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JAXAの実験結果が『シン・エヴァ』に追いつきそうで凄い。加持リョウジの願いだった「方舟」は自然界に存在する?

※この記事は、一部『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のネタバレを含みます。

1 たんぽぽの綿毛型ユニットは宇宙へ向かう

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では、空中戦艦ヴンダーは2つの顔を持つと明かされる。ひとつは「命を救う戦闘艦」、もうひとつが「命を残す方舟」。方舟として機能するのが、ヴンダーに搭載された「種子保管ユニット」だ。

元々これは加持リョウジが考案した装置で、自らが育てていたスイカなど、様々な生命を保存している。詳しい説明はなかったが、植物の場合は種子、動物の場合は冷凍した肉体かDNAが中にあるのだろう。

※作中のセリフでは、「人類という種の存続は大した問題ではない」と言われていた。だから、人類が保存されているかどうかは微妙だ。

加持の意思を受け継ぐ葛城ミサトは、最終決戦の前、種子保管ユニットを宇宙へ放った。これで人類補完計画が発動しても、中身が巻き添えになることはない。ヴンダーから離れたユニットは、細長く、たんぽぽの綿毛のような形をしていた。

生命が故郷の星を離れて生き延びるというのは、SFだけの話ではない。実は、地球上の最初の生命は別の惑星からやってきたかもしれないという研究結果がある。それは、国際宇宙ステーションで行われた「たんぽぽ計画」と呼ばれる実験だ。

2 地球人は火星人?

たんぽぽ計画という名前は、たんぽぽの種が綿毛の力で風に乗り、新天地で根を下ろすというイメージからつけられた。

JAXAと東京薬科大学を中心とした研究チームは、極限環境微生物(デイノコッカス・ラジオデュランス)を国際宇宙ステーションの船外へ持っていった。そして3年間、太陽から降り注ぐ放射線にさらし続け、生存できるのか調べた。

実験の結果、微生物を集めて塊状にすれば、宇宙空間でも数年〜数十年生きられると判明した。塊の外側部分が放射線を遮る盾になるのだ。なお、塊状でなくとも、小惑星や彗星のような岩石の中にいれば生存可能と考えられている。

微生物の塊や岩石は、地上の火山活動、台風、あるいは大気中の放電現象によって、宇宙空間へ出ることができる(『生命はいつ、どこで、どのように生まれたのか』山岸明彦/集英社インターナショナル)。偶然それが火星で起こって、地球へ向かう軌道に乗ったとしたら、最短数ヶ月で辿り着く。

未だ生命の起原は分からないことだらけ。そもそも地球で生まれたかどうかも不明だ。だから研究チームは、2020年8月の論文で、地球最初の生物は火星で誕生した可能性もあると指摘した。そこから生命の進化がはじまって、今の生態系を形作ったのなら……。「命を残す方舟」が自然界に存在していたと言えそうだ。

3 『シン・』以降の未来

エヴァに話を戻せば、第2使徒リリスも小惑星に乗って宇宙からやってきた生物だ(ファースト・インパクト)。そしてリリスの肉体は、数十億年もの間、生命の源となるL.C.Lを流し続ける。

作中、L.C.Lは「生命のスープ」と説明されるが、これも現実を反映している。地球上の生命の分子組成をみると、水が70%、タンパク質が15%を占める。あらゆる生命は、「スープ(タンパク質水溶液)の入った革袋」なのだ(前出、『生命はいつ、どこで、どのように生まれたのか』)。

エヴァの世界では、JAXAが解き明かそうとした生命の起源が、箱根の地下に眠っていた。あんな巨大な異星人がご先祖様だと判明したときは、相当驚いたはずだ。

地球生命を守るため、加持は科学の力で方舟を作り上げた。それが別の惑星に着陸したとしたら、生き延びた動植物が新たな生態系を築くだろう。

そして長い年月をかけて進化は続き、再び知的生命が生まれるかもしれない。もし、彼らが自分たちの祖先を知ったとしたら、どう思うだろうか。

さらに渚カヲルみたいな美少年が現れ、「また会えたね」なんて優しく声をかけてきたとしたら……! そんなエヴァの続きを考えだすと、いくらでも妄想が広がってしまいそうだ。

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