松方コレクションの一時保管場所
≪ パリ滞在記・その3−2 ≫
〜Musée Rodin Paris ロダン美術館・後半〜
<前半からの続きです>
私にとってロダンといえば 国立西洋美術館、そして松方幸次郎氏なのであります。
私は絵を描くことが苦手で、美術関係の事柄から距離を置いてきた人生を送ってきました。
2年半前突如、西洋絵画に興味を持ちはじめたのですが、彫刻作品に関しては今ひとつ良さがわからない…。「すごい!」とは思うのですが、「これが好き!」という感情がなかなか湧いてこないのです。
しかし、東京上野・国立西洋美術館によく足を運ぶようになってから、ロダンには少しだけ、ほんの少しだけ興味を持つようになりました。
現在、国立西洋美術館が所蔵する59点のロダン彫刻のうち、《地獄の門》を含む、53点が松方幸次郎氏の収集による「松方コレクショ ン」に由来しているそうです。
ロダンの死後、ロダン美術館の設立に尽力し ロダンの遺言執行人の一人でもあった、ベネディッド氏と松方幸次郎氏は信頼関係を結びます。
松方氏がパリで美術品を蒐集する際のアドバイザーになったベネディッド氏は、ロダンの彫刻をまとめて購入する費用、またロダン美術館のための「地獄の門」の鋳造費用も松方氏に出してもらいます。
そんな関係もあり、松方氏が自らのコレクションをパリに留め置かなくてはならなくなった時には、ロダン美術館の一角に保管させてもらうことができたのです。
↑これ、先月まで開催されていた「松方コレクション展」で学習した情報です💦
国立西洋美術館に足げく通い、西洋絵画鑑賞が好きな日本人の私に取って、ロダン美術館は一度訪れてみたかった場所。この場所に立っている喜びから、大きく深呼吸。すると、日本美術の発展に大きく貢献した松方氏の精神にあやかれたような気持ちになるのでした(笑)
さて、「地獄の門」。
ロダン作品の中で最大のものであり、ダンテの「神曲・地獄篇」を典拠に全部で200近くの人物像を内包している、というのはご存知の方もいるでしょう。
これだけ大きな作品の鋳造には大変なお金が必要!ということもあり、ロダンの生前には鋳造できず、松方氏が発注を出したことで初めて鋳造が実現したとか…。
世界に8体しかないそうです。2体目が見られました ✌︎
彫刻作品について無知な私は、日本にある ‘ ロダンのブロンズ像 ’ は、レプリカだと思っていました。本物はどこにあるのかなぁ?とか。
しかし、ロダンが制作した石膏原形等から鋳造されたブロンズ作品は、すべて “本物” なのだそうです。ロダン美術館にある「地獄の門」も、国立西洋美術館、静岡県立美術館にある作品も “本物”です。
ただし、ロダンの死後は12体までしか鋳造できない!という法律がフランスにあるため、無限に増え続けることはないのだそうです。
国立西洋美術館の前庭「地獄の門」は、免震台に乗っていることもあり、少し離れた場所からしか 見ることはできませんが、ここでは間近で見ることも触ることも匂いを嗅ぐことも💦できます。
また程よい距離に望遠鏡も設置されており、さまざまな人物像をマジマジと観察することもできました。
今回、美術作品は、展示されている場所や空気感によって全く違う顔を見せてくれるのだなぁ、とつくづく思いました。
日本の美術館や展示会で見る作品は、それぞれ学芸の先生や主催者の伝えたい文脈や演出を感じ取ることができます。それはそれで毎回楽しませてもらっています。
ロダン美術館にある「地獄の門」は、ただ静かにそこに存在しており、ロダンの手によって形づくられた石膏の柔らかさと温かさを感じました。
きっと鑑賞する人によって、またその人の知識、体調や感情によっても、違う表情に見えるのでしょう。
今の気持ちを忘れたくない!と強く思ったのであります。
ちなみに ロダン美術館ショップで買える鉛筆は、お土産にお勧めです😊
<その3−2>終わり