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科学考察『シン・ウルトラマン』侵略者・ザラブのはどうやって地球を見つけたのか?
1966年初代ウルトラマンのリブート作品『シン・ウルトラマン』がAmazon Primeで絶賛配信中。今作では巨大生物・禍威獣と、ザラブ、メフィラスら外星人が日本へ襲来。迎え撃つのが禍威獣特設対策室専従班(禍特対)とウルトラマンです。
サブスク解禁の今、注目すべきはザラブのある台詞。そこから彼の人類絶滅計画を考察します!
庵野秀明の推しはザラブ
『シン・ゴジラ』の庵野秀明と樋口真嗣による最新作『シン・ウルトラマン』。興行収入44億円の大ヒットとなりました。
ウルトラマンに変身する斉藤工もさることながら、「私の好きな言葉です」の名言を残したメフィラス(山本耕史)が人気を呼びました。でも、もう一人の侵略者・ザラブ(声:津田健次郎)も忘れないでほしい!
ザラブは初代ウルトラマンの敵キャラ。かつて庵野秀明は「ザラブ星人が一番好き」と語っていました。
「ウルトラマンと逆の思想を持って、そこにある知的生命を滅ぼすために仕事でやって来ている。ああ、そういう逆のことする人たちも宇宙にはいるんだっていうのが、すごくよかった」
今作のザラブは超怖いことをサラっと言ってのけるヤツです。曰く、「マーカーを発見次第、その惑星に在住する知的生命体を無条件に絶滅させる。それが私の仕事だ」とのこと。
どうやら彼は地球に知的生命体がいる痕跡を見つけていたようでした。でも、我々のいる天の川銀河には170億個以上の岩石惑星があります。そんな中からどうやって知的生命体のいる惑星を発見したのか? ザラブの情報戦略を考察しました。
人類の居所はバレバレ
ヒントになるのが、異星人との交流を描く1997年のSF映画『コンタクト』。作中、異星人が地球から飛んできたテレビの電波を受信し、太陽系に知的生命体がいると気づきます。
実は、人類が発した電波は宇宙へ漏れ出ているのです。テレビ電波はラジオに比べて高周波で、より遠くへ届きます。史上初の大規模なテレビ放送は1936年のベルリン五輪の中継。電波の進む速度は光と同じなので、2022年現在、中継映像は86光年先へ到達しています。『コンタクト』の異星人が受信したのはこの電波でした。
世界中に「SETI」(地球外知的生命体探索)の研究者がいます。彼らは、もし他所の星の文明を見つけるなら、その痕跡(研究者は「マーカー」と呼ぶ)として有力なのは電波だと言います。
先述のザラブの台詞にもマーカーという単語があります。つまり、ザラブもテレビ電波を受信して情報を得ていた。そんな設定だと考察できるのです(あと、彼が人類の政治にやたら詳しいという点も説明がつきます)。
迫りくる包囲網
円谷プロ監修の『ウルトラマン大辞典』(中経出版)に気になる記述があります。
「文明を滅亡させることが彼らザラブの使命であり、同様の工作員は他の惑星にも派遣されている」
これは厄介。ザラブを倒しても、第二のザラブが現れるかもしれません。
彼らはどこから来るのでしょうか。『ウルトラマン大辞典』によるとザラブの故郷は「第8銀河系ザラブ星」です。
他所の銀河となると、地球から数百万光年は離れていると考えられます。『シン・ウルトラマン』の劇中世界が2022年だとすると、テレビ電波を受信できるのは地球から86光年以内。ザラブの母星からは傍受できません。
それでは、たまたまザラブがこの86光年エリアを通りがかって受信した、ということでしょうか?
いや、電波は進むにつれて減衰します。地球外でテレビ電波を受信するには巨大な観測施設が必要です。米国の天文学者セス・ショスタクは、多数のパラボラアンテナを2.5万㎢の敷地に並べて繋げれば、地球のテレビ電波を数百光年彼方から傍受できると言います(『彼らはどこにいるのか?』キース・クーパー/河出書房新社)。
調べてみると、2.5万㎢は関東平野よりも広い面積です! ザラブはそんな施設をあちこちの銀河に築き、常時監視しているのでしょう。
外星人からすれば86光年は目と鼻の先。包囲網はすぐそこまで迫っているのかもしれません。
でもまあ、ウルトラマンがいれば地球は安全。きっと守ってくれるはず……
って本当にそれでいいの?!
ウルトラマンから自立する人類
映画の後半、ウルトラマンを凌ぐ強敵が現れます。人類も全く太刀打ちできません。
「このまま何もせず何も知らないまま終わるというのが一番の幸せか」
禍特対に漂う、諦めムード。
しかしクライマックスで、ある男が立ち上がります。決戦に挑むべく知力を振り絞り、彼は全世界を巻き込む計画のリーダーになるのでした。
人類が一致団結し、敵を倒す解を見つける。この展開、映画『シン・ゴジラ』のヤシオリ作戦を彷彿とさせます。
また、奔走する禍特対の姿は初代ウルトラマン最終回の名台詞と重なります。
「地球の平和は人間の手で掴み取ることに価値がある」
これぞ、全ウルトラマンシリーズに共通するメッセージです。『シン・ウルトラマン』では観る者にどう訴えかけられるのか。配信、要チェックです!