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警察に「診断書を出して」と言われたら~人身事故と物損事故~

交通事故にあってしまった際に、
加害者から「物損事故(物件事故)で届けて出て。」と頼まれたり、
警察官から「人身事故にしたかったら診断書を提出して。」と言われたりすることがあります。
どのように対応すればよいのでしょうか。また、示談交渉や治療に影響は出るのでしょうか。
オリオン法律事務所の弁護士が解説いたします。


1 はじめに

 交通事故にあってしまった際に、加害者から「物損事故(物件事故)で届けて出て。」と頼まれたり、警察官から「人身事故にしたかったら診断書を提出して。」と言われたりすることがあります。

 本来は、人身事故か物損事故(物件事故)かは警察が事故の状況から判断するものですが、現実的には被害者の届出を基に決めることが多く、実際には被害者の方がどちらにするかを決めるような状況になることがあります。

 そうした場合、警察に対して人身事故と物損事故(物件事故)のどちらで届出をすればいいのか迷うことがあるかと思います。

診断書を出しても不利にならないのでしょうか。。。

2 人身事故・物件事故とは

 物件事故とは、物のみが損害を受けている事故で人の身体には損害が発生していない事故を指し、人身事故とは人の身体にも損害が発生している事故で物への損害が発生しているかどうかは関係ありません。

 警察への届出との関係では、人身か物権かというのは刑事事件の手続上の問題であり民事上の手続きとは別になります。

 そのため、おすすめはできませんが、警察には物件事故として届け出て、民事上では人身傷害の損害賠償請求をすることも理論上は可能です。 

事故後は治療だけでなく、警察対応も必要です。

3 人身事故と物件事故の確かめ方

 ご自身の事故が人身事故と物件事故のどちらで処理されているか分からないという方は交通事故証明書をご確認ください。

 交通事故証明書の下部の「照合記録簿の種別」の欄に人身事故もしくは物件事故の記載がありますので、そちらで確認できます。

 また、担当の警察官に直接尋ねても教えてもらえることが多いかと思います。

4 人身事故と物件事故のちがい

 ⑴ 人身事故は刑事事件になる

 人身事故と物件事故の大きなちがいは、人身事故として届け出ると刑事事件として処理される点にあります。

 先ほどお話したとおり、人身事故か物件事故かは、本来は警察が判断するため、刑事事件かどうか(すなわち人身事故かどうか)も警察が判断するのですが、実務上はほとんどの場合で、被害者が人身事故として届け出た場合は刑事事件として処理し、物件事故として届け出た場合は刑事事件として処理しないという運用になっています。

 ⑵ 人身事故のメリット

 刑事事件として処理された場合は、警察では実況見分調書が作られます。実況見分調書には、どういった事故だったのかということが細かく記載されており、これが民事上も大きな証拠となります。

 事故の態様に争いがある場合は特に重要です。例えば、「停車していたところにぶつけられた。」と思っていても、加害者は「そっちも動いていた。」と言ってくることもあります。ドラレコなどの映像があればよいのですが、ない場合は、裁判所が実況見分調書の内容を参考にすることがあります。

 物件事故の場合であっても物件事故報告書(警察署によっては名称が異なることがあります。)という書類が作成されますが、これは実況見分調書よりも簡易なものであり、参考になるほどの情報が記載されていないことがほとんどです。

 また、怪我をしているも関わらず物件事故として届け出てしまった場合のデメリットとして、軽傷だと思われてしまうことがあります。

 裁判の際などに人身傷害について請求しても、加害者などから「人身事故で届け出していないんだからそんなに大きい怪我はしてないんじゃないですか。」と言われてしまうこともあります。

将来の賠償交渉で不利になる対応は避けたいところです。

 ⑶ 人身事故のデメリット

 人身事故の届出をする際のデメリットは手間がかかることです。

 人身事故の届出のためには、診断書が必要ですので、病院で警察に提出用の診断書を作成してもらいそれを警察署に提出しなければいけません。

 また、実況見分調書の立会が必要になることもありますし、また警察からの聴取も物件事故の場合よりも多くなることがほとんどです。

適切なタイミングで、適切な対応をとることが必要です。

 ⑷ 人身事故で届け出るべき

 物件事故として処理してもらうと手間は少なくなりますが、後日、損害倍書の請求や交渉をした際に十分な証拠がなく適正な賠償を受けられなくなる可能性があります。

 そのため、基本的には人身事故で届け出ることをおすすめします。 

交渉での不利な材料を減らして、治療に集中できる環境を整えましょう。

5 警察が人身事故の届出を受け取らない場合

 診断書があれば、基本的には警察は人身事故の届出を受理してくれます。

 しかし、たまに「軽傷だから物件事故じゃないの。」や「相手が子どもだから人身にしない方がいいんじゃないの。」といって受け取ってくれない警察官がいるかもしれませんが、これらの理由は受理しない理由にはなりません。

 警察官が人身事故の届出を受理してくれなくて困っている方は一度弁護士にご相談されることをおすすめします。

 弁護士から警察に受理してもらえない理由を聞くことができますので、どういった理由で受理されないのか、どうすれば受理されるのかお手伝いできる場合があります。

警察の事故取扱いは平等ではありません。

6 さいごに

 今までお話しましたとおり、基本的には人身事故として届出をすることをおすすめしていますが、「加害者が知り合いだから大事にしたくないな。」、「忙しくて実況見分に立ち会う時間なんてないよ。」と思い迷われることもあるかもしれません。

 そういった場合は一度弁護士にご相談ください。

 事故の態様に争いがなく怪我も軽傷であるなどの理由で、人身事故の届出をしなくても結果的に問題にならない場合もございます。

 ご相談者様の事故一つ一つで、人身事故の届出をすべきかどうかを検討させていただきます。

以上

弁護士法人オリオンの弁護士が解決に向けてサポートいたします。


執筆者:川崎支部 支部長 藤本弁護士(神奈川県弁護士会)


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