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おいてきたパンが「わたし」を思い出させてくれた
※今から5年以上前のできごとです。
子どもが0と3歳のときのお話。
久しぶりの健康診断
健康診断にでかけた
仕事を辞めてから、健康診断を受けることがなくなっていた
翌年に1年間だけ海外に行くことが決まっていた
1年間だけとはいえ、何かあるかもしれない
あっちで病気になったら、言葉の壁で絶対に困る
保険だってよくわかんないし、とにかく健康に一年過ごしたい
そんなわけで、久しぶりに健康診断を受けにいった
自治体が無料でやってくれるやつだ
私の住んでいるところでは、今は決められた期間内に都合のいい日、都合のよい病院を自分で予約して受けるシステムになっているようだが、当時は日時と場所が指定されていて合同で健康診断を行っていた
会場はバスで30分程度の距離
健康診断の時間は指定されているし、
トータルで3時間もあれば帰ってこられるだろう
夫に二人の子どもをお願いしてでかけた
うっきうきの道中
こんなにうきうきした気持ちで健康診断にでかけたことがあっただろうか
一人で歩けることが幸せで体も心も足どりも軽い
ちょっとスキップしてたと思う
バスの中では本を読んだ
私は読書が大好きだった
けれどなかなか読めていなかった
酔ったので辞めた
妊娠してから、出産したあとも今現在も
車酔いをするようになってしまった
それでも「ひとり」の開放感にひたって気分はよかった
ゾロゾロと移動する幸せ
会場について
集められた30代の男女が
まずここ、次はここ、
ここで脱いで、ここで着て
こっちにいって、あっちにいく
指示に従うだけでいいのもなんだか心地よかった
合間合間には本を読んだ
健康診断はあっという間に終わってしまった
本来喜ばしいことだ
素晴らしい流れ作業と分担だった
指示も的確だった
たまに必要書類を忘れた人がいたが
予備だってばっちり用意してあって
あちらの準備は万端だった
だからスムーズに終わった
もっとたらい回しにして
あっちこっち検査してほしかったくらいだった
さて帰ろう
コンビニでパンとカフェオレを
私は腹ぺこだった
健康診断と言えば朝食抜きだ
うっかり食べてきて血糖値が正確に測れなかったら大変だ
私はちゃんと食べなかった
だから腹ぺこだった
健康診断も終わったのだから
身体のことなんて考えないで好きなものを食べよう
コンビニで生クリームたっぷりの菓子パンを買った
甘い物にはコーヒーだ
私はカフェオレ派だ
コンビニのコーヒーはとってもおいしい
カップをセットしてボタンを押し
待っている間に
うきうきした気分はだんだんとしぼみ
「もう帰らなきゃな」と思った
バリバリ授乳中だし(授乳中に生クリームは・・・とか思っても今は言わないでほしい)
そろそろ下の子が泣くだろう
バスの時間も迫っていた
どうせ10分後くらいには次のバスが来るだろうけれど
なんだか急に、一刻も早く帰らなければならない
という気持ちになって焦っていた
カフェオレができあがると同時に
むんずと紙コップをつかみ
バス停まで走った
ギリギリで乗ったバスで
出発寸前のバスに滑り込んだ
はぁはぁいって心臓がドキドキしている
けれど、ものすごい安堵感
乗れて良かったとほっとして、
気がついた
私、パン持ってないじゃん
あんなにうきうきして買ったパン
もってないじゃん
脳内に映像が再生される
完全にコーヒーマシーンの横においたわ
いつも通りのわたし
急に懐かしさがこみ上げた
出産前の私はこんなんばっかりだった
いっつも慌てていて、忘れ物ばっかりで
大事なものをいろんなところにおいてきた
でもそんな出来事を明るく笑い話にして
友達に話した
もちろん反省もしていた
そして、そんな自分が嫌いじゃなかった
母になってから、自分のことを否定してばかりだった
母になる前、私は、ちゃんと自分のことが好きだった
自分の好きなものもたくさんあった
自分のだめなところも自覚していて
落ち込むこともあったけれど
反対に得意なことも自覚していた
パンを忘れて
「あ、いつも通りのわたしだ」と思った
私ってこういう人間だった
なのに、なんで「きちんとした母」になろうと
していたんだろう
なれると思っていたのだろう
「わたし」は「わたし」でいいのに
「わたし」のまま母をすればよかったんだ
おかえり
本来の自分を思い出して嬉しかった
「おかえり」って、自分を抱きしめたかった
ふふふってちょっとだけ声にでてた気もする
母になってから、私は失敗を恐れていた
全方位にピリピリしていた
許容範囲がめちゃくちゃに狭かった
自分のことも許せなかった
本来の自分を思い出して、
一気にいろんなことが許せるようになった
自分の好きなところも思い出した
帰り道、私はまたうきうきしていた
ちょっとスキップしてたと思う
「ただいま~!」と玄関を空ける
「おかえり~」と夫と上の子が答える
ねぇ、聞いてよ!!
私ね、生クリームたっぷりのおいっしそうなパン買ったの
そんでね・・・
ぎりっぎりでバスにすべりこんだの
と盛り気味にエピソードトークを展開した
ハイテンションな私に戸惑う夫を無視して
話し続けた
ちょっと泣いた
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この記事が、子育て中の方や自分らしさを見失いがちな方々の役に立つことを願っています。
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