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時間を見つける思考 〜音楽〜
映画のストーリーを例にとって【美学】を哲学的に説明してくれた第一部。
『芸術学の基礎』(副島善通先生)の第二部は【芸術学】です。
ここでは、時間と空間の概念を芸術作品から明らかにすることを目的とし、
第9章 … 時間の誕生 として[音楽]を、
第10章 … 空間の生成 として[絵画]を取り扱っています。
いやぁ〜、とても面白かったです。
この本について誰かに説明せよ!と言われても何もお話しできませんが、自分なりに大いに納得したフレーズがたくさんあったので投稿します。
以下、私が気になったポイントだけを取り上げて勝手な解釈を加えているため、本書の正しい要約ではないことをお許しください。
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第9章は、[音楽]から時間の概念を明らかにしてくれます。
音楽に時間が誕生し、音楽の発展に伴って時間は成長した。さらに季節における農耕の開始を規則的にするために暦が作成されていたし、宗教的な祈祷の開始を一定にするために定時法が制定され、為政者の正当性を時間的流れの中で裏づける目的で歴代記が編纂されていた。(中略)このように時間の単位はそれを利用する必要から生み出されてきた。
「音楽に時間が誕生し」たとはどういう意味でしょうか。
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時間は目に見えないけれど、太陽の位置の変化やアナログ時計の針の位置が動いたことで時間の経過を認識できます。
このように時間体験は運動現象を見ることで得られることから、アリストテレスは時間を「より先とより後の区別に基づく運動の数」と定義したそうです。
言葉は難しいけど、納得です。
ということは、[音楽]も時間の中に存在し続けるためには、目に見える運動の形を取らなければなリません。確かに聴覚だけに働きかけるメロディやリズムの記憶を他人に伝えるのは至難の技ですね。
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そこで、各音の固有の高さと 相互の長さや強弱などの運動が目に見えるように記入した「楽譜」が誕生します。「楽譜」は、その場で消え去ってしまう音を記録し、再現を前提として他人に伝達する発明品なのです。
[音楽]が関わる時間は、楽譜を通して目に見えるようになったのです。
うわ〜っ、哲学的そして芸術的✨。
音の連続 ←1小節 ←1つの音符…と時間が単位で等分されて、その単位が複数の人間に共有されることで 音楽に流れる共通の時間 ができました。
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そして[音楽]を再現(演奏)する=時間を共有するために、時間は均等でなくてはなリません。あなたの1時間とわたしの1時間は同じ長さであり、その1時間は3600秒に等分される。そう、誰にでも共通した同じ質の「時間」を音楽は必要とするのです。
ベートーヴェン『弦楽四重奏曲第9番』という音楽を作り上げるためには、4人で同じ質の「時間」を共有する必要がある…。私はいつの間にか指揮棒を持って三拍子を刻んでいました(笑)。
周囲とは独立して流れ続ける時間が[音楽]の中で誕生したのである。
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第9章を読み終えて、何だか壮大な宇宙旅行🌏をした気分になりました。
副島先生の言うとおり「時間の単位がそれを利用する必要から生み出されてきた」のだとしたら、それを必要とする人だけに時間は流れるのでしょう。
そして形式的には同じ一年、同じ一日、そして同じ1時間だとしても、[音楽]に流れる時間は特別です。農耕の開始を告げる季節や祈祷の開始を知らせる定時、そしてもちろん為政者の歴代記の年代とも全く違うはず。
「音楽に時間が誕生し、音楽の発展に伴って時間は成長した」というフレーズがグッと胸に刻まれました。
本書に引用されている「楽譜」を眺めていると、メトロノームが時を刻む音が聞こえてきました。そして今まで無機質に感じていたメトロノームの動きが目に浮かび、そのメトロノームからメロディが聞こえてくるようです。
そして。
これを投稿しながら聴いているベートーヴェン『弦楽四重奏曲第9番 ハ長調』に耳を傾けて目を閉じると、部屋に広がる空気が動いているのを感じました!
副島先生、わたしも時間を見つけましたよ。
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いよいよ本丸の 第10章 空間と[絵画]。
ですが、少し長くなったので次回の投稿にさせていただきます。
<終わり>