和泉式部二首
白露も夢もこの世もまぼろしもたとへて言へば久しかりけり
「朝になれば消えてしまう露も、目覚めれば消える夢も、人の命も、一瞬の幻さえも、離れてしまったあなたと私の、恋のあっけなさに比べれば、まだ『久しい』といえますわね」
無常の時間感覚に裏打ちされた痛烈な皮肉とうら悲しさをたたえたつぶやき。なによりも、流れるようなたたみかけるような上(かみ)の句が、全てを凝縮して「すべて儚い(はかない)わね」と見切った、彼女の透徹した眼差しを感じさせる。
もう一首。
暗きより暗き道にぞ入りぬべき はるかに照らせ山の端の月
暗い道を辿るように、救いのない無明の世界に生きている私に、山の端の月よ、はるか山の端からでも、慈悲の光を投げかけていただけませんでしょうか。業の深い女の持つ宿命でしょうか、せめて一筋の光明を。
人は、息が絶える日が来るまで、暗い無明長夜を一人で歩かねばならないのだ。