聖子ちゃんはtheyを奴らと訳せと言った
「私、松田聖子と同じ年に結婚して離婚して再婚してるのよ。
聖子ちゃんとライフサイクルが同じなのね。」
前期とは打って変わって
まじめに勉強をし
それなりの成績で良い評定が出そうだなと
思っていた頃
ひとつの大きな出会いがあった
その人は英語の外部講師の聖子ちゃん
知性美が溢れるような見た目
歯に絹を着せぬ物言いでありつつ
ユーモアたっぷりの話しを聞かせてくれ
「出会ってから半年過ぎても手を握らない」彼氏はぶっ飛ばしそうな人だった
この講義の時間を私は楽しみにしていた
聖子ちゃんの講義という名のコンサートは
参加型のなので
私は声援を飛ばずように
よく発言していた
聖子ちゃんは
キテ◯ツ大百科のオープニングテーマで
ミヨちゃんに
キャベツを刻む事まで求める男児が
気に食わないと
テレビ局に電話で抗議をするなど
今まで出会った事のない
パワフルかつ
しっかりと自分軸を持った聖子ちゃんだった
彼女の武器は嘘泣きではなく言葉だった
ある時聖子ちゃんが廊下ですれ違いざまに
声をかけてくれた
「レナさん◯◯県の出身なのね。
私の夫もそうなのよ!
ところで最近どんな本を読んでるの?」
嬉々として聖子ちゃんは尋ねてきた
「村上龍のピアッシングです」
おいおい
なんで学術書のひとつも読んでないんだよ
今なら自分にそう突っ込む
「ああ!ピアッシングね!
よかったら連絡先交換しない?」
聖子ちゃんは破顔してそう言ってくれた
あんなに興味深くて
おもしろい講義をする聖子ちゃんと
連絡先を交換できるなんて
びっくりするほど
嬉しかった
ファンレター送ろうかな…
聖子ちゃんからメールで
ディナーショーよろしく勉強会のお誘いを受けた
そこには大学教授や
社会人経験のある大学院生と聖子ちゃんの
3人がいて
1冊の学術書について討論するのが
目的だった
私もその本は読んだことがあったので
初回はほぼ聞き役だったが
とても充実した時間を過ごした
2時間ほど討論した後
ちょっと素敵な居酒屋に行き
コース料理を堪能した
「実はこっちがこの集まりの
本題なのかもね!」と
聖子ちゃんはいたずらっ子みたいな顔をして
ワイングラスを持っていた
その瞬間私の脳内には
SWEET MEMORIESが流れたのは言うまでもない
自分が学びたい事を
いろんな人生経験を持った人たちと
討論できる
そしてなにより
その輪の中に入れてもらえた
若干コミュ障の私に
そんな学ぶ幸せを教えてくれたのは
聖子ちゃんだった
赤いスイートピーの花束を
送りたいくらい感謝している
聖子ちゃんのお連れ合いが
私と同じ出身地という偶然
それだけで出会いはどんどん広がるんだなと
しみじみ思った
学ぶ楽しさを知るきっかけをくれた人
theyは奴らと訳させた彼女
のちに聖子ちゃんは
夏の扉という名の
私の学び直しのキッカケを作る事になる