モキュメンタリー 3

翌日になり、娘は朝早く学校に行った。会社にも連絡を入れ、休みをもらえることになった。(有給あって良かった。)心からそう思えた。さおりに今日の病院のことは、正直に話すことにした。
「昨日のことを病院に相談に行こう。」
と私は話した。
「大袈裟じゃない?」
とさおりは言ったが、
「念のためだ」
と私は答えた。
「ついでに俺のことも相談できないかな。」
と私は言うとさおりは
「なんの相談?」
と言った。それに対して私は
「良い夢が見たい」
と答えた。さおりはすかさず
「どうせおっぱい触る夢でしょ」
と言うと私は
「今は尻だ」
と答えた。その後さおりは
「あなたのスマホiPhoneだっけ?」
と言った。何を言ってるのか分からず少し考えて
「それはSiriだ」
と答えた。皮肉な話だが、少しだけ昔に戻れた気がした。
 病院に着き、受付を済ませ、私たちは待合室で並んで座った。
「大変な病気だったらどうする?」
とさおりは急に言い始めた。彼女も不安になってきたのだろう。少し考えて私は
「使える制度を調べないとな」
と答えた。求められていた答えはこれじゃないことは分かっていたが、恥ずかしくて言えなかった。
「さおりさん〜。〇〇さおりさん〜」
ついに呼ばれた。診察室は白い壁と白い床に覆われていて、病院特有の何かの薬の匂いが少し漏れていた。誘導されるまま椅子に座り、医師の診察が始まった。最初にさおりからここ最近の自分の話をして、私から昨日の出来事を話した。その話を聞いた医師は
「さおりさんは認知症かと思われます。」
と言った。
「認知症?あれはお年寄りの病気でしょ。さおりはまだ40代ですよ。」
と私は言った。興奮してまくし立てるように話した私に対して、医師は
「若い人がなることがあります。名前はそのまま若年性認知症と言います。ただ若年性認知症も通常の認知症同様いくつかタイプに分かれています。症状も個人差があるので、こういう症状が出てきますとは一概には言えません。ただひとつ注意しなくてはいけないことがあります。それが症状の進行速度です。通常の認知症に比べてものすごく早いのが特徴です。なのでこれからの対応をしっかりと話し合っていきましょう。」
と言った。正直驚いた。本当に驚いた。空いた口が塞がらないって本当なんだなって心の底から思った。自分のことじゃ無いのにここまで驚いたんだ、本人はきっともっと驚いたろうと思い、さおりの方を見た。さおりも私と同様に口を開けたまま固まっていた。