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真珠のようなひとに憧れる

“憧れる” とは、
理想とする[物事]や[人物]に強く心が引かれること。思い焦がれること

「すごい!」「素敵!」
すぐに感激して興奮する、という少々情緒不安定気味の私は、何か(=[物事])に心惹かれることはしょっ中あるわけで、ほぼ毎日 心の中で感動の雄叫びをあげているのです。
もし今日、どこかの美術館に行く予定があるならば、
「今日だけは憧れるのをやめましょう!」と大谷翔平選手に言われても
「それはちょっと無理です」とお答えするのであります。

ただ、こと[人物]に関して言えば、相手も人間である以上、良い点もあれば欠点があるのは当然のこと。他人の欠点は受け入れ難い… という厄介な性分の持ち主の私は、誰か(=[人物])のすべてに憧れる!というケースは稀です。
では、欠点が全く見当たらないスーパースター = 何かに秀でていて かつ人間的にも非の打ち所がない[人物]が “憧れ” の対象となるか、というと、そういうわけでもないのです。[人物]大谷翔平さんや藤井聡太さんのことは「すごい!」と尊敬するものの、そのキラキラ✨した真っ直ぐな瞳や言葉が眩しすぎて、歪んだ心を持つ私の[理想]となるには存在が遠すぎるのです。

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さて、4月下旬に訪れた銀座・ミキモト本店のフォトギャラリー。

ミキモト本店のホームページより

そこに展示されていたのは、女優・エッセイストであった高峰秀子さんの写真、彼女が残した言葉、そして彼女が愛用した品々でした。

私と高峰秀子さんとの出会は、1951年の雑誌『国際文化画報』。その表紙を飾っていた彼女にについて投稿したことがきっかけでした。
もっと彼女のことが知りたい!、と古本屋さんで購入した2011年12月の芸術新潮。没後一周年特集『高峰秀子の旅と本棚』を読んでから、彼女に対して “憧れ” の気持ちを持っています。

5歳で天才子役としてデビュー、その後は女優としてスター街道をまっしぐら。しかし27歳(1951-1952年)のパリ滞在をきっかけに、与えられた役柄ではなく自分の人生を歩み始めた彼女は・・・。
旅行は海外だけで年に数回、暇さえあれば本を読み、画集を眺め、夕方からは台所仕事にいそしみ、夜はお気に入りのグラスでウィスキーをちびり、ちびり。
なんとも羨ましい日々!

① 旅:行きたいところに行く
② 本:読書家。随筆家としても大活躍
③ 暮らし:好きなモノ、気に入ったモノだけに囲まれて暮らす
④ 人:やりたいことだけをやる 思い切りの良さ、行動力、そして引き際

カッコいい!

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① 旅:行きたいところに行く

まだまだ一般人にはハードルが高かった海外旅行。パリ、ローマ、ニューヨーク、サンフランシスコ、モントリオール、上海、台北、シンガポール、アフガニスタン、エジプト…。日本国内では どこに行ってもファンやマスコミに囲まれる彼女は、旦那さまと一年に何度も海外に旅行していました。
何時に起床、どこへ行って何を食べた、バスに乗り夕食を作った・・・という他愛もない旅の日々を綴った彼女の「旅日記」は60冊にものぼるそうです。

芸術新潮2011年12月号より

一方のわたし。
2019年秋に訪れた初めてのパリに大きな衝撃を受け、また必ずこの地を踏むぞ!と意気込んでいたものの、その後の世界の変化におののき、どんどんフットワークが重くなってきました。最近では「もう二度とパリの地を踏むことはできないかも…」などと弱気ぶし
いかんいかん。まだまだ行きたいところに行くぞ!と誓うのであります。

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② 本:読書家。随筆家としても大活躍

5歳の時に松竹蒲田撮影所に入社、子役・娘役で活躍していた彼女は、大勢の親族の生活を支えていたそうです。多忙のため通算で小学校に2ヶ月、中学校に1ヶ月しか通えず、助監督が読み聞かせる台本を耳で覚えていたとか。
読めない漢字が出てくると文章の前後関係からどう読むのか類推していた彼女が、辞書の引き方を教わったのは結婚してからだそうです。
脚本家で映画監督でもあった夫の松山善三氏のそばで熱心に辞書を読むこの写真、好きです。

