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映画「殺人鬼から逃げる夜」を見て

 フィジカルお化けかつサイコパスな殺人鬼。怖い。

 目を見開いた笑顔で刃物を持つ男性。全力で夜道を駆ける女性。印象的だった映像に惹かれ、借りてしまった「殺人鬼から逃げる夜」。
 笑顔の素敵な殺人鬼と、耳の聞こえない女性が強制鬼ごっこをする話である。

 耳の聞こえない女性が殺人鬼の「お楽しみ」現場に遭遇してしまう。殺人鬼は「お楽しみ」を邪魔した女性を襲うが逃げられてしまい、執拗に彼女をつけ狙う。
 たった一晩の出来事であり、コンパクトにまとめられていると思う。短編小説を読んでいるようで、このまとまり方が私には心地良かった。

 機転が利き、演技力が高く、執念深くてフィジカルお化け。邪魔をされることが嫌いな神経質さと、邪魔者を「獲物」と見なした途端それを追うことを心から楽しめる切り替えの早さ。ついでに顔が良いのでサイコパス感マシマシ。
 そんな殺人鬼に狙われる、絶望的な状況に陥ってしまう主人公。だが、彼女は決して嘆きのヒロインではない。私がこの映画を見ようと思った何よりのきっかけは、彼女が殺人鬼から逃走する姿が力強かったからである。耳が聞こえないため危機察知能力にハンデのある彼女が如何にして、そしてどこまで逃げおおせるのか。それを見たかったのだ。

 そしてこの映画は、家族愛がテーマでもあると思う。二組の家族が殺人鬼に翻弄され、必死に家族を守ろうと奔走する。この絆があったからこそ、映画のストーリーが成り立ったと思う。
 
 単純な内容と感じる人もいるだろうが、私はこの明快さがとても良かった。人知を越えた力は一切関わらない、直球の人怖ホラー。
 策略や陰謀渦巻く長編には無い良さがある。複雑なストーリーに疲れた人におすすめしたい。
 

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