ぬるいと、お腹を壊す

　トイレはぬるめの便座がいい。
　朝は炙ったパンでいい。
　しみじみ飲めば、しみじみとぉーおぉ。

　そんなふざけた替え歌を思い浮かべるボクの火曜の朝は、相変わらず冴えないはじまりだった。
　昨日から持ち越しのコーヒーをレンチンしている。不味いけど、勿体ないからそうする。とりあえず便秘とは無縁だ。丈夫に産んでくれて、ありがとうございます。
　コーヒーカップに口をつける。匂いだけは、一丁前。
　ＰＣのブラウザには、今日の話題が勝手に集まっている。有名人の結婚とゴシップと、ほんとかウソか分からない芸能ニュース。ボクがそんな物ばかりクリックするから、集まってくるのだろうか。でも画像と見出し文が上手く興味をそそるからしかたない。無料で自由で、周りに誰もいないと汚れていく。ボクは、そんなやつだ。
　ブラウザをスクロールすると商品広告と映画情報がやっと出てくる。本当は、こっちの方が上に来てほしい。でも好きなものほど吟味して、趣味に合わないものは触らない。好きだからこそ敏感なアンテナが、つまらないものを確実に取り除いていく。今飲んでいるコーヒーと同じ、上澄みを掬って日常を過ごし、好きなものはたまにしか口にしないから。

　別れた彼女に最後に言われたのは、「いいかげんにしてよ」だった。
　「その好い加減が分からないんだよ」と口をついて出そうになったけど、それ以上怒らせたくなくて、「うん」と返事をした。それっきり。
　
　彼女の好きに使えるように、節約した。彼女に面倒かけないように、部屋の物は最小に心がけていた。思い出だけあれば十分だったから。でも、それが彼女にはつまらなかったのかもしれない。怒らせないのと、笑わせるのは違うんだ。ボクは、キミに夢中だった。
　加減が分かる人の火曜日は贅沢に過ごすのだろうか。
　分からないボクは、とりあえず上澄みを掬う。
　週末は、映画に行こう。