薩摩女人追憶 第14話
「ひろしさん。ひろしさん。」
佳奈の声で目が覚めた。
部屋には朝の光が差し込んでいる。
「もう、10時ですよ。」
佳奈も今、目覚めたばかりらしい。
全裸のまま僕の顔をのぞき込んでいる。
僕は起き上がろうとした。
しかし体が動かない。
佳奈とのセックスで体力と精力を使い果たしてしまったようだ。
体が鉛のように重い。
10時はチェックアウトの時間だ。
佳奈は起き上がり、急いで服を身に着けた。
「私、11時から仕事なんです。これから家に帰って、着替えてきます。」
「それは大変ですね。佳奈さん、忙しいのですね。」
「もっとひろしさんと一緒にいたかったです。」
佳奈は名残惜しそうな表情だった。
「またお会いしましょうね。」
僕はまたこのホテルに泊まりたいと思った。
「今度はひろしさんを逝かせてみせますね。時間がないのでもう帰ります。では、またお会いしましょう。」
佳奈は慌ただしく部屋を出て行った。
ベッドを見ると情事の痕跡が生々しく残っていた。
乱れたシーツ。
枕元に散らばった髪の毛。
シーツの染みと抜け落ちた陰毛・・・
「・・・・いい女だった・・・・」
僕は佳奈の身体をもっと堪能したかった。
指宿での渚、昨夜の宏美と立て続けにセックスした後だったので、精液が尽き果て、佳奈のようないい女をじっくり味わえなかったことがとても心残りだった。
「チェックアウトの時間を過ぎている。急ごう!」
僕はやっとの思いで起き上がった。
荷物をまとめるとエレベーターでフロントに向かった。
チェックアウトを済ませ、タクシーで空港に向かった。
空港に着いたのは午前11時を少し過ぎた頃だった。
宏美のメモに書かれていたように、搭乗手続きのカウンターで係の女性に告げた。
「倉田宏美です。」
すぐに係の女性は搭乗手続きしてくれた。
僕はそのまま搭乗ゲートをくぐり、羽田行の搭乗口に向かった。
搭乗口近くのロビーで宏美を探したが、宏美の姿はなかった。
「11時45分羽田行、まもなく搭乗のご案内を始めます。ご搭乗のお客様は搭乗口からご搭乗ください。」
搭乗案内のアナウンスが流れた。
羽田行の乗客が次々に搭乗していく。
僕はロビーで宏美を待っていた。
宏美はなかなか来ない。
搭乗の最終案内があっても宏美の姿はなかった。
「宏美はどうしたのだろう?」
宏美のことが気になったが、しぶしぶ搭乗口から飛行機に乗り込んだ。
僕の座席は1-Aだった。
飛行機の一番前の窓側の席だ。
座席に座ると、近くにいた客室乗務員が声をかけてきた。
「ひろしさん、ご搭乗ありがとうございます。」
客室乗務員を見て僕は驚いた。
宏美だった。
「宏美さん、この飛行機の客室乗務員だったんですか?」
「はい、今日の私のフライトに合わせて、ひろしさんの航空券予約させていただきました。」
宏美はにっこり微笑んだ。
僕は客室乗務員の制服を着た宏美にうっとり見とれていた。
アップでまとめた髪、スレンダーな体にフィットしたスーツ、細く綺麗な足を包む黒いストッキング。
ホテルで見た宏美とはまた違った女性の魅力を放っていた。
宏美は客室全体を見渡しながら、マイクを手に取りアナウンスを始めた。
「皆さま、今日も日本航空552便、羽田行をご利用くださいましてありがとうございます。
この便の機長は山田秀樹、私は客室を担当いたします倉田宏美でございます。まもなく出発いたします。
シートベルトを腰の低い位置でしっかりとお締めください。羽田空港までの飛行時間は1時間50分を予定しております。ご利用の際は、お気軽に乗務員に声をおかけください。それでは、ごゆっくりおくつろぎください。」
その後、宏美は流暢な英語でアナウンスを始めた。
「Good morning, ladies and gentleman.
Welcome aboard Japan Airlines flight 552 to Haneda.
Your pilot today is Captain Hideki Yamada and my name is Hiromi Kurata, your senior cabin attendant on this flight.We are now ready for departure.
Please make sure that your seat belt is securely fastened.
Our flight time to Haneda Airport is expected to be 1hour and 50 minutes.
Your cabin attendants are looking forward to serving you.
We hope you will enjoy your flight with us.
