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入学前に学生ビザを取得できず、日本に帰国する
赤道直下に位置する世界で3番目に大きな島、ボルネオ島。この島に暮らす先住民ドゥスン人について学ぶべく、マレーシア領のサバ(Sabah)というところへの大学院進学を志した。
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いつ出るかわからない合格発表
出願手続きを終えた私は、あとは合否が出る日を待っていた。ただ、大学院側はいつ合格発表するのかを明記していなかった。参考に過去の入学スケジュールを見てみたところ、出願の締切日から約1ヶ月後にそれがなされていた。
合否発表は大学院のホームページで確認することができる。出願締切日から1ヶ月近くなってくると、頻繁にパソコンでチェックした。だが、1ヶ月経ってもそれはなかった。大学院の入学日までは、あと1ヶ月と3週間だった。
私には悠長に合格発表を待っている余裕がなかった。なぜなら、留学生活を送るために最も重要である「学生ビザ」を取得する手続きを行わなければならなかったからだ。
当時の学生ビザ取得方法(マレーシア・サバ州)
合否を待っている間、学生ビザの申請方法について大学の留学生課にメールで問い合わせることにした。過去に大学院の入学課とは全く連絡がつかず、出願に手間取った経験があるが、留学生課の担当者さんからはすぐに返事が来た。
学生ビザの手続きは、個人でではなく、大学を通して行われるという。ここで当時のマレーシア・サバ州における学生ビザの取得プロセスを紹介する。
1.大学がサバ州の移民局に学生ビザの申請をする
大学院から「オファーレター(Offer letter)」と呼ばれる正式に入学を許可する通知書が届くと、学生ビザの申請書とパスポートの写し、証明写真を留学生課に提出する。その後、大学の担当者がサバ州の移民局へ赴き、外国人留学生の学生ビザ申請手続きを始める。
2.本人が駐日マレーシア大使館でシングルエントリービザ(Single Entry Visa)を取得する
次に、サバ州の移民局よりApproval Letter(承認レター)が発行されると、その原本と航空会社で発行されたeチケット、その他申請書類を持って、本人が駐日マレーシア大使館に提出。シングルエントリービザ(Single entry visa)を取得する。
3.大学がサバ州の移民局でマルチプルエントリービザ(Multiple Entry Visa)を申請する
その後、マレーシアに入国し、1ヶ月以内にマルチプルエントリービザの手続きを行う。大学の留学生課に申請書類とパスポート、健康診断書、保険加入の証明書を提出する。大学の担当者がそれらを移民局に提出し、学生ビザの取得は完了。
つまり、渡航前に駐日マレーシア大使館でシングルエントリービザを取得しなければ、サバの移民局で学生ビザを発行してもらうことはできなかった。
入学日まであと1ヶ月半
出願締切日から1ヶ月と10日間ほど経った日、いつものように合格発表が出ていないかを確認すると、合否結果を表示するボタンが出ているではないか。クリックして、自分の番号を入れると、"Congratulations! We are very pleased to offer you to study at……."と書かれていた。だが、そのページではビザの申請に必要な「オファーレター」をダウンロードすることができなかった。
それから10日ほど経った日、大学院から1通のメールが届いた。オファーレターの写しが添付され、学生ビザの手続きを取るようにとの内容だった。その時すでに、入学日までは残り34日だった。
翌日、学生ビザ担当者のメールアドレスにビザの申請書類を添付し、送信した。書類を提出すれば、あとはその方がサバ州の移民局で手続きをしてくれる。私は移民局から承認レターが発行され、日本にその原本が届くのをただひたすら待つだけだった。
ところで、ビザの申請書類には入国日を記さなければならなかった。つまり、入学日まで残り1ヶ月しかなく、シングルエントリービザの取得が間に合うかわからない中で、航空券の予約をしなければならなかった。
入学日に間に合わないと罰金
サバの大学院では、日本のような入学式はなく、入学初日は登録日(Registration day)と呼ばれていた。その日は、大学から指定された場所へ行き、入学書類の提出と授業料の支払い、学生証の写真撮影と発行を行うだけだった。登録日に訪れず、これらの手続きを遅れて行った学生には、罰金が課されるという。
留学生の中には、入学を遅らせて、シングルエントリービザの取得後にマレーシアに入国する方もいたが、私には入学日より少し早めに渡航しておきたい理由があった。
入学日の翌日から行われる新入生ガイダンスと講義に参加したかった。講義では、卒業までの流れや卒業資格取得条件、研究方法、論文の書き方、研究におけるモチベーションの持ち方、指導教官との付き合い方などを学ぶことができる。
それから、快く留学生活をスタートさせるためにも、入学前に住まいを安定させておきたかった。大学には寮への入居を申請済みではあったが、学外にある院生寮の場所は知らされず、現地で寮担当のスタッフと連絡を取ることになっていた。
そのような理由から、シングルエントリービザの取得が間に合うかわからないが、私は入学前にサバへ渡航することを決断した。
サバへ渡航まであと10日
移民局からの承認レターが届かぬまま、サバへの渡航日はあと10日と迫る。留学生課のスタッフにビザの進捗状況を聞いてみるが、まだ移民局では手続き中とのことだった。近日中に承認レターが発行されたとしても、マレーシアから日本へ郵送し、それを持って駐日マレーシア大使館で手続きを行わなければならない。あと10日でできるのだろうか。
ついに入学日を迎える
結局、留学生課から承認レターが発行されたという知らせを受けたのは、申請書類を提出してから27日後のことだった。
その時、私はすでにサバにいた。知らせを受けたのは、日本からサバに到着して3日目だった。シングルエントリービザを取得することができなかったので、ビザ申請の必要ない90日間以内の短期滞在でマレーシアに入国していた。
ビザの手続きに日本へ帰国
承認レターを留学生課へ取りに行き、シングルエントリービザ取得のために日本へ帰らなければならない。航空券代が余計にかかってしまったのは痛い出費だが、入学前に学生寮には入居できたし、新入生ガイダンスと講義も受けることができた。指導教官とも面談し、大学院生活のスタートを切ることができた。
その後、無事に駐日マレーシア大使館でシングルエントリービザを取得し、サバ州へ戻った。再度留学生課を訪れ、手続きを行い、学生ビザを取得することができた。
なんとかできないか入学課にかけあう
大学からオファーレターを受け取り、入学日までに留学生がシングルエントリービザを取得するには、結構ギリギリの日程なのではないか。
同時期に入学した留学生の中には、私のようにシングルエントリービザを取得できないまま入学し、一時帰国する方がいた。また、入学日を遅らせ、新入生ガイダンスを受けずにシングルエントリービザを取得してから入学する学生もいた。本来ならばそれには罰金が課せられるが、大学院長と面談をし、そのような事情を説明したレターを提出したら、免除されていた。
今後の留学生のためにも、なんとかできないのかと入学課のスタッフに相談してみたところ、ご理解は頂いたが、大学のスケジュールと祝日などの兼ね合いもあり、出願の時期や合否発表の日を早めるのは厳しいとおっしゃっていた。
その後に入学した留学生に聞くと、帰国せずとも現地で学生ビザを取得できたという。今後、マレーシア・サバ州に留学される方は、最新の情報を確認してください。
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