秋の乗り放題パスの旅① 名古屋・琵琶湖編
「秋の乗り放題パス」で一人旅に行ってきたのでその旅行記を書いていく。
乗り放題パスを買ったはいいものの、どこに行くかも、何をするかも、どこに泊まるかも決めていなかった。今回はそんな旅の一日目だ。
「秋の乗り放題パス」とは、青春18きっぷの秋版のようなもので、全国のJRの普通列車が三日間、乗り放題になる切符のことである。
青春18きっぷと違い「秋の乗り放題パス」は
・三日間連続でしか使えない
・自動改札を通れる
などの特徴がある
大雨の東京
朝6時。外は薄暗く、雨が降っていて肌寒かった。薄めのアウターのジップを一番上まで上げ、傘を差しながら駅まで向かう
今から電車に乗るというのに、どこに行くのか決めていなかった。とりあえず東京が寒いので、暖かさを求めて関西方面を目指すことに。
【渋谷→熱海】
大雨のスクランブル交差点を横目に満員電車に乗り込む。会社員の革靴が、雨に濡れた床でキュキュッと音を立てる。朝なのに外は暗く、車内は蛍光灯でまぶしい。夜だと言われたら信じてしまう。
外の景色は雨と霧でぼやけている。灰色の景色の中に建物の暗いシルエットだけが浮かびあがっている。
横浜駅を過ぎて、やっと座ることができた。とにかく眠い。小田原駅を抜けると、学生も会社員もいなくなった。社会の日常から抜け出したようだ。
【熱海→浜松】
静岡の移動がとにかく長いのは普通列車の旅の名物ともいえる。曇り空の景色が2時間半も続いた。窓の水滴が斜めに落ちていくのを眺め、小説を読み、音楽を聴いてゆったり過ごす。クロスシートに伝わってくる一定の振動が眠気を誘う。気づいたら寝ていた。
【浜松→豊橋→名古屋】
長かった静岡県を抜け、愛知県へ突入。お腹がすいたので名古屋駅で降りることに。
名古屋駅到着
名古屋はとても晴れていた。天気がいいとテンションも上がる。
名古屋駅のホームには有名なきしめん屋がある。
出汁のいい香りが漂ってくる。
もちもちつるつるの平麺とたっぷりのネギと鰹節
海老の天ぷらも、揚げも入っている
とにかく出汁がうますぎる
これで500円は安い。旅の始まりに最高の飯だ。
はじめての名古屋散歩
降りたついでに名古屋の街を歩いてみよう。
ここで一つ気になったことがある。
「左の建物、東京の丸の内の建物に似てない??」
低層の建物の上にビルが乗っかっているような特徴的な見た目。これには「百尺規制」が関係している。
その昔、建築法の規制により建物の高さは百尺(31m)までと決められていた。これを「百尺規制」と呼ぶ。
その後、百尺規制が撤廃され、百尺の高さの建物の上にビルを増設した結果、この特徴的な見た目の建物が完成した。
調べてみると、やはり名古屋にも百尺規制があったそうだ。大阪の御堂筋にもあるらしい。このような知識があると、街歩きはさらに楽しくなる。
俺の地元札幌には大通公園がある。どうやら名古屋にも久屋大通という似た場所があるらしい。天気もいいし歩いて行ってみよう。
しかし、思っていたよりも遠い。思っていた三倍は歩いている。調べてみると名古屋駅から久屋大通まで2.4キロもあった。札幌駅から大通公園までは1キロ。札幌の頃の体感で歩いてしまっていたようだ。
名古屋の街と札幌の街は似ている
久屋大通にやっと着いた。広くてのどかな雰囲気は、札幌の大通公園そっくり。公園のベンチに座って一休み、家で握ってきた塩むすびを食べる。リュックの中で形が崩れていたが、食べてしまえば関係ない。
ここまで歩いてきて気になったことがある。