Thank you. 」
宏美が英語でアナウンスする姿をうっとりしながら眺めていた。
アナウンスが終わると宏美は僕の正面に座った。
1-Aは一番前の座席なので、正面に客室乗務員用の座席がある。
離陸と着陸の時、客室乗務員はその座席に座ることになっている。
宏美はあえて僕の席座を自分の正面に指定したのだろう。
宏美は僕の正面に座り、微笑みながら僕を見つめている。
「搭乗ロビーで宏美さんを待っていたのですよ。」
「ごめんなさい。客室乗務員のこと秘密にして、びっくりさせたかったんです。」
宏美は悪戯っぽく笑った。
「宏美さんが客室乗務員だから、この席が予約できたんですか。」
「EFチケットと言って、航空会社社員とその家族が使える無料チケットがあるんです。ひろしさんが今使ってるチケットは、そのEFチケットなんですよ。」
「だから運賃はいらないんですね。でも、家族でもないのにそんな大切なチケット使ってくださってありがとうございます。」
「EFチケットならこれからいくらでも使ってくださいね。その代わり、私の望み叶えてくださいね。」
「宏美さんの望み?」
宏美は少し不満そうな顔をしている。
「ひろしさん、昨夜の約束忘れたんですか?」
そういえば宏美が昨夜航空機のチケットを予約した時、
「私の望みを叶えてほしい。」
と言っていたことを思い出した。
「覚えていますよ。宏美さんの望みとは何ですか?」
「私はこれから業務があるので後でメモでお伝えしますね。」
宏美は周りの乗客の視線を気にしていた。
客室乗務員の宏美と乗客である私が親しげに会話しているので、まわりの乗客の多くの視線が私と宏美に向けられていたのだ。
飛行機は離陸を始めた。
僕と宏美は向かい合って座っていた。
宏美は客席全体を見渡している。
宏美は今業務中なのだ。
時々僕に視線を向け、にっこり微笑んでくれた。
飛行機はどんどん高度を上げていく。
窓から桜島の噴火口が見えた。
その時だ!
ガタガタと飛行機が激しく揺れた。
乗客から悲鳴が上がるほどの激しい揺れだった。
宏美は落ち着いた表情で近くのマイクを手に取った。
「ただいま気流の関係で飛行機が揺れております。機体が大きく揺れる場合がございましても 安全な運航には全く支障はございませんのでご安心ください。」
宏美のアナウンスで飛行機の乗客は落ち着きを取り戻したようだ。
しばらく飛行機の揺れは続いた。
宏美は飛行機が揺れても表情は変わらないが、揺れる度に両足を少し広げて上体を支えようとしていた。
その時、スカートの奥が見えた。
黒いパンストの中に水色のパンティを履いていた。
宏美は僕の視線を感じたのか、両手でスカートの裾を抑えると恥ずかしそうにうつむいた。
「昨夜、宏美はすべてを見せてくれたのに・・・」
僕はそう思いながら、宏美のスカートから目を反らした。
飛行機が水平飛行になり、シートベルト着用のサインが消えた。
宏美は座席から立ち上がり業務を始めた。
ワゴンを押しながらおしぼりを乗客に配っている。
宏美は僕にも笑顔でおしぼりを渡してくれた。
おしぼりにメモが添えられていた。
「私の望みをお伝えますね。このフライトが終わったら、午後5時から私はオフになります。品川のプリンスホテルを予約しています。午後6時からお食事して、その後、朝までご一緒していただけますか?」
宏美に誘われて僕は嬉しかった。
今夜も宏美と一緒に食事ができる。
朝まで一緒ということは、今夜も宏美とセックスすることになるのだろう。
僕は鹿児島滞在の2泊3日で渚、佳奈、そして宏美と3人の女性とのセックスに明け暮れていた。
昨夜は、佳奈、宏美と立て続けに一晩中セックスしたので、かなり疲労が溜まっていた。
「今夜、宏美とセックスできる体力があるだろうか?」
僕は不安を感じながら窓の外の風景を眺めていた。
宏美はおしぼりを配り終えると、キャンディを配っていた。
僕の席にやって来た。
「キャンディいかがですか?」
宏美からキャンディを受け取った。
キャンディにもメモが添えてあった。
「今夜の私のお誘い、OKならキャンディをお口に入れてください。」
宏美が僕の顔を不安そうに見つめている。
僕は包み紙からキャンディを取り出し、口に入れた。
宏美はそれを見てにっこり微笑んだ。