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内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙 開幕!いろどりの中世宗教世界へ

国立西洋美術館に2015年~2020年にかけて寄贈された、中世ヨーロッパの装飾写本リーフを中心とする内藤コレクション。
今まで常設展のなかで少しずつ展示されてきたが、コレクションの全容を辿ることのできる企画展が2024年6月11日(火)より国立西洋美術館で開催されている。期間は8月25日(日)まで。


企画展入口

中世の修道院で作り続けられた彩飾写本。獣皮紙・インク・絵具など高価な材料を惜しみなく使って編まれた書物の世界のなかでは、現代ではその多くが失われてしまったゴシック~初期ルネサンスの芸術のあり方を辿ることができる。


内藤コレクションの聖書の多くはパリやオックスフォードといった神学の研究が盛んだった都市で制作されたものだ。

聖王ルイ伝の画家(マイエ?)(彩飾)『セント・オールバンズ聖書』零葉、フランス・パリ、1325年-50年


聖務日課(一日八回行われる典礼の形態)のための聖務日課書にも彩飾が施されてきた。


ベルベッロ・ダ・パヴィアないしその周辺(?)(彩飾)聖務日課書(もしくは典礼用詩編集)零葉、イタリア・フェラーラ(?)、1435-40年頃


左下には詩編の伝承上の作者であるダヴィデが祈りを捧げる姿が描かれている。植物が絡みつくような棒状の装飾も美しい。


代祷の画家(彩飾)祈祷書零葉、北ネーデルラント・おそらくレイデン、1500-30年頃

北方の地で流行した黄色い余白にトロンプ・ルイユ(だまし絵)風の装飾。左側に余白が大きく取られているのは既存の写本に挿入するためだったと思われる。

これまで内藤コレクションの展示はコロナ禍で行われてきたこともあり、まだ足を運べていない方も多いのではないだろうか。
聖書・世俗写本・時禱書などさまざまな形態の中世の彩飾写本150点以上が見られる展示は国内では貴重だ。
是非この機会に中世キリスト教美術の世界に触れてみてはいかがだろうか。


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