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1+1=2にならない場合
当たり前だが、1に1を足せば2である。
これは説明する必要もない当然のことだが、しかし、映画においては「1+1=2」という単純な関係にならない場合もある。
映画における編集理論
例えば、黒人物と白人物二人が会話しているシーンがあるとする。
その場合、最初に向かい合う二人を映し、その後白人物を映すことで「黒人物と白人物が何か会話している(白人物が黒人物に向かって何かを話している)」ということがわかる。
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続いて、黒人物と白人物が会話している同様のシーンを、以下のようにつないでみる。
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二人の会話後、最後に晴れの風景を挿入すると「黒人物と白人物が”希望に満ちた会話”をしている」印象を受けるようになる。それは、愛の告白かもしれないし、今後に向けた旅立ちに関する会話かもしれない。
今度は、以下のようにしてみると、どうだろう。
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最後に雨の風景を挿入すると「黒人物と白人物が”失望に満ちた会話”をしている」ようになる。別れの告白かもしれないし、最愛の人を亡くした会話かもしれない。
このように、異なる物をつなぎ合わせることで、別の意味を持たせる編集方法はモンタージュ理論と呼ばれ、1920年代に旧ソ連の映画監督たちによって研究・体系化された。
特に、レフ・クレショフ監督によって行われた、一人の男性のクローズアップと異なる映像をつなぎ合わせた場合の、見る側へ与える心理効果の違いを検証した実験が有名で、「クレショフ効果」として知られる。
異質な物の組み合わせ
モンタージュ理論は、異質な物を組み合わせることで、「1+1=2」という関係でなく、「1+1=3」にも「1+1=4」にも、さらには「1+1=100」にもなり得ることを示している。
何かを作ろうとする際、全くのゼロから生み出すというのは、よほどの天才でなければ出来ることではない。
アップル社の創業者スティーブ・ジョブズにしても、MacBookの磁石付き電源コードは、日本の炊飯器や掃除機のそれとパソコンを組み合わせた物であるし、携帯業界を一新させたiPhoneも「携帯電話」「インターネット機器」「タッチパッドの液晶画面」という既存製品を組み合わせたに過ぎない。
異質な物の組み合わせが全く異なる価値を生み出し、画期的な発明やアイデア、もしくは創作につながることもある。