芸術新潮2011年12月号より

一方のわたし。
そういえば最近辞書を引いていません。
スマートフォンを開けば何でも簡単に調べることができる時代。簡単過ぎるがゆえに、“わかった気” になるだけですぐに忘れてしまいます。
引越しの時に手放すかどうか悩んだのですが、国語辞典と英和辞典は新居に持ってきたはず。
・本棚から辞書を取り出す、
・ずっしりした重みを手に感じながら、繊細なページをめくる、
・「あいうえお」順に並んだ見出し語から “目的の言葉” を探し出すために何度も “目的の言葉” を頭の中で復唱する、
・「あったあった!」「へぇ〜、こんな意味なんだ、こんな使い方もあるんだ」、
・新しい世界が拓けたような得意げな気持ちになる。
この手間とそれに要する時間が愛おしい。。。やはり辞書は手放せません。

それから高峰秀子さんは暇があれば読書に勤しみ、旦那さんの仕事の手伝いをするようになり・・・そして多くの随筆を残したのですね。

芸術新潮2011年12月号より

親交のあった安野光雄氏による装画、挿絵がまた素敵です。
近いうちに一冊読んでみることにしましょう。

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③ 暮らし:好きなモノ、気に入ったモノだけに囲まれて暮らす

彼女の暮らしを取り巻くのは、彼女が気に入ったモノだけ。
「新しいキラキラしたものよりは、さんざ人の手を経て、こなれた味わいのある古いものばかりに、なぜか心をひかれた」という彼女は、海外の蚤の市、日本の骨董品屋で掘り出し物を購入していきます。

気に入ったモノだけに囲まれて暮らす…。シンプルなようで難しく、何より先立つものが必要です。
「とりあえず」…と 間に合わせの品々ですでに身の回りを埋め尽くしている私などは、総入れ替えが必要。宝くじでも当たらない限り実現できそうにありません。ただ「とりあえず」精神は改めることにしましょう。

高峰秀子さんが最も愛したアクセサリーが真珠であったことから、<真珠のようなひと>とタイトルをつけて展示していた真珠の養殖・ジュエリーを扱うミキモトさん、さすがです。
もし「◯◯のような人」と呼ばれるなら、何がいいかなぁ。。。と考えてみたのですが、そもそも宝石の種類・名前をよく知らないのですぐには思い浮かびませんでした。「いぶし銀」と呼ばれるのは いいかも知れません(^^)。

そして彼女の生活を取り巻く品々の中に、梅原隆三郎氏や藤田嗣治氏の描いた彼女の肖像画がありました。やはり肖像画って素敵ですね。

芸術新潮2011年12月号より

写真はその人の容姿を正確に写し取ることができるのだとしても、モデルの人柄・想い、人生のあれこれ、描いている人との関係を知るという点では、やはり肖像画に軍配があがります。

ご自身も絵がお上手だった彼女。

芸術新潮2011年12月号より

ササッとイラストが描ける人、これ、大きな憧れポイントです。

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④ 人:やりたいことだけをやる 思い切りの良さ、行動力、そして引き際

55歳でキッパリ女優業を辞めて自分の歩む道を自分で切り開いた86年間の人生。
“潔く” 生きる!ことを目標にしている私が、彼女に強く惹かれ、憧れるのは当然のことかも知れません。
もちろん、彼女と同じように生きることは不可能なわけで、せめて彼女を見習って生きていこう、と思うのであります。

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iPadに向かっていた私が唐突に「よしっ。イタリア美術館めぐりの旅行を目標にして 頑張るぞ!」と雄叫びをあげたら、テレビを見ながら軽い感じで「頑張れ〜っ」と旦那さん。

私のこの目標、どう思いますか 高峰秀子先生。
「お好きにしたらいいわよ」とお答えが返ってきそうです。

<終わり>

高峰秀子さんの表紙写真はこちらでご紹介しています。


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