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イギリスで家を買いました!〜在英7年の女医がイギリスの物件購入の流れを解説します〜
イギリスへ引っ越してきたのは2017年7月下旬で、2024年2月下旬まで研修医・家庭医療専門研修医としてイギリス北西にあるブラックプールとマンチェスター周辺で働いてきました。研修医の勤務先は4〜6月ごとに変わったりするので家を買うのがほぼ不可能だったけど、今年2024年にやっと専門研修を終えて家庭医(かかりつけ医、イギリスではGPという)として気に入った街であるマンチェスターで無事に仕事を見つけられたので、こっちでマイホームを買っちゃおうと決心しました!
イギリスの家賃が年々に高くなっているし、ペットも賃貸ではほぼダメだし(うさぎ2匹が欲しい。。。)、自分なりにカスタマイズや改造ができないので、ずっと昔から自分だけの家が欲しかったです。人生の目標とも言えるぐらい自分にとっては最大の夢だったので、この数年間貯金や投資、クレジットスコア増加などで必死に頑張ってきたんです。そこで、やっとクリスマスの前にギリギリ達成できたので、私の購入経験とイギリスでマイホームを購入する方法・流れを詳しく解説していこうと思っています!
私が購入した家
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家のタイプ:中古住宅(1930年代に建てられた)、セミデタッチド・ハウス(3部屋)。セミデタッチド・ハウスとは、一戸建ての大きな家が二軒に分けられ、隣の家とは壁を共有する住宅の種類の一つ。イギリスでは一番よく見かけるタイプで、大きすぎず小さすぎず独身の人から家族までかなり人気。
所有権:フリーホールド(土地ともに所有権を持っていること)、
頭金:30%(自分の投資と貯金の他に父親からの手伝いがあったからこその金額だったけど、住宅ローンのために最低限5〜10%が必要)
住宅ローン:金利3.95%、 30年(5年固定)。医師専用のブローカーに相談した)
イギリスの住居と所有形態についてもっと詳しく知りたい方:
イギリスで家を購入する前に知るべきこと
どれぐらいかかるの?時間と費用
下見は不動産経由なんだけど、その後の手続きが全て弁護士さんに行われるので、購入物件が決まったら直ぐにでも弁護士と契約しなければなりません。イギリスの古い時代的なやり方が未だに変わっていないせいかめっちゃくちゃ時間がかかるんです。オファーの受諾から実際鍵を受け取るまでは平均4ヶ月間ぐらいかかってしまうけど、半年〜1年間ぐらいかかるケースも珍しくないらしい。
費用に関しては、物件以外の費用が割と多い(頭金、住宅ローンの手数料、弁護士料金、金利、引っ越し代、あらゆるの保険、家具など)。費用は色々なことによって差がかなり広いので正確な数字を言えないが、物件以外の費用はだいたい数千ポンドになるだろうから、予算に余裕を持った方が良いです。
イギリスで家を購入するメリットは?
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イギリスでの考え方は「早めに家を買った方がいい、賃貸はお金の無駄にしかならない」、「賃貸は風にお金を投げ捨てているようなものだ」なんです。なぜかというと、ほとんどの場合はイギリスの家の価値が上がるからです。家の買い替えで儲ける人は結構いるし、地域によって賃貸より住宅ローンの毎月返済額の方が安くて資産にもなります。リノベーション・リフォームが自由なので、おしゃれにすれば価値も更に上がったりします。
それに、日本と同じように老後に賃貸を借りるのが難しいので、マイホームで安心感を得られるでしょう。永住・長居(5年間以上)するつもりの人にとってイギリスで家を購入を検討するメリットが大きいと思います。
イギリスの家ってかなり丈夫なので、中古でも高く売れます。家を買って数年後により高く売ってもっと大きい家を買うという繰り返しが欧米では普通で、数軒を持って賃貸に出して儲けるのも珍しいことではないんです。私の父親もそういうのが好きらしく、長年ハウス一軒とマンションを賃貸に出しています。
何度も家を買い替えたり弁護士を通して話し合ったりするイギリスのやり方は日本とはちょっと違いますね。
頭金
物件購入額の5%が最低限なんだけど、物件購入額の割合よって金利と毎月返済額は変わるので、できれば最低〜10%がおすすめ、20〜30%が理想。それに、頭金があまりにも低すぎると貸してくれる金融機関も少なくなるので、予算をよく考えてから物件を探した方が良いかと。金利が一番低くなるのは物件購入額の40%なので、それ以上出すのは無駄です。
新築と中古、どっちの方が人気?
