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追懐ひとりたび

初めての一人旅を追懐しよう。

それは僅か1時間半の旅だったのだが、小学3年生の夏休み、初の一人フライト。母の故郷、別府にある従弟の家に滞在した時、私は母に駄々をこね、一人で帰ることを約束して母を先に帰らせた。毎日温泉に入り、真っ青な海で遠泳し、深い緑に覆われたダムに忍び込み魚釣りを楽しんだ。

大分空港には親戚が見送りに来てくれた。みんな笑顔だったが私だけが泣いていた。「泣かんと。乗ってしまえばすぐ東京っちゃ。」叔父が背中をポンと叩いた。機内に乗り込み窓からロビーを見ると、親戚全員が飛行機に向かって手を振っていた。自分も必死に手を振った。

離陸後も寂しさで涙は止まらなかった。ようやく落ち着き、窓から外を覗くと、往路では見ていない素晴らしい景色が広がっていた。陸と海と雲、そして太陽。私はその輝く景色に圧倒された。目に映る全てのものが新鮮で壮大でそして繊細だった。大空からのあの景色は今も忘れない。



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