#53 新人に期待しすぎていませんか?
最近、同じ世代の人から同じような悩み相談がありました。
「最近の新人は優秀で仕事の覚えも早いのに、いざリーダーを任せようとすると問題が起きる」
人事として、最近の新人は優秀と言われるのは嬉しい限りですが、違う部署の人から同じような悩みを聞いたので、もう少し詳しくきいてみました。
曰く、「能力も高く、言われたことはちゃんとできる。」
1年間、経験を積んで仕事も覚えたようなので、上司としてはもう仕事を任せても大丈夫だと判断したのだそうです。
ところが、いざリーダーを任せるとフリーズしてしまい、仕事が滞ってしまう……。ということでした。
そこで、今回は「なぜ優秀な新人に仕事を任せるとうまくいかないのか」について話をします。
1.理由は「全体像がイメージできないから」
なぜ優秀な新人に仕事を任せるとうまくいかないのか。
それは、まだ仕事の全体像を把握していないにもかかわらず、「言われたことは完璧にこなせる」新人に対して期待しすぎているからかもしれません。
仕事のリーダーを任せるためには、それなりに知識と経験が必要です。
しかし、こちらの想定以上に様々な仕事ができる新人の姿を見て、「この新人は何でもできる」と早々に色んな仕事を任せていないでしょうか。
もう一度、これまでの新人にお願いしていた仕事内容を振り返り、彼もしくは彼女にリーダーを任せるだけの知識と経験があるか考えてみてください。
ちょっと勘違いしてたかも…という人も出てくるはずです。
2.勘違いの原因は情報環境の変化
勘違いの背景にあるのは、インターネットの普及による、情報環境の変化
今は、仕事に必要な情報をスマホですぐ手に入れることができます。
上司からの指示や、仕事に必要なさまざまな情報も、メール履歴や社内のデータベースから知ることができますよね。
こうした情報環境を新人はうまく活用することで、一昔前だと考えられないくらいのスピードと的確さで仕事をこなせるようになっています。
このこと自体は素晴らしいことです。
ただし、これはあくまで「一つひとつの作業を、上司の指示に従って的確にこなす」ことができるに過ぎません。
仕事の全体像を把握して、リーダーシップを発揮するには、やはり、知識と経験が必要です。
指示をされたことは的確にこなすし、ミスも少ない。
当然、上司から見ると十分に仕事を覚えたように見える。
ところが新人は、個別の作業をこなしているだけで、実は仕事の全体像をまだ把握してません。
上司はよかれと思って「そろそろ、リーダーを任せてみるか」と仕事を任せようとしますが、部下は「自分はまだ半人前なのに、次から次へと仕事を振られたうえに、放ったらかしにされた」と感じてしまうこともあります。
同じようなことが、多くの会社で起きているのではないでしょうか。
3.一人前になるための壁
新人が一人前になるためにはいくつかの段階があると私は考えています。
もちろん、一つひとつの作業をこなすのも一つの段階です。
ただ、仕事がこなせるようになってすぐに、リーダーとして他の人を引っ張っているのはなかなか骨が折れます。
仕事には「壁」があります。
その最初の壁が、仕事の全体像を捉えることができるかどうかです。
上司の指示通りに情報収集するだけではこの壁を超えるのは難しいです。
作業を覚えるのとは別に、「全体像を把握する」意識を持つことが必要で、その力を伸ばしていかないと壁を超えることはできません。
4.全体像を把握するためには
全体像をつかむ力を身に付けてもらうために上司ができることは、「新人に話をさせる」ということです。
こう言うと「え?いつも、報告を受けているし、たくさん話をしていますよ」と思われるかもしれません。
しかしその会話は、実は「あなたの話に新人が同意している」だけかもしれません。
同意をされると、上司としては、新人も自分と同じくらい状況を把握し、判断しているように思い込んでしまいがちです。
しかし、現実には上司の言葉にただ「反応」しているだけであって、自分で考え、判断することはできていない可能性があります。
ですので、声をかけるときは、なるべく「イエス・ノーで答えられる質問」ではなく、「この商品は、どれくらい売れるだろう?」といった質問を投げかけてみてください。
そうやって、新人主体で「話」をさせてみると、新しい気付きがあるかもしれません。
5.最後に 個人的なオススメも添えて
いかがでしたか?
今回は、新人に期待しすぎて新人も、あなたもしんどいという状況の方に向けて記事を書きました。
全体像を把握する力をつけるには、他にも様々な方法があります。
例えば、自分自身が全体像を把握する力をつけたい!という方に向けて、私がオススメするのは「文章を書く」ということです。
別に、仕事に関わるテーマでなくてもいいので、ある程度の長で、他人が読んだときに、伝えたいことが伝わるように意識して文章を書いてみてください。
実際にやってみると、自分が断片的な情報で「わかったつもり」になっていただけで、全体像を把握できていなかったことに気づくかもしれません。
それだけ全体像を把握するのは難しいことなんです。
期待の新人に色々と仕事をお任せしたい気持ちは分かりますが、焦らず状況をみてみてください。
もし、「これまで部分的にしか仕事を任せていなかったな」と思うことがあれば、もう少し経験を積ませてあげるか、全体像をしっかりと伝えた後でリーダーに抜擢してあげてくださいね。
今回はこれで終わりにします。
ではまた。