ソロ旅オタクの2泊3日、しくじり韓国旅。財布忘れて渡韓...。Vol.6
前回までのお話はこちら・・・。
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夕食をすでに食べ終えて時間があるというスンヒがせっかくだから、と夜のトンデムン近郊を歩いて案内してくれると誘ってくれた。
そんなオプションなど全く期待していなかったが、到着早々嬉しい誤算に二つ返事でお供をお願いした。
10月末とはいえ、日中の寒暖差がはげしくですでに肌寒くなっているソウルの夜。「冷えるから、しっかり着込んでね。」と言われて思い直し、ラフなシャツの上に念のためもう一枚羽織って出かけることにした。
スンヒが、自宅付近のローカルが好む評判のお店の前を通るたび、「ここはヤンニョムチキンが美味しいところ」「ここのおすすめはキンパ」などと屈託のない笑顔で指さしながら教えてくれた。
途中、韓国の大手ドラッグストアであるオリーブヤングに立ち寄り、美容大国韓国の飲むフルーツゼリーを調達して、それを片手に夜の街を歩いた。
すっかり打ち解けた私たちは、時には笑い、時にはお互いの話に心の底から共感を示しながら、年頃の女性たちなら誰もが話すであろう話題をひととおり話した。
「彼氏はいますか…?」
「かほさんのネックレスかわいいですね。」
とキラキラした目で話しかけてくるスンヒは、童顔で可愛らしい見た目をしているからすっかり同い年くらいか、ひょっとして年下かもしれないな…と思っていたら、意外にもわたしより10歳ほどお姉さんだと言うことが分かった。
年齢のものさしなどまるで当てにならないし、彼女とはもはや世代ではないところで打ち解け合いつながっているのだと思った。
息をのむほど美しかった、東大門・・・
ライトアップされた夜の東大門は、神々しくて息をのむほど美しかった…。
ここにどんな歴史的・文化的背景があったのかなんてよく知らない自分を恥じたが、目先の落胆はいつも、自身を変える起爆剤であり、チャンスなのだ。
今はよく知らない、分からないかもしれないけれど、これからの人生で足を使って都度学んでいけばいい。テストでいい点数を取るための学校の勉強なんかじゃなくて、本当に自分が心から惹かれるものを学ぼうとする意欲やそれらに対する興味関心の泉はこれからも枯らさないでおきたい。
旅をするたび、好きな色が増える。
トンデムンのうぐいす色は、わたしの大好きな色。
そう、まさにこういうのがわたしが韓国に求めるものだったんだ…と美しすぎる外観を目に焼きつけた。
その土地でしか出会えない唯一無二のカラーを探し求めて、わたしはこれからもきっと旅をする。
少し高台に位置する城壁のような場所に登ったとき、遠くに見えるタワーを見ながらスンヒが面白いことを教えてくれた。
「空気の質によって、タワーの色が変わります。」
それって、どういうこと?と聞くと、
「ソウルの空気が澄んでいて綺麗だとタワーの色が緑色になるんです。反対に空気が汚れていると赤に変わる。」と教えてくれて、へぇ〜と興味津々だった。
空気が綺麗だと聞いて嬉しくなったが、そんなことよりも一人で歩いていたら絶対に知り得なかったプチ豆知識をスンヒという韓国でできた友達を通じて知れたことの喜びの方が勝った。
帰宅直前、韓国のお茶と言えばで有名なトウモロコシひげ茶やマッコリなどいくつか気になったものをスーパーでピックアップして帰宅した。
そして、韓国式乾杯の儀式を即興で習いつつ、二人でマッコリで乾杯をした。
“あなた、一週間後にソウルのお宅で現地で仲良くなった女の子とマッコリを酌み交わしているよ。”
なんて、渡韓を決めた一週間前のわたしが聞いたら、さぞ驚くだろう。
プレミアムマッコリというだけあって、トロリと濃厚で本当に美味しかった…。
明日は、一日ソウルを観光する予定。
マッコリを飲みながら、スンヒに明日の観光のプランニングの相談にのってもらった。
2泊3日なんてあっという間で、観光するなら旅の中日である2日目を狙うしかないのだ。日数が限られた今回の旅に至っては、一瞬たりとも無駄にできなかった。
多くの目ぼしい場所と睨めっこしながら、うまくスケジュールにはめていかねばならない。
そんな時、土地勘のない人間が当てずっぽうでプランを立てるとどこかに歪みが出てきてしまうというもの。
このような状況の私にとってスンヒの存在は、心強い以外の何者でもなかった。
わたしは一人で旅をする時、これまでもホテルではなくエアビーを好んで選んできた。完全にひとりになりたい時、ゆったりとホテルで過ごしたい時は敢えてホテルを選ぶが、基本的にエアビーを好んで選んでいる理由は、ローカルとのコミュニケーションを楽しむこと、そしてローカルしか知らないような情報(おすすめのお店や文化、思想)に直接リーチしたい、というのが一番だからだ。
ところどころ、日本語(カタカナ)も交えながら、手書きのマップを作ってくれるスンヒ。
どのルートで回ったら効率がいいかということはもちろん、どういう時間帯に行くのがおすすめといった細かな情報も補足してくれる。まさに神マップだった。
ありがとう、スンヒ。
わたしも彼女にできることがあれば、どういうかたちになるか分からないが恩返ししたい、と思った。
ソウルに来て、本当によかった。
ベッドに潜ると寒いからと、ホストのオリビアが電気毛布のスイッチを入れておいてくれた。
彼女のやさしい気遣いに疲れも吹っ飛ぶような気持ちで身も心もあたためられるように、グッスリと深い眠りについた。
…続く