母「レオナがリングの上で死んでも構わないです」 レオナ物語 其の二(加藤美香編)
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LARA column series.1
レオナ物語~“泣き虫”加藤玲於奈が “石の拳”レオナ・ペタスに至るまで~ 其の二(加藤美香編)
「レオナがリングの上で死んでも構わないです」
絶句した。レオナ・ペタス最愛の人、母、加藤美香は、いつものようにニコニコしながら、特に感情を崩すことなくそう言い放った。誰よりも家族を愛し、家族から愛される彼女が確かに。
「レオナ君が試合中、リング渦で命を落としてもいいと言われましたか?」
訊き返した。
「だって仕方ないじゃないですか。自分が選んで踏み込んだ道。一番好きなところで逝けるなら、それもある種の幸せかもしれませんよね」
キックボクシングをはじめ30年以上リングスポーツを追ってきたが、選手の家族が闘う彼の死を厭わないなど初めて聞いたし、今後も耳にすることはないのではないか。
心臓がビクつくほどの驚きの理由は、もう一点。美香さんは、約5年前に発病したガンの闘病中で、手術と治療と再発を繰り返し、現在、緩和治療(※1)に至っている。レオナが事あるごとにインタビューなどで「僕には時間がない」と言う理由はここにある。
「なんか身体の調子が悪いなって検査に行ったらガンでした。ステージ4だと。最初の病院だと患部が大きくなり過ぎて手術ができないって。だから、有名な有明病院(※2)に言って手術してもらって。それが半年で転移が見つかって再手術。一旦は良くなって仕事にも復帰できたのですが、2年後、3度目の手術で今に至ります。もう手術はできない具合で、抗ガン剤も体調が悪くなる割に効果が見込めなくなって止めました」
2019年9月16日、レオナが満を持して巻いたチャンピオンベルトは、本人の次に迷うことなく美香さんの手に渡された。ずっと前からそう決めていた。
「ベルトを持った瞬間、後ろにひっくり返りそうになって。思ったよりも遥かに重くって(笑)」
小さな美香さんは、ベルトを肩にかけることも腰に巻くこともできなかったが、それはそれは大切に両の腕でしかと持って記念撮影に収まった。KRUSHのベルトは、比較的大型で重量がある。おそらくは3kgもあるだろうか。奇しくもレオナの出生体重は3415g。生まれたてのレオナを抱いた美香さんは、27年後、後楽園ホールの白く輝くリングの上で、レオナの分身たる物を誕生直後、手にすることとなったのだ。
「超難産でした。3日かかりました。そのあと全員年子で4人産んだんですけど、断トツに一番大変で」
今でこそ稼業の工務店(株式会社壱/タイル・防水工事)は軌道に乗り余裕もできたが、母父ともに19歳で長男を産んだ加藤夫妻の苦労は相当なものだったことだろう。長男・玲於奈(れおな)、次男・彪佑奈(ひゅうな)、長女・麟鳳奈(りほな)、三男・虎於奈(こおな)。1992年、93年、94年、95年生まれ。ライオンとヒョウとキリンとトラの兄弟は、常に大喧嘩しながら賑やかに健やかに育った。
「今思うと1歳児で機関車トーマスではなく仮面ライダーとか“戦い”系にいってましたね。とにかく毎日兄弟喧嘩しながら凄い鍛えられていたのかも(笑)」
年子の弟妹が3人も連なる長男は、忙しく働きながら育児に励む母親に満足いくまで甘えることもできないで、下の子たちを時には激しく、主だって優しく育てることに一役買わねばならず、自然としっかり者になっていった。
「それにしても天然。『空気を読まない』というか、思ったことを思った時に言う頑固者。レオナと一緒になる女性は大変ですよ。そうはいない変わり者ですから(笑)」
語る美香さん自身が只者ではないことはまったく無自覚のようだ。
次男と長女が家庭を持ち、孫も生まれ、それぞれ独立して手もかからなくなった。いつでもワイワイしていた約20年が嘘のように静かにはなったのは、美香さんにとって僥倖ではないだろう。
