【クリエイターの法務】登録商標:ゆっくり茶番劇について
東方Project界隈は、自分がながーくファンでいたところでもあるので遅くなった感じでもありますが、まとめておかないとと思い、記事にしました。
1 登録された商標の力は?(商標権の効力)
まず、「ゆっくり茶番劇」という商標は、文字として登録されています。なので、①「ゆっくり茶番劇」又はこれに類似した商標(文字列やマーク)を、②登録区分である「インターネットを利用して行う映像の提供」等を行う、つまりニコニコ動画やYouTube上で動画として公開すると、商標権を侵害するとの判断がなされる可能性があります。
商標権は、禁止権を有していますので、使用を差し止めたり、損害賠償を請求する権利があります(実際に行使するかはさておき)商標法第36条。
まぁ、商標権の効力は類似するものまで及びますが、ゆっくり実況だとかゆっくり解説といった実況動画のシリーズ名に使っても、それぞれの識別性も高くないので被類似になるでしょうし、当然ながらゆっくり霊夢やゆっくり魔理沙といったキャラ名にも及ばなければ、イラストを使えないということにもなりません。
2 周知性云々の話。
問い合わせなどが殺到してやむなくコメントを出したのだと思いますが、正直読まれるターゲットを読み違えて、いろいろな意見が出てしまったなというのが代理人弁理士のコメントについて思うところです。※周知性の話、分からなくはないけどあれだといろいろ言われてしまう・・・
弁理士の言う検索件数がいつ時点なのかは何とも言えませんが、ネットミームのような流行語になると、周知性があるとまでは特許庁の審査官が判断しないということもありえてしまうところです。
正直、過去には自分が使わないけれどとにかく商標出願するなんて言うことも問題になりましたし、創作活動をする人間が増えるにしたがって、自身やブランドを示す商標の存在感が増してくる中で、こういったことも増えてくるのかなというのは思うところです。
3 今後のこと(無効審判など)
ニュースで取り上げられてますが、神主(ZUNさん)やニコ動においても法律家へ相談することを上げていますから、何らかの措置をすることは考えられます。
(利用料を取らないというツイートが出たようですが、権利としてそもそも認めるか否かというのはまた別の話です。)
登録後の措置というと商標無効審判が考えられます(商標法第46条1項)。無効審判では、特許庁の審判官が当該商標について無効事由があると判断すれば、登録商標の効力は覆ることになります。なお、無効審判は原則として期間制限もありません(権利が消滅してからでも請求ができます、同条3項)。
仮に無効にならないにしても、商標権の効力(類似とされる幅)は広くないと考えられますので、新しいワードがネタとして考えられているところもありますが、ゆっくり●●などといったもので使用されていくところもあるかなと思います。
4 第三者がやれること(登録前の商標への対抗)
商標登録において、登録について影響を与えるとすれば、刊行物等提出書により審査官に情報提供をすることが考えられます。
対立当事者がいる場合には、商標出願をしているかを調査するなどし、出願が確認されると、当該商標が登録されないよう、登録の障害となる事由を提出したりすることがあります。
ただ、注意してほしいこと。
登録出願と同じように、これ誰が出したかはわかるんですよね。
そういう意味で出すことについて、気軽に個人でやることはお勧めできませんし、弁理士・商標関係をよく扱う弁護士含め知識のある専門家に相談して対応することをお勧めします。
まかり間違っても爆破予告だの誹謗中傷だの正攻法でないことをやるのは、ダメ絶対。
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