今日の読書『文明交錯』
こんなに興奮する読書は久しぶりだった。
読むのをやめられない。ページを繰る手が止まらない。
そういう中毒にも似た面白さを持った本に出会えるのは、私にとっては年に一回あるかないかである。
『文明交錯』はインカ帝国の君主であるアタワルパが「逆に」欧州を侵略する架空の歴史物語だ。
この小説はもともとローラン・ビネがジャレド・ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』に衝撃を受けた体験から構想が始まっている。
まさしくインカ帝国が滅んだ原因であるこの三つをアタワルパがどう克服したかというと……。なんとヴァイキングの時代の白人-先住民の接触まで遡ってすべてを反転させることとなる。
叙事詩、日記、口語、手紙。さまざまな語り口で手を変え品を変え繰り広げられる壮大な物語は爽快というか、むしろ痛快でさえある。
それにしても、「歴史のif」を描くとしたらこれほど精緻にプロットを組まなければならないとは……。本当に恐ろしい作家である。
ちなみにこの小説の原題は「Civilizations」で、かの名作ゲーム「Sid Meier's Civilization」から取られている。
モアイ、スパイ、核爆弾狂のガンジーなどなど……あのゲームで繰り広げられるトンデモ歴史のifが好きな歴史SLGプレイヤーには特に向いているはずなので、是非。