真緒先生との出張先での情事 最終話 憧れの先生シリーズ 第6弾
真緒の手掛かりを探そうと、熊本市役所に向かった。
市役所の窓口に着いた。
「田中博と申します。今日、橘真緒が私との婚姻届けを提出したと思うのですが。」
窓口の女性が
「田中様ご本人ですね。今日、婚姻届けが出されていれば、婚姻届受理証明を発行できますよ」
僕は婚姻の事実を確かめたかった。
「婚姻届受理証明を発行してください。」
「田中様の身分証明書はありますか?」
僕はマイナンバーカードを提示した。
「了解いたしました。しばらくお待ちください。」
女性がパソコンに向かって手続きを始めた。
しばらくすると、証明書を僕に提示した。
「確かに、本日婚姻届けが出されています。田中博様と真緒様ですね」
僕は、証明書を受け取った。
自分と真緒の名前が記されていることを確認した。
真緒は本当に婚姻届けを提出したのだ。
僕はほっとした。
証明書に真緒の熊本の住所が書いてあった。
熊本市中央区黒髪2-40 城山ハイツ202とあった。
市役所を出てタクシーに乗った。
「中央区黒髪2-40城山ハイツまでお願いします。」
運転手は、カーナビで住所を確認し、
「黒髪の城山ハイツですね」
そう言うとエンジンをかけてハンドルを切った。
15分程で城山ハイツに到着した。
木造2階建てのかなり老朽化したアパートだ。
タクシーから降り、アパートの階段を上ると202号室に着いた。
ドアの前に郵便物が散乱していた。
そのほとんどが、債権者からの請求書だった。
202号室には生活の痕跡がなかった。
「真緒はここで生活していたのだろうか?」
部屋をノックした。
古いアパートにはチャイムが付いていなかった。
しばらくすると、隣の201号室のドアが開き白髪の老婆が現れた。
僕を見るなり、訝しげな表情で
「お兄さん、何か用かね。」
「202号室に訪ねてきたんですが・・・」
「202号室には誰も住んじょらんよ。」
「誰も住んでないのですか?」
「前からずっと空き家じゃったが、1年くらい前からたまに借金取りがドアをドンドン叩くんじゃ。うるそうて迷惑しとる。あんたも借金取りか?」
「いいえ、違います。ここの女性の夫です。」
「旦那さんかい?あんたも借金背負って大変ばい。」
老婆はそう言うと、ドアを閉めた。
ご主人が自殺してから、真緒が借金に苦しんでいることは知っていた。
しかし、真緒とスナックで出会ってから、借金のことは一言も聞いていなかった。
「真緒はこのアパートに住んでいなかったのだ。いったい、真緒は今どこにいるのだろう?。」
もうこれ以上、真緒の手掛かりを探す手立てはない。
とりあえず、鹿児島に帰ろうと思った。
その夜、新幹線で鹿児島に戻った。
鹿児島中央駅からアパートにタクシーで向かった。
アパートに着いた僕は、くたくたに疲れ果てていた。
「今日は真緒と結婚した記念すべき日なのに、真緒はいったいどこで何をし
ているのだろう?」
アパートから、真緒にLINE電話をかけてみた。
やっぱり電話に出ない。
僕はそのまま眠り込んでしまった。
目が覚めると朝になっていた。
「会社に行かなければ。」
僕は急いで身支度して、軽く朝食を摂った。
その時だ、
「ピンポーン」
チャイムが鳴った。
「真緒かな?」
僕は、急いで玄関のドアを開けた。
ドアの外には、真緒ではなく、サングラスにベージュのジャケットを着て、口ひげを生やした強面の男の姿があった。
「田中博さんですね。」
「・・・はい。」
「田中真緒さんのご主人ですね。」
「・・・・はい。」
「田中真緒さんの連帯保証人ですね。」
「・・・・・」
債権者だ。
僕の身体は、ガタガタと震えた。
完