、いつまでにどのように進めたら叶えられるか考えましょう」と、PjMのような役回りもします。
浪川:
エルボーズのPMは「PjMを引き剥がさず持ったままのPdM」ですし、顧客側のPdMを代わりに担っているとも言えますね。
「ユーザーにはどんな課題があるんだろう」と自然に考えられるPjMがマッチしそう
――「PjMも包含したPdM」がエルボーズのPMということですが、どういった方がエルボーズのPMに向いていると思いますか?
安藤:
これまで、私が動きながらPMを作ってきた中で感じるのは「この課題は、ユーザーも本当に抱いているのか?」「ユーザーに選んで使い続けてもらうにはどうしたらいいかを考えたほうがいいのでは?」といったことに自然と意識が向く方は、エルボーズのPMに向いているということ。
PjMのスキルセットをしっかり持っていて、その上でユーザーのことを自然と考えられる方ですね。
浪川:
わかります!PjMの中にも、プロダクト思考が強い方とプロジェクト思考が強い方がいますよね。
プロダクト思考が強い方は、ユーザーがどのような行動をするかなど、プロダクトを開発した先にも興味を持つ傾向にあると思います。そういった方は、ユーザーヒアリングなどにも興味を持てるはず。
これまでPjMとして受託開発に携わってきた中で「なぜユーザーに聞かないのか?」「その機能って、本当に必要なの?」といった疑問を感じてきた方は、一定数いると思います。そのような疑問を抱いてきた方は、エルボーズのPMに向いているのではないでしょうか。
安藤:
先ほどお話した通り、ただ依頼があった通りに開発するわけではないですからね。
ヒアリング段階でもう一度、顧客企業の思いや考えを掘り起こし、企画開発から一緒に進んでいくので、やりがいを感じながら取り組みやすい環境だと思います。
――エルボーズのPMならではのおもしろさを教えてください。
安藤:
顧客企業が決定権を持っているのですが、顧客企業が絶対ではありません。エルボーズでは、顧客企業からリリースされたプロダクトによって、ユーザーの課題が解決され、使い続けてもらうこと、そこにコミットしようとしています。
ですから、顧客企業と同じ目線で開発に取り組みます。顧客企業とはワンチームなのです。顧客企業が根底に抱えている課題感やその先にある社会課題などにも触れられますし、その解決のために一緒に協力していける。この点がおもしろさだと感じています。
また「提示していただいたプロダクト・アイディアよりも、このようなプロダクトのほうが課題解決できるのではないですか?」と提案することもあります。
「こんなに一緒に考えてくれるところは他にない」と言われることも多く、パートナーのように頼ってもらえる存在になれるのです。
お互いに信頼し合い、密なコミュニケーションを取りながら開発できる点にも、おもしろさがありますよね。
浪川:
現在の一般的な受託開発はどうしても、発注する側の立場が上で受注する側が下、という関係性になりがちです。ですがエルボーズは、顧客企業と対等に話せる関係性を構築していけます。
これまで受託開発してきた中で疑問を感じてきた方にとっては、楽しく開発に取り組める環境なのではないかと思います。エルボーズは受託開発会社という形態ですが、もはや一般的な受託開発会社とは違った新たな形態と言えますよね。
副業PMも大歓迎!
――現在、エルボーズではPMの採用を強化しています。一緒に働きたい方や「こんな方はエルボーズで楽しめる!」といったことがあれば、ぜひ教えてください!
安藤:
PdMはどうしても、案件規模が大きいとフルコミットしなければいけないことが多いです。すると、フルコミットでの活動が難しい方は、おのずと応募できない状況が生み出されてしまいます。
ですがエルボーズでは、小谷のインタビューでも触れられていたように、エンジニアやデザイナーの働き方の柔軟性も追求していて、副業PMとして活動できる土壌づくりにかなり力を入れています。
休日のみ、夜のみしか活動できない方や、さまざまなプロジェクトに並行して関わっていきたい方、これからクリエイティブとして活動の幅を広げるために、まずは副業から始めようと思っている方なども参加がしやすい形にしていこうとしています。このような働き方に少しでも興味があれば、ぜひご参加ください!
PMの立ち位置やあり方はもちろんのこと、話を聞けば聞くほどエルボーズは「ただの受託開発会社ではない」と感じました。
おふたりも、この新たな形態を何と言い表したらいいのか、まだ答えが出ていないそうですが、確実に一般的な受託開発会社とは一線を画する。
だからこそ、今の開発環境に疑問や葛藤を感じている方にとっては、やりがいをもてる場所なのかもしれない、と思いました。
(文・北森 悦)
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