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土のあたたかさはお布団のよう
花への興味
いつからだろう、
特にお花に興味がなく
プレゼントにお花をあげたり貰ったりすることに
特別感など感じなかったのに
急にお花が好きになった。
多分、主人に出会ってからのように思う。
お花はこころだと知った日
思えば日本人男性でプレゼントに花束をくれる人が少ない、つまり特別な相手から貰ったことがなかったからかもしれない。
私の母はバラが好きで、庭に色んな種類のバラを育てていた。綺麗だなとは思うけど、棘がある植物はあまり好きになれなかった。
母は結婚記念日には薔薇の花束を欲しがっていたけれど、正直何が良いのか分からなかった。
どうせ枯れてしまうし、アクセサリーの方がよっぽど形に残るし嬉しいのに、と。
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私達がまだ結婚する前のこと。
主人に会うため初めてチューリッヒの空港に降り立った日、
到着ロビーに一輪のガーベラを持って目をキラキラさせた男の子が立っていた。主人だった。
花束ではなく、たった一本のガーベラ。
でもとてもとても嬉しかった。私の事を考えながら色やお花を選んで買って、待っていてくれたその気持ちが嬉しかったのだ。
次に日本に会いに来てくれた時、
1月の真冬だったのに汗をかいて家にやってきた彼。
(しかもサプライズなので家に直接来た。ご丁寧にPhotoshopで旅程表を書き換えて一日早くご到着)
「どうしたの?そんなに汗かいて」と聴くと
「向日葵を探してお花屋さんを何軒も回ったんだけど見つからなくて、、1番似合うと思ったんだ」と言い、花束を渡そうとしてくれた事もあった。
向日葵をどうしても渡したくて、寒い街中を走り回る彼を想像したら笑いそうになったけど、とても愛おしかった。
その夜私たちは婚約した。
また彼と結婚するために日本を経ち、チューリッヒ空港にお迎えに来てくれた日には一本の白いバラを手に持っていた。
バラは好きじゃなかったのに、少しだけ好きになれた。その日貰ったバラをドライフラワー にするためにお部屋に吊るした。
それからというもの、気づけば自分でドライフラワーを作って飾ったりするのが好きになっていた。
お花の種類もたくさん覚えた
お花の形や色の違いに感動する人間になっていた。
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ただ、種からお花を育てる程ではなかった。
夏休みの研究みたいで楽しそうと思う反面、
咲かせるまでの工程を考えると途中で枯らしてしまうんじゃないかと思ってしまうから。
あとは土を扱うと爪の間に泥が入ってしまって洗うのも大変なのでなんか嫌、というシンプルな理由もある。
そういうわけで、自宅の観葉植物の土替えなどはだいたい主人がやっていた。
もちろん私も日々の水遣りなどのお世話はするけれど、「土は僕がするよ!」という感じで、せっせとやってくれるので土に触れる機会があまりなかった。
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土のあたたかさ
ところが最近、心境の変化がまたあった。
自宅の観葉植物の元気がなくなり、
そろそろ大きい鉢に植え替えた方が良さそうだ。と言うので、ホームセンターに一緒に行った時のこと。
お花や観賞用の野菜の苗が売っているコーナーでとても可愛い苗を見つけた。
少し広めの鉢にアソートされて植えられたサンプルなどもあり、それを見ていると、自分で選んでアソート鉢植えを作りたい!と思った。
以前より、
「玄関にオリーブの木だけじゃ殺風景で寂しいよ!」
と言っていた彼もそれには賛成だった。
2人で組み合わせについてディスカッションしつつ、最終的に丸い浅めのテラコッタの鉢と、5つの苗を購入した。色のコンビネーションも種類もとても気に入って嬉しくなった。
帰ってから早速、観葉植物の鉢の植え替え作業が始まり、私はいつものように専らアシスト係を務めていた。が、アソート鉢植えの時に植えたかった苗の順番が彼の手元と違ったので口を出してしまった。
ついでに手も出た。これは越権行為だ。
そうなると苗を自分で出して植える役回りになってしまったがもう遅い、爪に泥が入ったり苗の中からミミズが出てくるのも覚悟で作業を始めた。
苗を少しほぐして鉢に入れる、
5つの苗のバランスを整えてから、被せる用の土を入れてもらうよう主人にお願いした。
ぱらぱらぱら
手に土がかかる。
あれ、温かい。
まんべんなく土が苗をカバー出来たら手で軽くおさえる。
ぽふぽふぽふ
温かくて、やわらかくて、気持ちいい…
なんだろう…これ、癒される…。
ここで生まれて初めて趣味で家庭菜園や園芸をしている人の気持ちが分かった。
これは癒し効果がある!間違いない。
土のあたたかさに触れた時、まるで寒い冬に温かいお布団に入った時のような幸せを感じた。
きっとこれは植物にとっても同じに違いない。
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翌朝、玄関前のオリーブを見てみると
それはそれは凛としていた。
今までは"生かされてる"といった風貌で、色も燻んだグリーンだった。ところが今朝は"生きてる"感じがして、色もこころなしか昨日より濃いグリーンに見えた。
あたたかくて栄養たくさんの土に替えたことで、
植物たちも安心できるお布団にありついて喜んでいるようだ。
今まで景色としての観葉植物だったのに急に愛着がわいてきて、なんだか今までごめんね、の気持ち。
やさしさのお布団
何が植物にとってベストな方法か事前に沢山調べて、ホームセンターに行こうと言った彼。
愛情を含んだ手でぽふぽふと土をならして植物のお世話をする姿を思い出して、植物も愛情を感じ取れるのかも知れないと思った。
他ならぬ私も、彼に愛情をかけてもらって今までに気付けなかった事を少しずつ感じられるようになっていて、心を育ててもらっているのかもしれない。
彼の優しさはあたたかい土のお布団のようだとも思った。
らべんだ