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渾身の『草上の昼食』 × 2

≪ パリ滞在記・その32 ≫
 〜Musée d’Orsay オルセー美術館・③ 〜

オルセー美術館の5階「印象派ギャラリー」は、少しずつ区切られた四角い展示室が並んでいます。展示室のひとつ、その中央に立ちました。
目の前の壁にはマネ『草上の昼食』、後ろの壁にモネ『草上の昼食』が展示されています!
二つの作品が顔を見合わせる、誰もいない時間帯の展示室を想像してみました。
なんと贅沢な❗️
そのとき流れる空気を全身で感じてみたいものです☺️

同じ題名を持つ二つの『草上の昼食』。

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【マネの場合】
1863年にサロンに落選し、<落選者のためのサロン>で公開されたこの作品は、神話を現実の世界に置き換えるという斬新な題材でした。当初の題名は『水浴』。

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↑ ライモンディ『パリスの審判』(ラファエロを基にした銅版画)1515年頃。
マネはこの作品中の右手前の3人の人物の配置を倣ったらしいのですが、本当ですね。そのポーズも同じです。
しかし設定を現実の世界に置き換え、女性だけを裸のままにするというマネの斬新な作品は、スキャンダラスであり 伝統的な整った美しさを求めるサロンから批判を浴びました。

ふむふむ🤔
美術にあまり興味がなく、印象派をはじめとする近代以降の絵画の良さが全くわからなかった頃の私の感想です。 ↓↓↓
___マネ『草上の昼食』は、それまで無かった題材や手法で注目を浴びようとする作家の挑戦であり、時代の変化が求めたタイムリーな作品だった。古典芸術のような普遍的な評価とは意を異にするのだろう。
大自然の光の下 女性だけが全裸で鑑賞者をも誘うような目をしている。何だか品格には欠けるなぁと____。

しかし実際の作品は、全く違いました!一瞬で引き込まれて立ちすくみました。何でしょう、このドキドキは。一糸纏わぬ女性にジッと見つめられて、目を逸らすことすらできませんでした。女性のヌード絵画など見慣れているはずの現代においても、その衝撃たるや…!

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大まかな筆触とひときわ輝く明るい色調の女性の肌。マネの革新的な手法が絵に力を与えているのでしょう。普遍的な評価ができないとか、品格に欠けるとか…写真だけを見て軽々しく感想を述べた自分が本当に恥ずかしい💦です。

多くの画家がこの作品に影響を受けました。
マネの本作『水浴』にインスピレーションを受けて1866年モネが『草上の昼食』を描きました(←これを受けて1867年、マネは本作を『草上の昼食』に改題しました!お互いに影響を与え合ったのですね)。
1870年セザンヌが対抗心から、そして1960年頃にはピカソが自身の解釈を込めた『草上の昼食』を描いたそうです。他にも多くの画家が影響を受けたはずです。

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さて、昨年の11月 東京都美術館<コートールド展>でマネ『草上の昼食』の習作をみました ↓↓↓(コチラ)。

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展示会場に見にきていた隣の人が「これ、有名なヤツだよ!知ってる知ってる!コートールド氏が持ってたんだぁ。見られて良かったね」と話していました。
違いますよー❗️習作も良いのですが、本物の絵が持つパワーは物凄いのです。
実際に見ないと良さがわからない作品のひとつ。是非多くの人に見てほしい!と心底願いつつ、黙って会場をあとにしました。

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【モネの場合】
モネはマネが描いた『水浴』(←後の『草上の昼食』)にインスピレーションを受けて、1866年のサロンに出展するため 縦4メートル横6メートルを超える巨大な作品の制作を始めます。クールベやバジールをモデルに描いた作品は、モネが20歳を超えて取り組んだ大作です。
しかし制作過程で損傷をきたし、モネ本人の手によって切断・分割されました。
オルセー美術館にある作品は、残っている左断片と中央断片のみを展示しているそうです ↓↓↓(切断された部分を斜線でプラスしてみました)。

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2018年5月<プーシキン美術館展>で最終下絵?と思われるバージョンを観ました ↓↓↓(コチラ)。

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東京都美術館の会場では、モネが描いた習作 ↑↑↑ (コチラ)のパネルが壁一面に貼られており、プロジェクションマッピングでしょうか、木漏れ日がキラキラ✨揺らめいているスペースがありました。私たちはフォンテーヌブローの森でピクニックを楽しむ若者の仲間。とても素敵な演出で、いつまでもこの空間にいたい!と思ったのを覚えています。

しかし、オルセー美術館にある『草上の昼食』には やはり習作や下絵にはないパワーがありました。全体像ではなく断片ではありますが、それでもやはり私たちを魅了してやまないのです。

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不可能であることを承知で宣言します。
“作家 渾身の作品は、実物を見るべし!”

・       <その32>終わり

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