ファイブフォース分析で市場の魅力度を測る方法【事業計画書の作り方⑤】
おはようございます、経営支援者の山西です。当noteでは、経営力強化につながる記事を毎週土曜日に投稿しています。
経営者の皆さん、市場の魅力度を知る方法をご存じでしょうか?
前回までは顧客を分類する方法についてお伝えしてきました。今回は分類したセグメントごとに、どのセグメントが魅力的なのかを知る方法をお伝えします。
市場の魅力度は"5つの力"で決まる
市場は、常に5つの力にさらされています。5つの力を持つのは、「Suppliers(売り手)」「Buyers(買い手)」「Potential Entrants(新規参入者)」「Substitutes(代替品)」「Industry Competitors(同業者)」です。
この5つの力が影響を及ぼしづらい市場が魅力的な市場と言えます。そして、この5つの力を分析するのが「ファイブフォース分析」です。
ファイブフォース分析は、マイケルポーター氏によって1980年に発表されました。同氏は、ポジショニング戦略の大家として知られています。ポジショニング戦略とは、ステークホルダーとの相対的な立ち位置を基に資源配分を考える方法です。
ファイブフォース分析は、発表されて以来、全世界で代表的なフレームワークとして活用され続けています。
5つの力①:売り手の交渉力(Barganing power of suppliers)
市場が需要と供給によって成り立っているのは言うまでもないでしょう。そのため、そのため、市場は「売り手(供給者)」の影響を受けます。
マイケルポーターは、この売り手の力のことを「Barganing power of suppliers」と呼んでいます。「Barganing」とは「交渉力」のことなので、要は、売り手の交渉力が市場に影響を及ぼすと言っている訳です。
サプライチェーンにおける川上の業者は、すべてこの売り手に該当します。例えば、製造業者であれば、鉄や部品の供給先は売り手になります。
そういった川上の業者である売り手の交渉力が高ければ、市場の魅力は低いと言えます。なぜなら、売り手の交渉力が高い場合、仕入コストが高くなり、自社の利鞘が確保できないからです。
5つの力②:買い手の交渉力(Barganing power of buyers)
市場を構成するもう1つの要素は「需要」です。つまり買い手の力が市場に影響を与えています。
買い手が欲しいものを提供しなければ購入してもらえないということを意味します。
市場規模は、買い手が欲する総量のことですが、この規模の大きさが、市場の魅力を決定付けます。
ただし、注意が必要です。「当社にとっての」市場規模が大きいことがひつようです。例えば、九州にあるラーメン店は、北海道の住民をターゲットにできません。あくまで、当社が提供できる範囲(商圏)内での市場規模を魅力度として使わなければいけません。
買い手がプロダクトを選択する基準は基本的に2つしかありません。
基準1:プロダクトに価値があるか
基準2:プロダクトに独自性(希少性)があるか
です。持っていても役に立たないものを売ろうとしても、買い手は買いません(基準1)し、価値があるものでも他の事業者がより安く売っている場合は、そのプロダクトが買われません(基準2)。
この2つの基準を満たすプロダクトの供給者がどれくらいいるかが市場の魅力度を決定付けます。価値や独自性のあるプロダクトを提供している事業者にとって買い手の交渉力は低くなります。
5つの力③:競合他社の脅威(Rivalry among existing firms)
市場は需要と供給の2者によって成り立ちますが、競合状況も需要と供給の関係性に影響を与えます。
繰り返しになりますが、需要があるプロダクトを提供していたとしても、競合他社が同様のプロダクトを提供している場合、モノが売れない訳です。そのため、プロダクトの「独自性」をいかに持つかが大切になってきます。他社と違うプロダクトを販売することで、比較されず、モノが売れるようになります。
また、市場内に競合他社がどの程度存在するのかによって、1社あたりの市場規模が変わってきます。市場全体の需要が大きくとも、競合他社が多い場合、1社あたりの取り分は小さくなってしまうため、プレーヤーの数も注視する必要があります。
以上のように、同業他社の数と浸透しているプロダクトの独自性が市場の魅力度に影響を与えます。
5つの力④:新規参入の脅威(Threat of new entrants)
現在、目に見える競合他社だけでなく、今後の新規参入してくる業者についても念頭に置く必要があります。
新規参入の脅威を確かめるためには、業界構造を知り、参入障壁を明確にする必要があります。参入障壁とは、他市場の企業が当該市場に新規参入する際に越えるべきハードルのことで、具体的には以下のようなものです。
・参入障壁①:法規制
法律が参入障壁になります。例えば、許可・資格が挙げられます。建設業で一定規模以上の受注が欲しい場合は建設業許可が必要ですし、税理士として開業するためには税理士資格が必要となります。参入障壁が高い市場は、既存プレーヤーにとって魅力的な市場と言えます。
・参入障壁②:独占・寡占状態
1社ないし数社の企業で市場を独占・寡占している場合は、そのこと自体が参入障壁になります。例えば、業界内でデファクトスタンダードとなっているものや、業界内で価格決定力を持っている企業がいる場合は、独占・寡占状態だと言えます。こういった独占・寡占市場の場合は、新規参入が難しく、既存企業にとっては魅力的な市場と言えます。
・参入障壁③:初期投資コスト
初期投資コストが大きい場合も参入障壁になります。例えば、製造業に新規参入する場合には大きな設備費用がかかる場合が多々あります。製造設備が1000万円するのであれば、少なくとも初期投資で1000万円はかかります。それだけの資金調達ができなければ、新規参入できないので、これが参入障壁になります。
5つの力⑤:代替品の脅威(Threat of substitute products or services)
競合他社ばかりに目を向けすぎていると、代替品に取って替わられてしまいます。
昔で言えば、馬に乗って移動していましたが、車に取って替わられました。速い馬を育てよう、体力のある馬を育てようと頑張っていても、突如として車という代替品に取って替わられた形です。
市場で提供している本質的な価値は何か?を明確にした上で、この本質的な価値を提供できる別のプロダクトは何か、という点をあぶりだす必要があります。
替えが効かないプロダクトを提供できる場合は、既存プレーヤーにとって魅力的な市場と言えます。
5つの力から市場の魅力度を測る
以上の5つの力から、市場の魅力度がおよそ分かります。事前に設定した市場セグメントごとに5つの力を洗い出し、市場の魅力度を明確にしてみましょう。
ただし、市場セグメントの選択(=ターゲティング)は市場の魅力度だけでは決められません。経営戦略を決めるタイミングで、自社とのシナジーや市場規模の大きさ等も検証する必要があります。
このタイミングでは、あくまで市場セグメント自体の魅力度を測るだけでOKです。
まとめ
次回予告
次回からは一旦事業計画の作り方から外れて、融資の正しい借り方・考え方について発信していきます。
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