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【百合OL】巨乳の先輩と貧乳の後輩。「episode7.“悩乳”女性と胸とコンプレックス」

episode7.“悩乳”女性と胸とコンプレックス


カフェの時計がゆっくりと針を進めていた。

気づけば、注文したコーヒーはすっかり冷めている。それでも、さりなと彩花は席を立つことなく、ゆるやかに会話を続けていた。

さ「……で、彩花ちゃんはどうなの?」

彩「えっ?」

ふいに話を振られ、彩花はきょとんとする。

さ「だからさ、恋愛の話。彩花ちゃんの過去の恋愛とか、興味あるなーって」

彩「え、いや、私、そういうのは……」

途端に言葉が詰まる。

彩「……あんまり経験ない?」

さ「……別に、そんなこと……」

彩花は曖昧に言葉を濁したが、さりなはじっと彼女の顔を見つめてくる。その視線が居心地悪くて、彩花はコーヒーカップを手に取り、無意味に揺らした。

彩「……男子校の人と付き合ったことは、一応ありますけど……」

さ「一応?」

彩「うまくいかなかったです」

短く言い切ると、さりなは少し考えるように頷いた。

さ「なんとなく、分かるかも」

彩「……え?」

さ「彩花ちゃん、男の人と一緒にいると疲れそうだもん」

彩「そ、そんなこと……」

さ「ほら、女子校育ちでしょ? ずっと女の子ばっかりの環境にいたから、男の人とどう接したらいいか分からなかったんじゃない?」

図星だった。

彩「……まあ、確かに。正直、居心地は良くなかったです」

さ「だよねー」

さりなはくすっと笑いながら、マグカップに手を添える。

さ「じゃあさ、女の子とはどうなの?」

彩「え?」

さ「好きになったことある?」

彩「っ……」

彩花は言葉を失った。

さ「えー、なんで黙るの?」

彩「……なんでそんなこと聞くんですか」

さ「興味あるから」

さらっと言われて、彩花はどう返せばいいのか分からなくなる。

彩「別に……そういうの、考えたことないですし……」

さ「へぇ」

さりなが意味ありげに微笑む。

彩「な、なんですか、その顔」

さ「ううん。可愛いなーって思って」

彩「……っ、もう……!」

赤くなった彩花はカップに口をつけ、冷めきったコーヒーを無理やり飲み干した。


しばらく沈黙が続いたあと、彩花は小さくため息をついた。

彩「……私、コンプレックスがあって」

さ「コンプレックス?」

彩「胸、です」

その言葉に、さりなが少し目を見開いた。

さ「……え、なんで?」

彩「なんでって、そりゃ、小さいからですよ」

彩花はさりなの胸元をさりげなく見下ろし、苦笑する。

彩「高校のときとか、友達がみんな成長していくのに、私は全然で……ずっと気にしてました」

さ「ふぅん……」

さりなは何か考えるように彩花を眺めた。

さ「別に、小さいのが悪いわけじゃないでしょ?」

彩「でも、女性らしくないっていうか……」

彩花は言いかけて、目の前のさりなを見た。

さりなは、自分とは正反対の体型をしている。長身でスタイルが良くて、何より――巨乳。

彩「……北沢主任みたいな人を見ると、やっぱり違うなって思うんですよ」

さ「私みたいな?」

彩「……スタイルが良くて、胸も大きくて、女性らしくて……」

さ「へぇ」

さりながゆっくりと頬杖をつき、ニヤリと笑う。

さ「もしかして、私のこと、そういう目で見てる?」

彩「はぁ!? ち、違います!!」

さ「ふふっ、冗談だよ」

彩「もう……!」

彩花は真っ赤になりながらそっぽを向いた。

さ「でもね、彩花ちゃん」

さりなはカップを手に取り、ゆっくりと口元に運びながら、静かに言った。

さ「私は、彩花ちゃんのこと、すごく可愛いと思うよ?」

彩「……っ」

彩花は顔が熱くなるのを感じた。

この人は、どうしてこんなに簡単に恥ずかしいことを言うんだろう――。


(第8話へ続く)

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