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広さと建築
新築は中古住宅より結構狭くて値段的にも高いけど、手続きの方が早くて改造や修理も不要なので、面倒ごとを避けて直ぐに引っ越したい方にはおすすめかな。多くのイギリス人はビクトリアン様式の家が好むので、新築より中古の方が断然人気。ビクトリアンの他にエドワーディアン様式とジョージアン様式など色々デザインがあり、ザ・英国風の家が欲しい場合は中古をおすすめします。1930〜1970年(戦争後)に建てられた物件は結構広くて割と丈夫なので、この時代の家がかなり多い。中古住宅って和風の家のように英国の風情ある家のような感じかな。
私が買った物件は1930年に建てられたけど、内装は年々に色々改装されてきたし自分なりに更にリフォームするつもりです。
デザイン・カスタマイズ性
同じストリートでも中古住宅のデザインが多少異なっていることが多いので(例:扉や玄関のデザイン、物件の色など)、もし自分なりに改装したり隣人さんとちょっと違う感じの物件が欲しいなら、中古住宅の方がいいかもしれない。新築の場合は全部が全く同じなので、デザインのことを全て建築家に任せたい方やみんなと同じでも構わない方にはおすすめかな。
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価値・利益
もう一つ覚えておきたいポイントなんですが、新築は中古住宅のように価値がそんなに上がらないんです。自動車と同じように新品状態が一番高くて求められている状態なので、約5年間以内に売ろうとしたら逆に不利益になりかねます。
私の親は15年前に新築の2LDKマンションを購入したんだけど、15年立っても当時の価格より£10万ぐらい価値が下がってしまったらしい。でも賃貸に出すためなら新築の方が貸しやすいので、マイホームより投資としては良いかと。
断熱性に関しては、新築の方が暖かいのが大きなメリットです。
手続き手段はイングランドだけがちょっと異なる
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皆さんがご存知の通り、イギリス(グレート・ブリテン)はイングランド、スコットランド、ウェールズと北アイルランドの四つの地域で構成されています。同じイギリスの中でも物件購入の手続き手段は、イングランドだけが(悪い意味で)ちょっと違います。何が違うというと、契約書がなぜか最終段階までサインできないので、契約書の交換と家の引き渡しまではあまり安心できません。
もし書類手続きの途中で売り手が「やっぱり売りたくない」と突然言い出したら、その家をもう買えなくなり、今までの費用と物件探しの時間を失ってしまうんです。逆に、もしもっと良い物件を見つけたり気が変わったりしたら、買い手として最終段階までいつでも購入から逃げられます。スコットランド、ウェールズと北アイルランドを含めて他の国だど、契約書を最初段階で成立するので、安心して書類の手続きを進められます。
チェーンとは
「チェーン」というイギリス独特のシステムが存在します。これもまだ面倒なものなんでちょっと説明しにくいので、以下の画像で説明します。
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左の方はチェーンフリーの買い手:自分の家を持っていない人で真ん中の人の物件を購入しようとしています。買い手としては理想的でチェーンの前方になります。
真ん中の方は買い手+売り手:新しい物件を買うためにまずは自分が既に持っている物件を売って、そのお金で次の物件を買えます。でも自分の家を売らなければ何も成立しないので、買い手と売り手としては少々面倒。
右の方は売り手だけ:この人は自分の物件を売ろうとしているけど新しい物件を買うつもりはないので、チェーンの後方になります。こういう人は国から出ている人、複数の家を持っている投資家や大家、死んでいる人のご家族、誰も所持していない新築など。面倒な真ん中な人がいないので、買い手にとっては一番楽。
Chain BreakとFall Throughとは
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問題は、契約書の交換と書類の仕上がりが同じ日に行わなければありません。というと、全員が同じ日に契約書をサインして鍵を交換しなければというルールがあるんです。もし自分の手続きが早めに終わった場合、チェーンの他のみんなも終わるまで待つ必要があります。上の画像には3組しかない短めなチェーンなんだけど、たまには10組とかめっちゃくちゃ長いチェーンがあったりして家の引き渡しまで半年〜1年ぐらいかかることも珍しくありません。
それに、チェーンが長くなればなる程、購入の失敗率も高くなります。これは「Fall Through」と言うんだけど、日本語に訳せば「落ちる・崩れる」と言う意味です。「The chain broke」や「 The chain has broken」という表現もよく使われます。失敗する理由としては、ローン拒絶、失業、オファーの取り消し、死亡、チェーンの誰かが単に気が変わったなど様々あります。意図的にチェーンを「壊す」やばい人もいるので、怪しい売り手には気をつけるべき。
チェーンフリーとは
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購入取消のリスクがあるので、売却側にとって家を持っていないチェーンフリーの人(Chain Free buyer)が買い手として一番リスクが低くて理想的。
同じように、誰も所持していない新築もしくは物件を買う必要のない売り手(例えば大家さんなど)が、買い手にとっては一番早くて取消のリスクも低い。これはChain Free Propertyと言います。
もしマイホームを既に持っている人がチェーンフリーになりたいなら、まずは自分の家を売ってからしばらく賃貸に引っ越すという方法があります。そうすれば、次の家を探す時に買い手として有利になるんです。
調べたところ、チェーンというコンセプトはイギリスでしか存在していないらしく、日本を含めて2週間〜1ヶ月間以内に簡単に家を購入できます。イギリスの方法って本当に古くさくて面倒ですね(笑)
