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【スタッフヒストリー】成田明紀子 〜 余裕が持てずに苦しんだ過去を超え、美容師として届けたい価値 〜


*この記事はらふるWEBページからの転載です。

らふるには「くらしを紡ぎ、笑顔をつなぐ」というお店の理念のもと、様々な個性をもつスタッフが集まっています。このスタッフヒストリーでは、それぞれのメンバーのこれまでを振り返りながら、どんな想いをもって、らふるで働いているかを紹介します。

今回は、らふるが創業して間もない時期からのメンバーで、スタイリストの成田明紀子(なりたあきこ)のヒストリーです。

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別世界が広がる空間に心をつかまれて

はじめましての方も、いつもお店にお越しいただいている方も、ご覧いただきありがとうございます。成田です。

美容師として10年以上ハサミを持たせてもらっていますが、過去には「もう二度とハサミは握らないだろう」と、美容師を辞めた時期もありました。今回は、わたしのこれまでを振り返りながら、美容師として大切にしていることを書いてみました。

まずは、わたしがこの職業に惹かれたキッカケから紹介します。

わたしの出身は、秋田県北秋田市。田園が広がり、たくさんの山に囲まれた自然豊かな土地です。

中学2年生の時。それまでは母に髪を切ってもらっていましたが、おしゃれに少しずつ目覚めはじめたわたしは、はじめて近所の美容室に足を運びました。

男性の美容師がひとりで切り盛りしている小ぢんまりとしたお店です。鏡の隣に置かれたモニターにはヨーロッパ映画が静かな音で流れていたり、わたしの日常とは別世界が広がっていました。カットにも感動しましたが、そこで過ごす非現実的な時間に、わたしは魅了されたのです。

将来は美容師になって、美容室で働きたい。

気づけば、その想いが強くなっていきました。

もしかしたら、自分のお店を持つ未来もあるかもしれない。そう考え、高校は簿記など実業で役立つ知識を学べる商業高校に入学。高校3年間は、調査がてら、学校の近くにある美容室を巡るのが一番の楽しみでした。

高校卒業後は、迷うことなく岩手にある美容学校へ入学。美容学校を卒業した後は、秋田県内に複数の美容室を持つ会社への就職が決まりました。そこはヘアカットだけでなく、ネイル、まつげエクステなど、美容にまつわる様々なサービスを展開していることと、新人を育てる制度がしっかりしている点が魅力でした。美容師としての基礎となる技術や知識を身につけるには、もってこいの職場だと思ったのです。

振り返ってみると、中学生の頃から心に決めていた美容師という職業へ真っ直ぐに突き進んだ10代でした。わたしは、自分がこうだと決めたら、まわりになんと言われても曲げずに進んでいく性格なんだと思います。

いい言い方をすると「意志が強い」、悪い言い方をすると「頑固」。このわたしの性格は、最初の職場では、悪い方向へと転がってしまいました。

理想と現実のあいだで身も心もボロボロに…

最初の職場である秋田の美容室では、5年半ほど働きました。

美容師として基礎となる多くを学べた時間でしたが、退職時は身体も心もボロボロで、「もう二度とハサミは握らないだろう」と憔悴しきっていました。最後は、入院する事態にまで至ってしまい、まわりに大変な心配をかけました。

いま振り返ると、当時は自分の理想が高すぎたのかもしれません。

美容師としての経験豊富な先輩たちに囲まれ、たくさんの刺激を受け、「自分もこうありたい」という気持ちが強くなる一方、現実が理想に追いついていかないことに、気持ちが落ち込むことが多くありました。周りの人たちができていることが、なぜわたしにはできないのだろうかと、不器用な自分に悔しさを感じる日々でした。

わたしは美容師としてやっていくと、一直線に生きてきたので、変に自分にプレッシャーをかけすぎていたような気もします。美容師以外の自分として生きていく選択肢も見えていませんでした。その結果、心に余裕を持つことが、どうしてもできなかったのだと思います。

また、お恥ずかしい話、当時のわたしは生活習慣がめちゃくちゃでした。

特に食習慣。アシスタント時代はお金がなかったので、少しでも食費を浮かそうと思い、栄養バランスを完全に無視した食生活を送っていました。職場にめんつゆを持っていって、お昼は素麺ばかり食べてましたね(笑)。

そんな生活習慣の結果、自然と体調を崩しやすくなり、身体の調子が悪いと心も弱気になっていきます。まさに負のスパイラル…。心身ともに、どんどん塞ぎ込んでしまいました。

現在、わたしは食事などに気を使うようになりましたが、それはこの時に身を以て経験したことが大きいです。やっぱり、生活が整っていないと、身体も心も乱れていく。日々の暮らしの大切さを、心の底から痛感しました。

入院することになり、ある種、気持ちの面でも整理がつきました。ゼロから自分をやり直すつもりで、美容師という職から離れる決心がついたのでした。

もう一度ハサミを握りたいと思えるようになるまで

美容師を離れてからは、いろんな仕事を経験しました。

最初に就いたのは、秋田の観光ガイド用のスマートフォンアプリに掲載するデータを集める仕事です。県内の様々なスポットに足を運んで、写真撮影をしたり、詳しい現地情報を調べました。半年間限定の仕事でしたが、美容師の世界でずっと生きてきたわたしには新鮮でした。

その後は、コーヒーに興味があったので、カフェで働きはじめました。コーヒーの淹れ方やラテアートを学んだり、充実した時間を過ごしていました。

おそらく、美容師を離れてから、生活習慣を改善したこともあるのでしょう。気持ちも次第に前向きになってきました。

ある日、お店で皿洗いしている時にふと思ったのです。わたしは美容について学んできたのだから、その知識と経験を活かした仕事は何かできないかと。それで、カフェと掛け持ちでブライダルのヘアメイクの仕事もはじめました。

