薩摩女人追憶 第1話
僕の名前はひろし。
羽田発鹿児島行きの飛行機に乗っている。
2時間前、妻と正式に離婚した。
離婚を切り出したのは妻だった。
長年夫婦として連れ添った妻から突然離婚を突きつけらなど、予想もしなかった。
離婚届を提出した今も気持ちの整理がつかない。
僕は今年で55歳を迎える。
昨年から都立高校の校長をしている。
僕は高校教諭、教育委員会勤務、教頭、そして校長と仕事一筋に生きてきた。
家庭で過ごす時間は少なかった。
妻はそのことを理解してくれていると思っていた。
しかし、妻はずっと不満に感じていたようだ。
昨年4月校長に昇進すると、サッカーや野球の試合の応援や様々なイベントへの出席が増え、休日も家を空けることが多くなった。
ついに妻は我慢の限界を超えてしまったのだ。
3月のはじめ、妻が離婚したいと申し出てきた。
青天の霹靂だった。
妻が離婚を考えているなど全く考えてもいなかった。
妻にもう一度思いとどまるように説得した。
妻の意志は固かった。
離婚の日を4月1日と言い渡された。
4月1日の午前中、区役所に離婚届けを提出した。
そしてそのまま鹿児島行きの飛行機に乗ってしまったのだ。
4月はじめは入学式の準備で学校は一番忙しい時期だ。
しかし、離婚のショックで、仕事をする気力がなかった。
入学式まで東京から離れた場所で心の傷を癒したいと考えた。
行先はどこでも良かった。
とにかく東京を遠く離れたかった。
春休みの旅行シーズンで沖縄と北海道行きの飛行機は全便満席だった。
辛うじて鹿児島行きの飛行機に空席があった。
僕はそのまま鹿児島行きの飛行機に乗ってしまったのだ。
午後2時に鹿児島空港に到着した。
空港から教頭先生に電話した。
「教頭先生。急に体調が悪くなり、今日から入院することになりました。」
教頭先生の声は慌てていた。
「校長先生。どこがお悪いのですか? 病院はどちらでしょうか? これからすぐにお見舞いに伺います。」
「入学式までには退院しますので、心配しないでください。お見舞いは遠慮します。先生方が心配するといけないので、私の入院のことは内緒にしておいてください。」
教頭先生にそう伝えると電話を切った。
特に行先は決めていなかった。
空港を出てバス停に出ると指宿行きの特急バスが止まっていた。
そのままバスに乗り込んだ。
バスに揺られながらネットで指宿のホテルや旅館の空室状況を調べた。
春休みの旅行シーズンでどのホテルや旅館も満室だった。
一つだけ空室のある旅館を見つけた。
秀水館という旅館だ。
1泊2食で2万5千円と値段も手頃だ。
砂蒸し温泉の施設も整っている。
すぐにネットで予約を入れた。
2時間ほどでバスは指宿に着いた。
バス停を降りるとタクシーでホテルに向かった。
5分ほどで旅館に着き、チェックインを済ませ、仲居さんが部屋まで案内してくれた。
部屋は8畳の和室で、窓の外には海岸が見える。
旅館のすぐ下の海岸を見ると、首まで砂を被って寝ている人たちがいる。
「あれが有名な砂蒸し温泉ですか?」
僕が仲居さんに聞くと、
「そうですよ。当旅館自慢の砂蒸し温泉です。ぜひお入りになってください。」
仲居さんが部屋を出ていくと、すぐに僕は浴衣に着替えて砂蒸し温泉に向かった。
脱衣場は男女別に分かれていた。
脱衣場に入ると、砂蒸し温泉の入り方を説明する係の男性がいた。
「下着も脱いで、そこの浴衣に着替えてください。」
僕は下着を脱ぎ、全裸になると備え付けの浴衣を羽織った。
「その出口を出ると、砂蒸し温泉です。」
係の案内に従って出口を出ると砂蒸し温泉があった。
男女とも浴衣を着ているので混浴だ。
女性の脱衣場から浴衣を着た若い綺麗な女性が出て来た。
鹿児島出身の女優、宮脇咲良に似ている。
浴衣の胸元と裾を手でしっかり握っている。
この女性も浴衣の中は全裸なのだろう。
砂蒸し温泉には甚平姿の男がスコップを持って立っていた。
砂をかける「砂かけ係」だ。
「今、溝を掘りますから、しばらく待っていてください。」
砂かけ係の男は砂浜にスコップで溝を掘り始めた。
縦に並べて二つの溝を同時に掘っている。
大人が一人横になれるくらいの深さと巾だ。
僕とこの綺麗な女性はこの溝に並んで横に寝ることになるのだろう。
こんなに若くて綺麗な女性のすぐ横で、砂蒸し風呂に入れることに少し興奮していた。
浴衣の下半身がテントを張ったように盛り上がっている。
下半身は正直だ。
そっと手で押さえた。
手際よく溝が掘られると、
「ここに横になってください。」
砂かけ係の男が、僕と女性に指示した。
砂の溝に仰向けに寝た。
手に持っていた手拭いを枕のように頭の下に敷いた。
砂かけ係の男は、僕の身体にスコップで砂をかけていく。
あっという間に首から下が重い砂に覆われた。
砂の重みがずしんと体全体にのしかかってくる。
綺麗な若い女性はその一部始終を興味深げにじっと見守っていた。
「お姉さんもどうぞ。」
砂かけ係の男が女性に声をかけた。
女性は砂の溝に横になろうと溝に片足を入れた。
その時、強い海風にあおられて女性の浴衣の裾が乱れた。
一瞬白い太ももが露になった。
女性は慌てて裾を抑えた。
女性の白い太ももを見て、僕の下半身は再び興奮したが、重い砂に覆われてテントを張ることはなかった。
隣に女性が仰向けに寝た。
砂かけ係の男は女性の上半身に砂をかけていく。
再び強い海風が吹いた。
女性の浴衣の裾が風に煽られている。
白い太ももが丸出しになった。
僕の目線からも女性の白い太ももがはっきり見える。
海風はどんどん強くなり、女性の浴衣が腰まで煽られた。
太ももの奥の黒い陰毛が露になった。
若い女性は肌が白いので、黒い陰毛が鮮明に見えている。
陰毛の先が海風にあおられて揺れている。
女性の上半身は砂で覆われているので、裾に手を伸ばすことができない。
砂かけ係の男の視線は明らかに女性の太ももに向いている。
その目線に男特有の嫌らしさが溢れている。
ひょっとすると陰毛の奥の性器まで見えているかもしれない。
女性は恥かしさのあまり目を固く閉じている。
砂かけ係の男は女性の浴衣の裾を手で掴んだ。
女性の陰毛を凝視しながらゆっくり裾を整えている。
女性の陰毛は浴衣に包まれた。
男は浴衣の裾を押さえながら、ゆっくり下半身に砂をかけた。
女性の全身が完全に砂に覆われた。
女性はフーッとため息をついた。
そして、はみ噛むように首をすくめて微笑んだ。
その仕草が可憐だった。