怪文詩(2022/07/01)
「吐き気」
私は吐き気を堪えている。
胸中に蠢く虫を吐き出したいのだ。
毎夜現れては平静を蝕む虫たちを。
それは私の頭から湧き出る。
かつての風景が私を苛む。
メッキの剥がれた私を拒む。
それは風に乗って押し入る。
目から、耳から、内臓を腐らせる。
古臭い憧れは、離れもせずに追ってくる。
虫たちは順調に感情を侵していく。
私はただただ震えている。
いつしか虫たちは、私の一部になった。
いまや私は、虫たちの人質になった。
吐き出してしまえば、楽になれるだろうか。
私は吐き気を堪えている。
全ての虫を吐き出したいのだ。
私は吐き気を堪えている。
全ての私を吐き出したいのだ。