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映画の話 我が家の「リベリオン」遠回り記

 私はガンカタを見たかった。各所でネタになっており、そのカッコよさを熱弁する動画を見て興味が湧いたからだ。
 だから「リベリオン」を見たかった。TSUTAYAでしょっちゅう映画を借りてくる家族に
「『リベリオン』借りてきて」
と頼んだら、
「は? オリオン?」
と怪訝そうな顔をされた。しかも近所のTSUTAYAに無かったと言われた。取り寄せるほどの熱意はなかったため、「いつかは見たいものリスト」に刻んでおいた。

 家族は「フォードVSフェラーリ」を買ってきた。父が車好きなのと、マット・デイモン主演だったからだ。しかし、車にほとんど興味のない私どころか買ってきた家族すら内容に期待していなかった。何故なら家族は目ぼしい映画を借り尽くしてしまい、仕方なくB級な映画を借りてきては「面白くない」と文句を言っていたからだ。有名な俳優が出ているからといって油断はできないと思い知っていた家族は、「どうせ外れだろうけどとりあえず」と言った。
 そして見た。私も見た。ラストには全員で「ケンちゃぁぁぁん」と感動の嵐。手の平返しの早いこと早いこと。しかも「ケンちゃん」ってなんだ馴れ馴れしい。しかし最早家族の間では「ケンちゃん」で定着してしまった。マット・デイモン演じるキャロルとケンちゃんの友情、企業の汚い面とロマン。見始めたときはケンちゃんを「なんか小汚ないおっさん」呼ばわりした母もすっかりケンちゃんに魅了され、いそいそとパッケージで俳優を確認していた。そして言った。
「クリスチャン・ベール……え。『バッドマン』の?!」
 正確には「ダークナイト」の、だろうか。私は「バッドマン」に興味が無いのでそう言われても全くピンと来なかった。ただ、確かにダークヒーローとケンちゃんは同一人物に見えないだろうなと思った。

 しばらくして。家族がTSUTAYAで「リベリオン」を借りてきた。
「無いって言ったよね。『リベリオン』! ガンカタ!! 借りたいって前に言ったよね」
と詰め寄る私に、母はポカンとして
「そうだっけ?」
と返した。借りてきた理由は「ケンちゃんが出演してるから」……最早我が家ではクリスチャン・ベール本人をケンちゃんと呼んでいた。そして私はガンカタで華麗に銃を振り回していたのがクリスチャン・ベールだとそのとき初めて知った。

 ガンカタ見たさで「リベリオン」を借りたかったのが、「フォードVSフェラーリ」と「ダークナイト」経由のクリスチャン・ベール繋がりで手元に……なんて遠回りだったのだろう。しかし、この遠回りでなければ我が家に「リベリオン」はやってこなかった気がする。

 見た感想は、やはり「デタラメかよでもそこがイイ!!」だった。ガンカタに関しては。ケンちゃんに関しては「奥さんはいいのかよ……」であった。いや、当時のケンちゃんと作中現在のケンちゃんの違いはわかっている。わかっているけれど、もうちょっと奥さんへのあれこれはあってもよいと思うのだけどなあ、と思わずにはいられなかった。私はラブストーリーへの理解や共感が薄いので、どうしても「解せぬ」と半目になってしまう。
 袖口から飛び出し装填といえば私は「トリニティ・ブラッド」のトレス君なので、懐かしいやら元ネタを見つけたような喜びやら(吉田直先生が『リベリオン』を元ネタにしたかは不勉強により知らない)。ガンカタで盛り上がる私はもちろん、ケンちゃん大活躍アクション盛り盛りな内容に家族も満足していた。我が家は「『マトリックス』はアクションとCGすごいけどストーリーよくわからん」系なので、「リベリオン」のわかりやすさが嬉しかった。

 そんなこんなで、私の望みは叶った。家族は相変わらずB級を借りたり新作を借りたりしているが、滅多に当たりは無いようだ。次の「いつかは見たいものリスト」作品は、できればもっと近道で見られることを願う。

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