私の場合、チェーンが割と短かったのでオファーから鍵の受け取りと契約書交換までちょうど4ヶ月間ぐらいかなりました。私がチェーンフリーの買い手(チェーンの前方)。購入した物件の持ち主は老人夫婦。彼らは大家さんから空き家(チェーンの後方)を購入したかったので、私たち3組だけでした。
弁護士の選び方
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弁護士に関しては自由に選べられるので、料金やレビューを事前にしっかりと調べておいた方がいいです。めっちゃ遅くて中々返事が返ってこない呑気なやつは結構いるので、適当に安い弁護士を選ぶのではなく評判の良い会社を選ぶのがおすすめ。なぜかというと、もし自分の弁護士のせいで手続きが遅すぎて売り手をイライラさせたら、オファーが取り消される可能性があります。
普通の弁護士の他にConveyancerという物件購入専門の弁護士とオンライン系の弁護士もあります。Conveyancerというのは物件購入以外のことはあまりしない、物件購入の専門弁護士のこと。普通の弁護士より料金が安くてオンラインプラットフォームを使用している会社も多いので、電話が苦手な方やいちいちオフィスまで行きたくない人にはおすすです。
私が使ったのはLPL Property lawyersというオンライン系のConveyancerでした。オンラインプロフィールでタイムラインのような形で購入がどれぐらい進んでいるのか見えるし、書類を簡単にアップロードしたりメッセージを送ったりすることもできたんでめっちゃ便利だなと思いました。メールにもすぐに返事を返してくれるのもよかったです。手続きが問題なく進んでいたので、マンチェスター周辺に住んでいるならおすすめです。
物件購入の流れ〜10ステップ〜
家を購入するのはちょっと複雑なので、なるべく簡潔にご説明します。
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1:予算を決めて、銀行かブローカーと相談して住宅ローンをどれぐらい借りられるか検討し、Mortgage in Principleという仮初のローン書類を貰う(ネットで簡単にできる)。どの金融機関からでもらえます。
2:RIGHTMOVEやZOOPLAというサイトを使って物件を探す。
3:下見したい物件を見つけたら、まずはその物件を経営している不動産に連絡して見に行く。人気のある物件はすぐになくなるので、投稿されてからなるべく早めに。
4:気になる物件を見つけたら、不動産にオファーを提案する。複数の人からオファーがあった場合、物件の売り手が決める。もし全員から同じ価格が提案された場合、オークションのようにラウンド2のオファーを応募される。誰もからオファーを受けていない、もしくは中々売れない物件の場合は希望の価格より低いオファーを投げてみても良し(拒否される可能性があるので、理由も説明しておいた方が良い。例えば、キッチンがちょっと古いとかこのエリアの他の物件より高いとか。。)
5:オファーが受諾されたら、弁護士と契約→住宅ローンへの申し込む→物件のSurvey(調査)してもらう(何か問題がないか調査してくれる会社)。同時にできる。
6:弁護士と相談して手続きが終わるまで待つ。役8〜12週間ぐらいかかる一番長い段階なので、辛抱が必須。書類の提出も多いので、頻繁に弁護士さんと連絡を取るのがおすすめ。
7:頭金と弁護士の料金を払い、家の保険にも申し込んでおく。
8:契約書を交換する(Exchange of Contracts):←安心できる段階!
9:コンプリート(Completion):鍵を受け取って完成!おめでとう!
10:お引越し!レッツ・ゴー(笑)
私が実際に購入した物件の流れ
私が実際購入して鍵をもらうまで4ヶ月かかったけど、流れは大体こんな感じでした。
7月23日:物件探し開始して17軒ぐらい見て回りました。2軒にオファーを提案してみたんだけど、両方が断れちゃったんです。
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8月17日:購入物件決定!18軒目の物件が綺麗で安全な住宅街だったのでオファーを提案し、すぐに受け入れてくれました!
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8月20日:弁護士と契約(全部がオンラインでできました)
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8月21日〜9月3日:住宅ローンの申し込み。医師専用のブローカーが全てやってくれました。
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9月4日:物件調査(Survey)→エリアに詳しそうなローカル会社にしました。
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9月中旬〜12月18日:弁護士によって書類の手続き
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12月19日:頭金の振り込み、保険も申し込み
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12月20日:契約書交換とコンプリーション→鍵の受け取り
みんながクリスマスの前にコンプリートしたがっていたため弁護士たちがかなり焦っていたようだったけど、無事に完成できました!不動産から風に強いデカい傘、丈夫なトートバッグと記念写真も貰ったんでちょっとびっくりしちゃったけど、やはりイギリス人にとってコンプリーションって祝うべき日なんだなって改めて実感しました。物件購入ってめっちゃ時間がかかるし、ストレスも多いしね。
終わりに
いかがだったでしょうか?イギリスで物件を購入するのが色々複雑で説明しにくいことも多々あったけど、長居・永住を考えている方にとってはとても重要なことだと思います。短期滞在以外に賃貸ってイギリスではお金の無駄だとよく言われているし、購入は一応資産・投資にもなるので、5〜10年間ぐらいイギリスに住もうと考えている方にはぜひ検討して見てください!
もし質問があれば、できる範囲で何でもお答えしますので遠慮なくコメント欄で聞いてください(^^)