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重なる。ピアス、と、ランジェリー

装飾品の類にも目がなくて、とりわけ耳に下げるものが好きだ。

なにをそんなに、と言われるかもしれないけど、熱心に集めていたことがある。色とりどりなのを持ち歩いては、人と会う前に付け替えたりして。



あるとき、ピアスをした女性を見かけた。地方都市の、少し良いホテル。

彼女、ターコイズのふわふわした羽のピアスを、ちいさくて綺麗な卵型の顔に下げて。

黒い髪をきゅっと、耳の下あたりでまとめて。無彩色の服。

遠景に見る彼女のハイヒールは、ピアスと同じ、ラムネみたいなブルーだった。


細身で、つるつるした小さいつくりの顔のその女性に、その色はとてもよく似合っていて、服や髪の色が無彩色なだけに、鮮やかに目に飛び込んできて。

すごくテクニカルなお洒落、やっぱりいいな、ってそう思って、その次の瞬間に、

わたしだったらでもきっと、ピアスはランジェリーと合わせるだろうって

どこかからそんな声が浮かんできて、ずっとそれについて考えていた。


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もしもピアスをランジェリーとあわせるのなら。

たとえばそう、普通に色を合わせたっていい。真っ白なランジェリーに、1ミリのパールがしゃらしゃらするピアスを下げて。もしもベージュを着るのなら、シャンパンのような金色のピアスもきっと、大人の肌の上で柔らかく光るだろう。月明かりの海みたいなグレイの石も、たしかどこかにあったはずだ。シルクが織り成すニュアンスカラーのスリップとよく似合う、きっと。

あるいは、モチーフを合わせたらどうだろう。

ちいさな花があしらわれてるランジェリーには、甘くなりすぎない、よく似た花の一粒ピアスを。黒のシャープな印象のランジェリーには、相似形の幾何学的なシェル。リボンは少しやりすぎだから、そのときは、シンプルにひらひらする布のピアスを持ってくるのがちょうどいいかもしれない。



”服を着るときは、いずれ誰かの前で脱ぐことを考えなくてはならない”

というのは誰の言葉だったか、忘れてしまったけど。

けど、服を脱いでも最後までのこるもの、最後まで自分が誰かを示すものがアクセサリーだとして、

最後のひとひら、ランジェリーを脱いでしまう一瞬前に、

大切な人や、自分の目に、ランジェリーとアクセサリーという”装い”が美しく映えたらどうだろう。

それはきっと、一日の終わりを少しだけ”よいもの”にしてくれたり、誰かにとっては不思議と忘れられない場面になったり。


そういうことが、あるかもしれない。ないかもしれない。

そんなことを考えながら遊ぶのは、楽しい。


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もしランジェリーとピアスを合わせて出かけたら、わたしはきっと自分にどきどきするだろう。

その夜なにも起こらなくても、約束が、あったとしても、なかったとしても。


だって大切なのは、可能性と秘密とが、手のうちに残されていること。そしてそれを自分でまったく分かって、楽しんでいること。

こっそりドロップを口の中で、転がすように。











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