そんな風にして、美容師を離れて約1年半経った頃、プライベートで東京に住むことが決まりました。

実は、美容学校に通っている頃から、「一度、東京で美容師として働いてみたい」という憧れがありました。そして、ブライダルで美容に携わるうちに、「もう一度ハサミを握りたい」という思いがむくむくと湧き上がってきていました。せっかく東京に行くのなら、その憧れを実現するのも悪くない。そう思えるまでに、気持ちが回復していたのです。

しかし、就職は厳しい状況でした。東京の美容室を調べ、魅力を感じる美容室を巡り、採用に応募してみたのですが、思うように進みません。当時の年齢は27歳で、ブランクもあり、お客様もいない状態のわたしを雇ってくれる美容室はなかなか現れませんでした。

そんななか手を差し伸べてくれたのが、前の職場である代官山の美容室です。

たまたま人が退職する時期で、タイミングがよかったようです。そして、そこで出会ったのが、らふる代表の中村です。わたしが代官山の美容室に入ったのは、ちょうど中村が店長になった時でした。

美容師は、お客様の人生に寄り添うことができる

代官山の美容室では5年ほど働きましたが、本当に学ぶことばかりでした。

この美容室は「オーガニック」をコンセプトに掲げ、お店で使用するアイテムは、肌に優しかったり、環境を配慮したオーガニック製品にこだわっています。わたしも生活習慣を見直すなかで、オーガニックへの関心が高まっていったので、その姿勢に惹かれました。

お客様もスタッフも暮らしや環境への関心が高い人が多く、そんな環境で働いていると、自分の生活を自然と見つめ直すことができました。

また、以前に美容師として働いていた時と比べると、いい意味で力を抜いて働くことができました。カフェやブライダルなど違う仕事を経験することで、美容師として結果を出さないといけないという変なプレッシャーから解放されたのかもしれません。

心身ともに健やかに働くことができるなかで、美容師という仕事は、お客様の人生に寄り添うことのできる仕事だと気づくことができました。

長くお付き合いさせていただいているお客様とは、1〜2ヶ月に1回くらいの頻度でお会いします。わたし自身、家族や友人よりも、お客様と会う回数や時間のほうが長かったりします。また、長くお付き合いさせていただくと、結婚や出産などのイベントだったり、白髪や抜け毛などの身体の変化も、一緒に共有させていただくことになります。

お客様が年齢を重ねていくなかで、人生の節目や髪の変化を一緒に受け止めて、美容師としてサポートしていく。これが、わたしが美容師として提供したい価値だと改めて気づきました。

そして、その想いと、働いていた美容室の方針には少しギャップがありました。わたしはカットからお客様がお帰りになるまでの間、できる限りひとりのお客様に集中して携わりたいと思っていましたが、美容室としては分業を進めていく方針でした。効率面や教育面を考えると、カット以外の施術をアシスタントにまかせたほうがよいという分業の必要性も理解できます。しかし、ひとりのお客様と深く関わっていきたいと思うわたしとしては、自分の考えとお店の方針とのずれを感じていました。

そんな時、一緒に働いていた中村が独立し、オープンしたばかりの美容室の話を聞きました。そこでのお客様との向き合い方は、わたしが望むものでした。

こうして、まだオープンして間もない『らふる』で働くことになったのです。

気持ちを整える時間や場所があれば、それだけで救われる

いま、らふるで働いて約3年が経ちましたが、美容師としてありたい姿に少しずつ近づいている感覚があります。

きっと、多くの方が慌ただしい毎日を過ごされていると思います。身体も、心も、いろんな刺激を受けている状態でも、らふるに足を運んでくれた時は、それらを置いてもらって、リラックスした心地よい時間を過ごしてもらいたい。

そのために、美容にとどまらず、どんなコトやモノが必要なのかを日々考えるようになりました。

やっぱり、わたしの原点は中学生の時に地元の美容室で味わった非現実的な異空間なのだと思います。足を運ぶと、日常の自分から少し離れて、特別な気分を味わうことができる。そして、そんな美容室で自分に似合う髪型にしてもらえる。そんな美容室が、わたしの憧れでした。

また、忙しい日々の中でも、らふるに来たときには、リラックスしてほしいという想いの裏には、心に余裕が持てずに苦しんだ過去があるからかもしれません。

気持ちを整えることのできる時間や場所があれば、それだけで救われたりすることを、身をもって感じています。それだけで何かが解決するわけではありませんが、気持ちが楽になれば、いろんなことへの足取りもきっと軽やかになるはずです。

らふるでは「くらしを紡ぎ、笑顔をつなぐ」という言葉を理念に掲げています。

美容師という立場から、みなさんの暮らしを整え、人生に寄り添える存在になりたい。そんなことを思いながら、日々ハサミを握らせてもらってます。

編集協力:井手 桂司

【お知らせ】新店舗展開に伴いスタッフ募集中!

『らふる』は、「暮らしを紡ぎ、笑顔をつなぐ」を理念に「末長く楽しめる髪をあなたに」というビジョンを掲げています。

目標は100年続く美容室となること。

開業からここまで、「こうした方がより良いね」「こうした方がもっと楽しいね」と思うことに忠実に、物事全てをトップダウンで決めていくのではなく、みんなで意見を出し合い、話し合い、さまざまな変化をつけながら運営をしてきました。

この度の新店舗展開に伴い、互いに切磋琢磨し共に成長していける仲間を募集します。我こそは、と思う方。是非ご応募いただけますと幸いです。

【 応募要項 】

①スタイリスト

②アシスタント

詳しくは、コチラのWebページをご覧ください!

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中村拓郎(美容室 らふる代表)
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