「レオナの試合には、絶対家族全員が集まるんです。一家集合する機会なんて、もうそれくらいしかないかもしれませんね(笑)」
初見から「なんて素敵な女性だろう」と感心したことを強く覚えている。後姿は小学生高学年女子に見間違うほど小柄で、幼い可愛さがずっと残っている。年齢の割に色黒で皺が深いのは、現場仕事をし続けているからだと言われていた。隣りに座って観戦し、レオナが快勝して歓喜の握手を交わした時、それが固く毛羽立っていることに気付いた。工事の薬品を扱っているうちにそうなってしまうのだとか。「世界で一番美しい手」だと素直に感じた。
一緒にいると気付けばビールとおつまみを差し出し、僕らだけでなく、レオナを応援する皆に気をやって甲斐甲斐しく動き続けている。微笑みがキラキラと眩しく輝く。レオナが最も大切にする人は、皆から愛され、それを全身に受けとめて返している。
この物語を綴るにあたり最重要人物の美香さんは、何でも屈託なく答えてくれるが、ひとつだけ注文をされた。
「インターネットとかで大勢の人が目にするなら少しだけ真剣になって聞いてください。私は20代の定期健診で一度『ガンの疑いあり要再検診』と言われながら、身体に異変なく暇もないのでずっと無視してしまいました。40歳を過ぎて辛くなって調べてみたら大変なことになってしまった。『精密検査を受けていれば』と後悔してもあとの祭りです。市区町村で年に一度は無料に近い値段で受けられます。どうか皆、定期検診を受けて、疑わしければ徹底して調べてください」
聞かねばいけない言葉とやらなければならない事は、どんなに多忙だろうがあるものだ。
そして、レオナと美香さん。最高のファンである彼女は、彼にどこまでを望むのか?
「命をかけてやっているんですから、一番になってほしいです。レオナの舞台はK-1なわけで、なら階級も同じの武尊選手がその象徴ですよね。またやっても(※3)もう勝てる相手じゃないかもしれない。だけど絶対なんかないから、諦めないで何度でもチャレンジして勝ってほしい。お母さん、ずっと応援しているから!」
そう、絶対なんかない。加藤美香は、いつまでもレオナ・ペタスを温かく励まし続ける。
2019年10月30日 其の二 了
注:加藤美香の病状については、本人の承諾を得て掲載。
※1 緩和治療は、病気のあらゆる段階で、症状、痛み、身体的ストレス、精神的ストレスを和らげることに焦点を当て、個人とその家族の両方の生活の質を向上させることを目的とする。
※2 公益財団法人がん研究会有明病院は、東京都江東区有明にある医療機関。通称、がん研有明病院。日本有数のガン専門病院で緩和ケア病棟もある。
※3 レオナ・ペタスと武尊は、プロデビュー前、新空手道選手権で2度対戦し1勝1敗と星を分けあっている。
レオナ・ペタスのプロフィール
リングネーム:レオナ・ペタス
英語名:Leona Pettas
本名:加藤 玲於奈(かとう れおな)
所属:THE SPIRIT GYM TEAM TOP ZEROS/LARA TOKYO(短称:LARA-TSG TEAM TOP ZEROS)
生年月日:1992年4月29日
出身地:埼玉県入間市
身長:175cm
血液型:A
戦型:オーソドックス・ファイタータイプ
得意技:右ストレート
プロデビュー年月日:2012年6月17日
戦績:31戦25勝(10KO)5敗1分
プロステータス:第9代K-1 KRUSH FIGHTスーパーフェザー級王者、2016年英雄伝説アジア60kg級トーナメント優勝
アマステータス:第210回新空手道東京大会K-2トーナメント軽量級優勝(2011年)、第5回J-NETWORKアマチュア全日本選手権Aリーグフェザー級優勝(2011年)
キャッチコピー:石の拳
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