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自然と人間の「グリーンな関係」とはなにか

私たちLAYOUTは、ロフトワークの渋谷オフィスで沢山の「実のなる植物」と共に働いている。最初は、キウイやイチゴが設置され、続いてリンゴや朝顔、最近は山椒や枝豆など実ができたら食べられる植物など徐々に増えてきた。実のなる植物だけでなく、ハーブ類や多肉植物、生姜などもあり、さらに天井からは蔦系植物が垂れ、ウツボカズラ(食虫植物)や月桃などがオフィスに生息している。

植物と共に働く@ロフトワークの渋谷オフィス 頭上にも植物たち
苗木の植え替え作業
種から植えた枝豆が実った

LAYOUTのチームでは「いきものがかり」というシフトが組まれていて、出勤したメンバーが日替わりで植物たちへ水やりなどの世話をしたり、成長したバジルやハーブ類を収穫をし、それをツマミにした料理でチーム会が催されたりしている。植物がオフィス環境をつくりながら、良きコミュニケーションの媒介者としても一役買ってくれているのだ。

オフィスで収穫
バジル多めなピザ@チーム会

きっかけは、とあるオフィスの企画設計。観葉植物でなく、「実のなる植物」をオフィスに導入し、生産から消費、分解そして再生といった自然循環を現代の生活や仕事の中で「もっと近い距離で体感できたらいいのでは」という新しいオフィスの提案をしたこと。とはいえ、その時は自分たちでもやったことのないものを提案している後ろめたさがあった。案の上(?)、コスト面からも、実現性からも提案は採択されなかったので「まずは自分たちで実験的にやってみよう。」というのが、ことの始まりだった。

オフィスに限らず、都市生活において、自然と人間の関係は、永遠のテーマだ。人間は利便性の追求から都市や建築をつくり、そして更新し、都市の中で自然の価値を失うまいと、いまも試行錯誤を繰り返している。

自然と共に働くこととは?観葉植物に囲まれて働くだけでない関係とは?

グローバル規模での都市化と都市への人口集中が進む近年、その試行錯誤が加速しつつあるように思える。単なる都市の緑化だけでなく、自然共生サイトなど生物多様性の再生(ネイチャー・ポジティブ)や30by30の試み、人工的に作られた場所を自然回帰させ、生活者との関係を再構築する活動が増加。技術革新もあって、いわゆるGX(グリーン・トランスフォメーション)といった概念も登場している。自然と人間の関係のデザインは、都市部から離れた森や海のことに限らず、都市にあっても次のフェーズに移りつつある。

ちなみに、ここでいう「自然」とは、動植物や水や光など存在だけでなく、自然界の循環システムをもいう。本来は、人間も自然の一部だから、分けて書いたり、その関係性を問うたりするのはおかしい。だが近年、都市における人間がそのシステムから少し脱線してしまっているため、「自然と人間」とあえて分けて表現したい。両者の関係性がポジティブに更新されるか、私たちの未来へのデザインを問うてみよう。

お互いが迷惑をかけない、依存しすぎない「クリーンな関係」でなく、あえて「グリーンな関係」を考えてみたい。自然界は食物連鎖で成り立っており、弱肉強食。それでも相互依存し、決してクリーンな関係でない。それこそが自然だ(=自然と書いて"じねん"ともいえる)。言い換えれば、「不自然ではない関係」が、「グリーンな関係」と言ってみても良いかもしれない。

これからの自然と人間の不自然ではない「グリーンな関係」を試みるGOODレイアウトを紹介していく。そして実践者として「自然と人間のグリーンな関係」その更新は可能かをテーマに探求する。身近なところでは、先に紹介した自分たちのオフィスでの実のなる植物との共生(共働)。これが、なかなか難しいことを身をもって体感してきた。

自然と人間とが共生するオフィスは進化するだろうか 画像はLAYOUTがAIにて生成

オフィスというのは、人間の心身に最適化された環境を提供する場。その多くは、植物中心には設計されていない。例えば空調。一年を通じて、オフィスは温度・湿度ともに人間の不快感を減らし、ある一定のものに保つが、植物にとってそれが快適とは限らない。多くの植物にとって乾燥や強烈な冷気(または暖房)は大敵であり、適度な気流は必要なものの、強烈な空調は植物からして拷問だ。

窓からの直射日光は、オフィスワーカーからして眩しく、デスクワークが捗らない。しかし、植物にとって光合成は生命活動だ。当初、渋谷のオフィスの窓には太陽光をカットする透明フィルムが貼られていた。すると窓際に置いた植物たちが続々と枯れ元気がなくなっていく。試しにフィルムを剥がしたところ次第に蘇り、今は緑の葉が青々と茂り元気に成長している。はたまたオフィスに虫が湧くと、虫が苦手な社員たちは大騒ぎだが、植物からしたら虫のいない自然界は不自然だ。

オフィス空間一つをとっても、これだけ人間と自然とのミスマッチがあるのだから、建築や都市全体でみれば、両者の快適・不快の例は、枚挙にいとまがない。生物多様性の森を都心につくったものの、その隣には容積ボーナスでつくった超高層ビルが建ちそびえ、森への光合成を遮ってしまっていたら残念だ。

そのような懸念とは真逆に自然と人間の不自然な関係を中庸する、アウフヘーベンに挑戦している素晴らしい事例も沢山ある。

layout.netでは、第一弾として、その果敢な事例と、それらがいかに自然の摂理にかなっているかを紹介している。キーワードは、自然につなぐ、自然(じねん)の視点での関係性の再構築、そしてパッシブ。私たちが、これから都市を更新することとは、自然との不自然な関係性をみつけ、「ごく自然に」レイアウトし直すことであり、自然の循環システムから幾度となく学び、そしてグリーンな関係を更新することかもしれない。探求は始まったばかりだ。

執筆:レイアウト.net 松井 創

最後までお読みくださり、ありがとうございます。自然と人間のグリーンな関係を更新するGOODレイアウトをご存知の方は、レイアウト.net編集室へコンタクトしてください。


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