年明け早々に大きな災害や事故,著名人の邸宅の火災などが発生したことを受けて,例によってネットには陰謀論者(?)たちの投稿が溢れており,何やら混乱・混迷が示唆されるような2024年が始まりました。 私事ながら,私たちも羽田空港での事故の煽りを受け,(往路フライトは事故の数時間前に離陸して影響なかったのですが)復路のフライトが欠航となったことにより,大阪での延泊を余儀なくされたのでした。 幸い航空会社の対応は迅速かつ丁寧で,翌日のフライトへの変更および延泊分の宿泊費の補償も円滑に行って頂いたのですが,もし今回の事故の原因が海保機にあったとして,海上保安庁が航空会社に補償金を支払うとしたなら,戴いた宿泊費も原資は私たちの税金なの?と少々モヤっとしたり,焼損した機体は150億円とかで,大谷選手でも1年半かかるのだと感心したりしながら,無事に帰宅したのでした。
空港から鉄道に乗る際には外気に曝されることがないため,最寄駅を出たときにいつも感じる関西人あるあるですが,特に今年はお正月というのに暖かかった大阪に比べて関東の空気は冷たく,4日間不在にしていた自宅は冷え切っており,3年前の年末に入居して初めての夜,入浴時に震え上がったことを思い出した私たちでした。
さて,暖冬とは言え,私たちの居住地域でもときに雪が舞う季節となりましたが,みなさんのワンちゃんたちは元気に過ごしているでしょうか? 前回(#13)ワンちゃんの防寒着の必要性について,寒さには強いイメージのあるワンちゃんでも,厳寒期には防寒着やブーツが必要なケースがあることを述べました。 今回,重複を承知の上で,寒い時期にワンちゃんと散歩する際の注意点に関して,もう少し具体的なpetMDの記事(All Creatures Veterinary Servicesのオーナーで,獣医情報ネットワークの指導的立場にある獣医師 Sandra C. Mitchell のレビュー済)を紹介します。
冬の散歩における5つのヒント: 5 Tips for Walking Your Dog in the Winter
犬の散歩に適さない気温とは?
寒い中で犬を散歩させるためのヒント
結論
「犬は喜び庭かけまわり〜」の歌詞や,極地探検の犬ぞりの映像などの印象が強いため,ワンちゃんは寒さには強いという概念が私たちにはありがちですが,寒さの程度や犬種,その他の要因によって,低温は重大なリスクになり得ます。 愛犬が寒さで震えていたり,凍傷を起こしているのに放っておく飼い主さんはいらっしゃらないでしょうし,関東や関西,特に都市部では,危険なほどの低温になる日は多くないかもしれませんが,降雪や凍結が予想される日には直ちに融雪剤が撒かれ,これがワンちゃんの足に影響したり,経口的に摂取してしまうというのは,十分に起こり得るアクシデントです。
なお,低温時にダックスやイタリアン・グレイハウンドなどの耳に見られることが多く,強い痒み,脱毛,かさぶた,出血などを起こす「寒冷凝集素症」は,低温下で赤血球が凝集することによる病気で,自己免疫の関与が疑われていますが,夏場にも起こることがあり,詳しい病理発生機序は判っていないようです。
ともあれ,夏の高温時と同様に,ワンちゃんたちが生活している路面の温度や状態,地面にある物に注意を向けて,ワンちゃんの立場に立って,何が必要かを考えたいですね。
雑記
極寒,豪雪,凍傷といった語に接すると私の頭には,「八甲田山」と「植村直己」が浮かびます。
前者は言うまでもなく,明治35年に日本陸軍が起した世界最大の山岳遭難事故である八甲田雪中行軍遭難事件です。 ご存知の方の殆どは,新田二郎の「八甲田山死の彷徨」を原作とする映画「八甲田山」の記憶かと思います。 私も同様で,当時TVなどでは北大路欣也(神田大尉)の「天は我々を見放した!」がしきりに流されましたが,高倉健さん(徳島大尉)の「案内人殿に対して 頭(かしら)右!」によって隊列全員が農家の嫁である案内人に敬礼し,秋吉久美子さん(案内人)が微笑みながら去っていくというシーンが遥かに強烈に心に残っています。 私の個人的な嗜好はともかく,当時の限られた装備品は仕方ないとして,冬の八甲田に関する情報不足,雪中行軍ということの認識不足,すなわち圧倒的な準備不足が,この壮絶な遭難事故の原因になったことは間違いありません。
後者の「植村直己」氏も,ある程度以上の年齢の日本人なら誰でもその名を知る,国民栄誉賞を受けた冒険家ですね。 登山家,冒険家というと,凍傷で指を失うことが珍しくありませんが,あるチャレンジで,同じ隊で行動した多くの仲間が指を失くした中で無傷だったというエピソードが有名で,私も「植村直己は超人的に凍傷に強い」というイメージを持っていたのですが,冬のマッキンレー単独登頂で亡くなった後に,彼に関する色々な記述を読むと,非常に慎重で周到な準備をされる方だったようです。 おそらく,凍傷にならないための準備,ケアを丁寧にされていたのでしょうね。 「ナショナル ジオグラフィック」の特集で植村直己氏を取材したカメラマンであるアイラ・ブロック氏は,次のように記しています。
「前人未到の冒険に旅立つ直己の晴れ姿をしっかり記録したいと心がはやっていたのだろう。濡れた手袋を乾かすのを忘れて,出発準備をする直己を撮ろうと,待機用のテントを飛び出したのだ。たちまち手袋は凍り,手の指が凍傷を負った。<中略> 痛みと水ぶくれは1週間ほどで治ったものの,37年がたった今でも,そのとき凍傷を負った指が冷えるたびにしびれる。」
「直己はついに北極点にたどり着いた。単独行としては世界初の快挙だ。翌日,彼に会うため,私たちはツインオッター機で向かった。地球の頂点で,直己は幸せそうに笑っていた。あんなに幸せそうな人間を,私は見たことがない。犬たちもうれしそうだ。」
私たちも,自然や気候の変化を軽んじることなく,しっかり準備・ケアをして,ワンちゃんたちとともに,ずっと笑っていたいものですね。