それは、街並みが札幌にとても似ていることだ。名古屋の人が札幌にきても、同じ感想を抱くと思う。幅広い車道、地下街、デパートが集まる通り、大通公園、テレビ塔などの風景は札幌の街を思い出させる。同じ人がつくったんじゃないかと思うくらい似ている。名古屋に少し親近感を覚えた。
名古屋城へ
地下鉄で栄駅から名古屋城まで移動する。
名古屋城は、関ケ原の戦いに勝利した徳川家康が豊臣方への備えとして作った城で、その後は、徳川御三家の尾張徳川家の居城として栄えたという
徳川家の権力を表すシャチホコ
名古屋城のシンボルともいえる金のシャチホコは約2.5mもあり、天守閣のてっぺんで向かい合って光り輝いていた。
金のシャチホコや古墳、ピラミッドのような、支配者の強大な権力を象徴する建造物にはロマンを感じる。すべてが規格外で、我々の想像を超えてくるからだろうか。自己顕示もここまで振り切るとかっこよく思えてくる。
天守閣の再建問題
名古屋城は、1945年の空襲で本丸のほとんどが焼け、再建された現在は鉄骨鉄筋コンクリート造になっている
ここで天守閣の再建問題がでてくる。
個人的に、再建となるとどうしてもハリボテ感があり、感動が薄れてしまう。歴史があるから価値があるのに、中身が現代式の建物にすり替わっているとニセモノのように思ってしまう。大阪城に行ったとき、中にエレベーターがあるのを見て冷めた経験がある
歴史的建造物には、あまり手を加えず状態保存だけしていてほしい
空襲による焼失も含めて、その城や土地の歴史だと思っている。
それでも当時の光景を再現してくれるのは嬉しいし、ビル群とお城の対比は歴史の変化を感じられる。実際、名古屋城の天守閣にも圧倒された。
数百年前の建物がそのまま残っていることが一番だが、空襲で焼けた場合、再建するべきか否か。
天守閣があれば、街のシンボルとしても見栄えがいいし、観光地にもなる。しかし、再建された建物に違和感を覚える人もいると思う。
みなさんはどっち派だろうか。
耐震性の問題で天守閣には入れなかった。
現在、天守閣の木造復元を進めているそうだ
名古屋城のベンチで休むついでに今日の宿を探す
安いカプセルホテルを見つけた。今日は滋賀に泊まろう
【名古屋→大垣(岐阜)→米原(滋賀)】
夕暮れの岐阜を過ぎていく。田園風景がきれいだった。滋賀県に入った頃には外は真っ暗。長かった東海道本線を乗り換え、JR琵琶湖線で大津に向かう。
【米原→大津】
大津駅に到着。コンパクトな駅だが、セブンもホテルも飲食店も入っている。駅前のベンチにはサラリーマンや若者が集まり、夜遅くまで楽しそうに話していた。
夜の琵琶湖
ホテルにチェックインしたあと、夜の大津を散歩してみる。どうせなら琵琶湖まで歩いてみよう
暗く静かな町を10分ほど歩くと琵琶湖に着いた。とにかく暗くて静かだった。琵琶湖には、釣りや散歩、ランニングをしている人がいた。滋賀県民の憩いの場になっているのだろう。ゆったりとした時間が流れている
少しすると金管楽器の音色がぼんやりと聞こえてきた。電灯の下で男性が曲を演奏している
・プリンセスプリンセス「M」
・松山千春の「大空と大地の中で」
この二曲だった。選曲がよすぎる。
低音の響きが深い闇に染み渡り、鈴虫の鳴き声と調和していく。そよ風に当たりながら、俺は暗闇に浮かぶ水平線をしばらく眺めていた。
駅前に戻り、スーパー「フレンドマート」で水を買った後、近江ちゃんぽんを食べた。出汁の効いたあっさりスープがおいしかった。店員もいい人だった。
ホテルに戻って日記を書いた。
明日はどこに行こう。無計画の電車旅は続く